特撮ばんざい!第53回:新刊「『ウルトラQ』『ウルトラマン』全67作撮影秘話 ヒロインの記憶」が増刷決定! 桜井浩子さん×青山通さん対談(完全版・後編)


2024年ヒロインの挑戦。傑作『ウルトラQ』『ウルトラマン』のヒロイン・桜井浩子さんが、記憶のすべてを語る書籍作りに挑んだ。気になる内容の一端が、共著者・青山通氏との対談で明らかに。あなたの目はあなたの体を離れ、58年前の撮影現場へタイムスリップするのです――。本誌6月14日発売号に掲載の対談を、「モノ・マガジンweb」の全長版でお楽しみください!

写真/熊谷義久 文/秋田英夫、モノ・マガジン編集部

前編はコチラ

鬼才・実相寺昭雄監督

(前編から続く)

――『ウルトラマン』で数々の異色作・話題作を手がけられた実相寺昭雄監督の話題もたくさん出てきます。実相寺監督は桜井さんがお気に入りで、フジ隊員のいろいろな面をフィルムに残すべく、力を尽くされたそうですが……。

桜井 私はジッソーさん(実相寺監督)のことを「大嫌いな監督」だとインタビューで言い続けています(笑)。第14話「真珠貝防衛指令」のときだって、ショーウインドウ越しに真珠を眺めるシーンで、もっと顔くっつけて、くっつけてと言われるもんだから、鼻がペッチャンコになるまでくっつけて、さすがにここは使わないだろうと思っていたら、使ってるし!! あと第34話「空の贈り物」で私の顔を魚眼レンズで撮ったこと、永遠に許しません! でも、ジッソーさんの才能はみんなが認めているし、私もそれは理解していますし、今後も私なりに実相寺昭雄監督の業績を後世に残していかねばと、殊勝なことを考えています(笑)

青山 「空の贈り物」でウルトラマンや科特隊に倒された怪獣たちのため、作戦本部内で「怪獣供養」をするシーンの裏話もよかったですね。ご機嫌で撮影していた実相寺監督が、フジ隊員が涙を拭くときに用いたハンカチの柄で激怒したお話とか(笑)。

ウルトラヒロインの現在と未来

――桜井さんは、Netflixと円谷プロの共同制作によるアニメーション長編映画『Ultraman: Rising』(6月14日より世界配信)で、声優をされているそうですね。

桜井 そうです。ヒロイン・アミの母親の役を演じました。私は本作の脚本・監督を務めたシャノン・ティンドルさんが『KUBOクボ 二本の弦の秘密』(16年)に携わられている方(原案/キャラクターデザイン)と知って、尊敬しています。アメリカのスタッフのみなさんには、フジ・アキコに対する強い思いがあったそうで、最終回の「さらばウルトラマン」を連想させるようなセリフがあったりします。昔ながらの『ウルトラマン』が好きな方が見たらちょっとびっくりするようなスタイルのウルトラマンが出てきますが、映像で見るとあの姿だからいいんだなあって思えます。それが彼らの手腕なんでしょうね。『Ultraman: Rising』、とても面白い作品です。私が言うんですから間違いありません!

――それでは、おふたりから『ヒロインの記憶』のおすすめポイントをご紹介してください。

青山 これまで桜井さんは何冊も著書を出していらっしゃいますけれど、『ウルトラQ』『ウルトラマン』の全作品を網羅して思い出を書かれた本はありません。一冊にまとまっていることに本書の意義がありますし、本書でしか知りえない撮影秘話はきっとウルトラファンに響くと思います。

桜井 青山さんは音楽に詳しく、これまでに冬木透先生から『ウルトラセブン』(67年)についてのお話を何度も訊いていらっしゃいます。今回は、『ウルトラQ』『ウルトラマン』の宮内國郎先生についてコラムを書いていただいたので、これは注目ですよ。

