簡素化? いえいえブレない魅力
サムライの国、ニッポンで一番売れている輸入車は、なんと高級車ブランドとして名の通ったドイツの老舗、メルセデス・ベンツという。高級車メーカーが一番売れている、のにビックリ。ザ・スパイダースのヒット曲ではないけれど、「なんとなく、なんとなく」売れるのは輸入車の中でも比較的お求め易いブランドだと思っていたが、今は違うらしい。事実その昔はフォルクスワーゲンがその座にあった。メルセデスの売れてる理由はいくつもあると思うが、「高級ブランド」がリーズナブルに手に入りやすいエントリーモデルのAクラスやSUVラインナップの拡充などもあると思う。
2015年にワールドプレミアされて以来、世界的な人気車種となったのがミドルサイズSUV、GLCだ。2016年には日本市場へ導入された。その人気っぷりは日本も同様で2020、21年にはメルセデスブランドで最も売れたSUVに。そんな人気のGLCに新しいグレード、Core(以下コア)が加わった。同グレードはGLCのエントリーグレードになる。


エントリーグレードという響きから「あ、あれだ、ナビはないし、オートドライブなんかも限られた機能で、お安くしたヤツでしょ」と思いがちだがコアは違う。ほぼほぼ通常モデルと遜色のないモノだし、Sクラス譲りの安全装備系も省かれない。もちろんボディサイズもそのまま。リリース通りのGLCの魅力の核(コア)は何も変わらない。モデルとしてもブレないまさに武士道精神。今回はコアをご報告。

見抜けないのが嬉しい!?
GLCには見た目通り使いやすそうなSUVスタイルとルーフを低くしたクーペルックの2モデルがあり、今回試乗できたのはGLC220d 4MATICクーペ コア。伸びやかなシルエットはスポーティさを感じ、強調されたフェンダーはSUVのイメージに沿う力強さを表現ウンヌンなのだが、なるほどカッコイイ。売れているのも頷けよう、ウン。無理やりの粗探しをすれば素のGLCよりもクーペスタイルな分、後席の頭上スペースはほんの少し削られる程度かもしれない。

試乗車はAMGラインパッケージがオプションされており、通常の18インチではなく20インチのホイールと専用のエクステリアをもっていた。


一方室内は通常のモデルとまったく同じ、ではないけれど筆者には区別がつかないくらい。上記のようにAMGラインパッケージがオプションされていたのでスポーツシートになっているけれど見た目もレザーシートっぽいけど……。ジツはコアの内装は通常モデルでレザーが使われている部分(通常モデルのレザーパッケージオプション含めて)は合成皮革のARTICOレザーになっている。ただしステアリングは本革。本革の内装にこだわりがあるのなら別だが、見た目にも大きな遜色はないどころかSUVとしての素性を考えれば手入れのしやすいコチラがいいのかも、と筆者は思ってしまった。


なお、このAMGラインパッケージオプションを選択した時のみ内装色にネバグレーを選べる。
定評の走りは健在
パワートレイン含めてメカニズムの面は変わらない。搭載されるパワーユニットは2リッター直列4気筒ディーゼルターボにモーターを組み合わせたモノだし、駆動方式もあらゆる路面でも過度な緊張をしないで済むAWDの4MATIC。なおエンジン単体でのスペックは197PS、440Nm。これにモーターの23PS、205Nmがサポートしてくれる。

組み合わされるミッションは9AT。低回転のトルクに利のあるディーゼルに多段化の権化ともいうべき9速もギアがあるので意識して踏み込む必要もない。つまり燃費がいい。しかしながら一度深く踏み込もうなら、「炸裂! 440Nmの大トルク」と昔の東映映画的な感じで相当パワフルな加速をしてくれる。
構えるほど大柄なSUVでないから乗り降りもしやすく、一度シートに収まればアイポイントは意外に低いのでセダン感覚で運転可能。それでいて矛盾しているようだけれど、アイポイントはそれなりに高い位置なのでクルマの大きさに気を配ることは少ない。加えてSUVの利点でもある長く確保できるサスペンションストロークが運転していても懐の深さを感じられ、好印象だった。

また洗練されたスタイリングながらも本格的なオフロード性能を備えるのも特長で、センターディスプレイにはフロント下の路面映像を流したり、車両の傾きや路面の勾配を表示するオフロードスクリーンモードも用意されているのだ。
メルセデスで数独!
コアはエントリーグレードでありながらエントリーグレードらしくないクルマだった。大きなセンターディスプレイのインフォテインメントシステムは最新の第3世代のモノ。コクピットのは12.3インチと大きくて視認性も高い。また「ハイ、メルセデス!」のかけ声不要で音声操作可能な「just talk」も採用。さらにこのインフォテイメントシステムは従来よりも目的のコンテンツへ辿り着くタップ回数が何段階か省かれだけでなく、任意でカスマイズも可能にしている。
ユニークなのは指紋認証だけでシートポジションやコクピットディスプレイの表示スタイル、ナビの設定、ペアリングしたスマホなどを呼び出すこともできる。また駅の送迎などで早く着きすぎた場合に便利なアプリを発見! それはマス目に数字を入れる数独。

上記のようにエントリーモデルだからといって安っぽいとか装備を省いたとかでないのがコアの特長。いわゆるGLCの持つ魅力の「コア」はそのままにしている。じゃあ、なんで価格を下げられたのか、というと可能なオプションを減らしたり、ボディカラーを3色(白、黒、銀)に絞ったりした結果、なのだ。もちろん内装も人工皮革にしている点も大きい。
オプションはAMGラインパッケージとパノラミック・スライディングルーフの2つだけ。前者を選択した時のみ内装色は2色から選択可能。また走りや乗り心地に一過言あるユーザーがオプションするエアサスペンションはオプションも設定がない。逆に考えるとそれだけ「素」の状態がいい、ということ。なおGLCコアは819万円から、GLCクーペコアは866万円からのプライスになっている。
GLC220d 4MATICクーペ Core
価格 | 866万円〜 |
全長×全幅×全高 | 4765×1890×1605(mm) |
エンジン | 1992cc直列4気筒ディーゼルターボ |
最高出力 | 197PS/3600rpm |
最大トルク | 440Nm/1800-2800rpm |
モータースペック | 17kW/205Nm |
WLTCモード燃費 | 18.2km/L |