リゾートが似合うクルマ
富士には月見草がよく似合うと言うけれど富士を望めるリゾートにドンピシャに似合うクルマがある。それはメルセデス・ベンツの最上級ブランド、マイバッハのSUVモデル、EQS680 SUV(以下680SUV)だ。冒頭の「富士山には」云々のくだりは太宰治の短編小説「富嶽百景」の一説。正確には富士山にある月見草がどえりゃあベストマッチでっせ、と言う意ではないけれど、ここでは美しいモノ同士よく似合う、の意で使わせていただいた。
幹線道路から1本離れただけなのに静かなリゾートホテル。目の前にはほぼすべてがディズプレイというインパネが広がる。そんなクルマの運転席に座ると気分は太宰治だったのだ。今回は昨年日本上陸を果たしたEQS680SUVをご紹介!
高級車ブランドとして名を馳せるドイツのメルセデス・ベンツ。どのモデルも十分以上に豪華な装備を持ち、世界中から支持される。その頂点にはSクラスがあるのだが、マイバッハはブランド内ではその上をいく。いわばSクラスを超えたクルマ。そしてセダンにはリムジンがある。それならば今流行っているSUVにもリムジン系なベクトルのモデルがあってもいいのではないか、というのがメルセデスでいうところの680SUVなのだ。

680SUVはマイバッハとしては初となる生粋のEVモデルになる。ヲタク的な視点から申し上げれば同じV8ツインターボの内燃機関モデルよりも若干だが全長が短く、全高も低い。根がド庶民の筆者は高額なモノなのにパワートレインが違うだけで少し小さいともったいない気分になってしまうが、コレってジツはクルマの骨格から作りが違うのだ。680SUVはEV専用のプラットフォームを使っている。そのためボディサイズも違うし、前輪と後輪の間隔、ホイールベースも異なる。680SUVの方がホイールベースが長く、その分後席のスペースも余裕がある。なるほど、それならばお買い得とかゴチャゴチャ思いつつ、まぁ、このサイズならとりあえずデカイっす! と思えば間違いはない。なんせネーミングもガソリンモデルの600に対してコチラは680でもあるし。


ハイウェイも似合うクルマ
さて、そんな680SUVのインテリアは贅を尽くしたモノ。基本的には運転手クンにお願いしてボクは後席、のショーファードリブンなのだろうが、自分で運転してもその贅沢な空間を楽しめる。冒頭にあるようにインパネは、ほぼほぼディスプレイ。

そしてこの白を基調とした内装(クリスタルホワイトとシルバーグレーの組み合わせ)はオプションのファーストクラスパッケージ装着車の証でもある。シート表皮の中央に窪みを入れ、左右部分を折り込んで互いに向き合わせるシートの仕立ても他のモデルと少し異なるのもマイバッハならでは。
後席はオプション名にもあるようファーストクラス並。このパッケージオプションは4人乗りになるため、その広さはSUVを超えている。足元のスペースも広々だし、フルフラットに近くなるリクライニング機能とリラックスできる移動時間は保証されているようなモノ。カップホルダーには温冷機能もついているし、フルートシャンパングラス対応スタンドもこのパッケージの魅力。



そんな豪華「至高」のクルマで移動した日には1時間足らずのドライブなど、もう終わり? と感じること間違いない。抜群の直進安定性でハイウェイを流せば流すほどこのクルマの動的な魅力を感じることができる。可変ダンパーにエアスプリングユニットを組み合わせた足回りは路面に段差なしのごとく、である。しかもマイバッハのみに設定されたドライブモード「マイバッハモード」も備える。これは後席でシャンパンでも飲んでみようか、というオーナーならびゲストのために用意されたようなモードでより足回りが柔らかくなる。ハイウェイではこの上ない乗り心地になるのだが、一般道ではゆらり感が少し残った印象だったが、長距離でも楽チンなのは間違いなく、どの席でも快適なのだ。
ワインディングも似合っちゃう? クルマ
680SUVのパワートレーンは前後に1つずつモーターを載せる2モーターを採用。もちろん重量のあるバッテリーは床下に。このバッテリー容量は118kWhで、3t超えの車重ながらも一充電での走行可能距離はカタログ値で約640km。実際は500kmくらいと思っていれば精神衛生上よろしい距離と想像するが、それでもかなり使えるEVとしての顔もある。
搭載されるモーターのスペックはフロント236PS、346Nm、リア422PS、609Nmで、システム合計は658PS、955Nmとスーパースポーツカー、否ハイパーカー並。欧州仕様での0-100km/h加速は4.4秒と図体から受ける印象よりもずっと速い。そしてクネッタ道を抜けてみると想像以上に曲がってくれる。運転していてウヒョ〜、と頬が緩むベクトルではないけれど、周囲を見下ろすようなアイポイントながらも高い安定性で不安要素がない、という方が正確だと思う。低重心なレイアウトとAWDは意外にもドライバーズカーとしても「あり」なのだ。

街中でも似合っちゃうクルマ
680SUVはボンネットマスコットを持つ。グリルはプリントなのはEVならではだが、ユニークなのは内燃機関で言うところのエアインテーク部分。コチラにはマイバッハのロゴが敷き詰められている。桃山時代の狩野派か! とツッコミたくなるけれどこの細部までこだわった品質はマイスターの矜持でさすがメルセデスといったところ。

洗練された高級感のスタイリングは雑踏の中でも品位を醸し出す。街中でも似合い、最近ではマイバッハを街中でも見る機会が増えた。見る機会が多いということはそれだけ売れているってことになる。高額車なのに。しかしながら。絶対的な価格面でもクルマの出来に対してはバーゲンプライスなんだと思う。
もちろん街中でも運転しやすい、ということも売れている理由のひとつ。例えば標準装備される後輪操舵システムは高速での安定性に加え、車庫入れでは驚異の小回り性能を発揮する。専門誌的な表現ならば「メルセデスの美点でもある取り回しの良さは健在。その数値は最小回転半径5.1m」という感じだ。事実、筆者はこのサイズでこの車庫入れだと1回切り直しが必要と思ってエイヤエイヤとハンドルをクルクルしたのだが切り直しの必要なく入ってしまった。
またショーファーとして考えた時もモーターの力強いトルクは加速時に踏み込む必要性を感じないし、静粛性もクローズアップされるはず。オフロードモードも備え、実用性も高い。超高級なのだけれど意外に(買える層ならば)気兼ねなく使える、万能っぷりはさすがメルセデスブランドだ。
メルセデス・マイバッハ EQS680 SUV
価格 | 2790万円〜 |
全長×全幅×全高 | 5135 × 2035 × 1725(mm) |
フロントモーター最高出力 | 236PS |
リアモーター最高出力 | 422PS |
フロントモーター最大トルク | 346Nm |
リアモーター最大トルク | 609Nm |
一充電走行距離 | 640km |
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EQS680 SUV
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