特撮ばんざい!第54回:ウルトラヒーローの手に汗握る名場面が蘇る! ウルトラ怪獣が猛り狂う圧巻のBGMコレクション!「絶体絶命!ウルトラ怪獣バトル・ミュージック・コレクション」

昭和~令和まで続くウルトラマンシリーズ。その魅力溢れる怪獣のBGMを多数収録した「絶体絶命!ウルトラ怪獣バトル・ミュージック・コレクション」が8月28日、日本コロムビアから発売された。今回はその聴きどころを紹介しよう!

文/中松右京

本アルバムは2022年に発売された「勝利確定! 〜ウルトラヒーロー バトル・ミュージック・コレクション」に続く第二弾企画となる。「勝利確定!」ではヒーロー優勢のカッコいいBGMを集めたアルバムだったが、今回は各作品、様々な場面に選曲された怪獣関連のBGMに加え、ウルトラヒーローの劣勢=怪獣が優勢の場面で流れる、いわゆるピンチ系のBGMと、ふたつの柱で構成されている。

アルバムは「昭和編」と「平成編」が2枚組、「ニュー・ジェネレーション編」が3枚組で、「昭和編」が『ウルトラQ』から『ウルトラマンパワード』の全12作品、「平成編」が『ウルトラマンティガ』から『ウルトラマンサーガ』の18作品、「ニュー・ジェネレーション編」が『ウルトラマンギンガ』~『ウルトラマンブレーザー』までの15作品を収録。

「昭和編」に含まれる『グレート』と『パワード』は平成の作品だが、『ティガ』からはじまる平成ウルトラマンシリーズを「平成編」の頭に持ってくる都合上、そうした構成にしたのだろう。収録作品や構成は基本「勝利確定!」に準じたものとなっている。

時代の変遷を一望「昭和編」

まず「昭和編」のDISC1に収録された第一作『ウルトラQ』(音楽は宮内國郎)は劇中で流用された東宝映画『ガス人間第一号』も交えた構成で、本作のみで全25曲約30分(恐らく約28分くらい)の大ボリュームに圧倒される。まさに「これから30分、あなたの目はあなたの身体を離れて、この不思議な時間の中に入って行くのです…」といった没入感をもたらしてくれるだろう。

続いてDISC2の曲目を見ると、宮内國郎(『ウルトラQ』『ウルトラマン』)&冬木透(『ウルトラセブン』他)が参加した『ザ☆ウルトラマン』以降、ステレオ録音された作品が増え、またシンセが編入されるようになるなど、時代の変遷を感じることができる。そんな中、『ウルトラマンG』は、撮影地でもあるオーストラリアの現地オーケストラを起用して録音されており、大編成による豪華絢爛なシンフォニックサウンドを満喫することができる。但し本作のBGMは「交響組曲ウルトラマンG」としてリリースされたのみで、Mナンバー毎にミックスしたテイクが商品化されていないので、怪獣毎のBGMだけをチョイスすることができない。そのため「交響組曲」から怪獣関連の曲を含む「The War Of Deities ―神々の戦い―」、「The Wriggling For Cataclysm ―崩壊」「The Sword Of Wisdom ―未知への挑戦」の3楽章を収録しており、構成者の苦労の跡がうかがえる。

『ウルトラマンダイナ』が充実、『ウルトラマンガイア』レア曲も収録「平成編」

「平成編」では『ウルトラマンゼアス』二部作や『ULTRAMAN』が未収録なのが残念だが、これも「勝利確定!」を踏襲しているようだ。また平成ウルトラマンシリーズ第二作『ウルトラマンダイナ』は当時、テレビシリーズだけでサントラが4枚リリースされたこともあり、作品毎の収録曲数は13曲と、『Q』に次ぐボリューム。作曲した矢野立美の手腕もあっていずれの楽曲も聴き応えがある。次回作の『ウルトラマンガイア』では、ユニバーサルミュージックから2016年に発売された「ウルトラマンガイア O.S.T リマスターBOX」(現在は廃盤)にのみ収録されていた「破滅天使のテーマ」(天使降臨[第49話用 天使降臨(チェンバロ+オルガン)])が再収録されているのも嬉しい。

また、『ウルトラマンネクサス』と『ウルトラマンマックス』のサントラは、現役で流通しているのは配信のみでCD-BOX化もされていないので、CDとしては貴重な収録。この2作は劇伴作家としても人気の川井憲次、蓜島邦明が、それぞれ手掛けており、特に『ウルトラマンマックス』はウルトラとしては王道のオーケストラサウンドだが、蓜島の仕事としては異色の部類に入り、作家としての幅の広さを感じさせる。

圧巻のCD3枚組「ニュー・ジェネレーション編」

「ニュー・ジェネレーション編」は、『ウルトラマンギンガ』から10年以上、現在も続く歴代最長シリーズだけであり、今回唯一のCD枚3組となる。最新作は『ウルトラマンアーク』だが、前作の『ウルトラマンブレーザー』までを収録している。作曲家も多彩で、『ウルトラマンギンガ』から『ウルトラマンオーブ』まで4作を手がけた小西貴雄以降、毎回異なる作曲家が起用されており、ストリングスをフィーチャーした『ウルトラマンZ』(音楽は安瀬聖)、EDMのエッセンスを大胆に盛り込んだ『ウルトラマンブレーザー』(音楽はTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND)など、各作品の個性を存分に味わうことができる。

川井憲次が手がけた『ウルトラマンジード』では、「ベリアル-復活(M-28)」「ジード戦い-劣勢1(M-10)」など、ジードがベリアルの遺伝子を持つ設定に基づき、共通のモチーフで楽曲が作られているので聴き比べてみると、奥深さを感じられるかと思う。なお、このモチーフは「平成編」のDISC2に収録された『ウルトラマンゼロ THE MOVIE超決戦!ベリアル銀河帝国』が原点となり、本作からは「アークベリアルのテーマ」が収録されている。

末尾に公表された3セットの収録曲を合計してみたところ、なんと全307曲、時間にすると約7時間はあるかと思う。音楽における怪獣総進撃とでも言うべき、今回のアルバム。ウルトラマンシリーズのファンは、必携&必聴のマストアイテムだ。

「絶体絶命!」の3セットのケースを開いて並べた。2枚組、2枚組、3枚組の合計7枚。なんと全307曲、時間にすると約7時間。ライナー(裏表紙を並べた)の画像も大ピンチ感が満点のナイスセレクト。

「絶体絶命!」の「ニュー・ジェネレーション編」のディスク2、ディスク3。

前作「勝利確定」3セットと並べる。湧き上がるカタルシス。聴けば勝利と激闘の高揚感に浸れる。

両シリーズCD6セットを積む。コレクションの喜びは格別。

選曲のポイントや劇中の使用シーンを解説したライナーも読み応えあり。なお、「絶体絶命!」「勝利確定!」両シリーズの企画・解説は、本誌のウルトラマン特集や「特撮ばんざい!」記事でもおなじみのトヨタトヨヒサ氏が担当している。

曲タイトルは人気怪獣の名を使ったものも多数。名曲でウルトラマンシリーズの世界に浸ろう!

速報! モノ・マガジン本誌11-16号(11月2日発売)は「ウルトラマン特集」! 乞うご期待!

© 円谷プロ

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