原点回帰!? メルセデスAMG SLに試乗!

栄光の300マイル、いやSL

舶来モノのオープンスポーツカーは数あれど輝かしい歴史に彩られ、今も続くクルマとなると数少ない。例えば SL。

当然、蒸気機関車ではない。メルセデス・ベンツのオープンモデルであり、同ブランドの2ドアスポーツモデルの象徴だ。その起源は1952年にプロトタイプレーシングカーとして開発された300SLで当時、過酷といわれたメキシコ縦断の公道レース「カレラ・パナメリカーナ・メヒコ」やル・マンでの優勝を筆頭に数々のモータースポーツシーンで活躍した。

1954年には市販化され、美しいガルウィングを持つクルマとして今もコレクターズアイテムになっている。

マイスター集団が手がける現行型

2021年にデビューした現行モデルは、メルセデスAMGからリリースされメルセデスブランドからはSLが姿を消し、さらに2+2モデルとしてデビューした。

AMG、なんという響き。速さを求めるオーナーを満足させるクルマ作りの職人集団が手がけるようになったのだ。またァ、どうせ先のコトを考えて設計はメルセデスで製造だけでしょ、というなかれ。

先のコトは不明だが、少なくとも現行モデルはAMG完全自社開発の血統書付きなのだ。大磯で開かれた日本自動車輸入組合(JAIA)の試乗会でシートをゲットしたのは艶消しのスペクトラルブルーがオシャレなSLだった。

エクステリアは長いボンネットがいかにもSLらしいプロポーション。そして現在AMG車のデザインアイデンティティとなりつつある縦型ルーバーのある大型のラジエターグリルは往年の名車、300SLを彷彿させる。

現行モデルもうひとつのトピックはルーフが5代目のR230型から継承されていた電動メタルトップのバリオルーフから「コレぞオープンカー!」の代名詞的アイテムのソフトトップに変更されたこと。

F1譲りのターボ技術

熟練工が組み上げ、サインが刻まれたエンジンはマイルドハイブリッド搭載の2リッター直4ターボ。スペックは381PS/480Nm。リッターあたり200PSに届こうか、というシロモノがフロントに鎮座する。

過去にはAMGリリースの7.3リッターV12を搭載していたモデルもあったり、本国には4リッターのV8ツインターボもラインナップしたりしているが日本へは今のところ2リッターのみ。2リッターじゃあなぁ、と思うなかれ。これが走り出すとかなり軽るさを感じる。

なるほど、SLの車名はSuper Lightの略というが、まさに軽快。乗り心地は最高速275km/hを誇るクルマと考えればかなりいいと感じられる。許容範囲どころかグランドツアラー的性格は健在。運転すると何よりもエンジンのピックアップの良さが気持ちいい。

重々しい雰囲気の今までのV8至上主義派の皆様にはウスラ寂しいけれど、乗って楽しいというのは今ままでのV8とは違う速さのベクトルだ。

採用されたターボは電気モーターが直接ターボの軸を動かすF1譲りのそれだし(フェンダーロゴがカッコイイ)、9ATは素早いシフト操作に主眼をおいた湿式多板クラッチを採用する AMGスピードシフトMCTだし、と机上の知識だけでも十分速い。

もちろんドライブモードを切り替えると明らさまにクルマのキャラクターが変わる。野太いエグゾーストサウンドがしっかり聞こえる、これこそオープンスポーツカーの醍醐味。

メルセデスAMG SL


価格1648万円から
全長×全幅×全高4700×1915×1370(mm)
エンジン1991cc直列4気筒ターボ
エンジン最高出力381PS/6750rpm
エンジン最大トルク480Nm/3250-5000rpm
モーター最高出力10kW
モーター最大トルク58Nm
WLTCモード燃費10.8km/L

メルセデス・ベンツ
問メルセデスコール:0120-190-610

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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