青山 『ウルトラQ』『ウルトラマン』の音楽は作品世界とめちゃくちゃ密着しているのですが、今回は自分の頭をまっさらに戻した状態で、改めて音楽を聴いてみたらどう思うのかを書いてみました。自分自身にとっても、なかなかの挑戦でした。また、僕が『ウルトラマン』を観ていたのは6歳のころでしたが、第28話「人間標本5・6」の三面怪人ダダがものすごく怖かった思い出がありました。今回、なんでダダがあんなに怖かったのか、そして大人になってダダのキャラクターを深くつかむようになったら、なぜ怖くなくなったのか。ほか、全部で5本のコラムを書きました。特撮・怪獣ファンの方にぜひ読んでほしいです。

――『ウルトラQ』の放送開始から、58年もの歳月がすぎました。お2人にとって、当時の記憶を呼び覚ますために必要なものとは、何でしょうか。

青山 幼少時であっても『ウルトラQ』『ウルトラマン』をテレビで観た記憶を鮮烈でしたし、もともと自分の身の回りのことなどを手帳に記すなど、データを残すのが好きでしたから、当時を思い出す作業で困ったことはありません。あのときは怖かった、あのときは感動して泣いたな、など、幼少時の記憶を掘り返しながら、桜井さんに質問することができました。

桜井 私自身も、撮影当時の記憶が今も鮮明に残っていますから、なにも特別なことはしていません。『ウルトラQ』第1話「ゴメスを倒せ!」のロケ撮影での砂ぼこりの匂いまで覚えています(笑)。たとえ忘れてしまったことでも、映像を観返すと「このとき、こんなこと思ってた!」って思い出すんです。『ウルトラQ』はモノクロ作品ですから、由利ちゃんがどんな色の洋服を着ていたか、なんて本人の私にしかわからない。以前、『総天然色ウルトラQ』のカラライズ作業を海外で行った際、私の洋服がショッキングピンクに着色されていて仰天し、ブルーの上下です、これは譲れません! と言って修整をしてもらったこともありました。

桜井 本書を作るにあたっては『ウルトラQ』『ウルトラマン』という素晴らしい作品をみんなで作りあげた思い出について「記憶が薄れないうちに、活字にして残しておくといいよ」と助言してくださった飯島監督や上原正三さんの、いわば遺言を今回実現させていただいたかな、と思っています。

青山 これは『ウルトラQ』『ウルトラマン』の女優・桜井浩子と、リアルタイムでテレビを観ていたファン(青山さん自身)との「交信の記録」です。存分にお楽しみいただきたいです!

<桜井浩子さんギャラリー>

PROFILE 桜井浩子
さくらい・ひろこ 1946年東京都出身。56年『なかよし』の写真小説「ひとみちゃん」のヒロインに抜擢。61年、オール東宝ニュータレント第1期生として東宝へ。66年、『ウルトラQ』『ウルトラマン』で人気を博す。1993年より円谷プロにて女優・コーディネーターとして活動。

PROFILE 青山 通
あおやま・とおる 1960年東京都出身。著述家、本名の青野泰史にて編集者。著書に『ウルトラセブンが「音楽」を教えてくれた』、『ウルトラセブン・スコア・リーディング──冬木透の自筆楽譜で読み解くウルトラセブン最終回』、冬木透氏との共著『ウルトラ音楽術』がある。

WRITER PROFILE 秋田英夫
あきた・ひでお フリーライター。『宇宙刑事大全』『大人のウルトラマン大図鑑』『日本特撮技術大全』『東映スーパー戦隊大全』『上原正三シナリオ選集』など特撮書籍・ムックの執筆・編集に携わる。CD『必殺シリーズオリジナルサウンドトラック全集』(1&9)『ザ・ハングマン燃える音楽簿』の構成・解説も担当。

モノ・マガジン 7-2号(6月14日発売)大好評発売中‼

ウルトラマンアーク – 円谷ステーション
ウルトラマンアーク テレビ東京アニメ公式
Ultraman: Rising(ウルトラマン: ライジング) – 円谷ステーション
Ultraman: Rising | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト

Ⓒ円谷プロ

前編はコチラ

関連記事一覧