テクニクスはなぜ京都にカフェ「テクニクスカフェ京都」を作ったのか?(くるり岸田繁さんのアナログ盤トークも必読!)


来年2024年はテクニクスブランド復活から10年。レコード回帰やDJニーズも高く、現在、国内の10万円以上のターンテーブルシェア№1はテクニクス! そんなテクニクスの次なる新製品はカフェ……って何で? くるり岸田繁さんをお迎えしてのオープニングイベントを取材した。

写真と文/モノ・マガジン編集長

テクニクスの新製品はカフェ⁉

「2010年比2022年のアナログレコード生産枚数は約20倍の213.3万枚。サブスクの普及も著しいものがあります。テクニクスはアナログとデジタルを両輪にラインナップを広げハイエンド層からも評価を頂いております。これからは、音楽を聴くシーンやその背景にあるカルチャーなどへの感度が高い若い世代の方や女性の方にアプローチしたいと思い、今回、人口当たり学生数日本一の京都で、気軽にハイエンドオーディオのサウンドと触れ合えるスペースとして【テクニクスカフェ京都】をオープンしました」。

小川室長とリーダーアルバムの「BALLUCHON」(ULTRA ART RECORD)。演奏内容、音質とも評価が高い。

とはテクニクスブランドを率いる小川理子さん。ご自身ピアニストでもあることから、一名、経営する音楽家⁉

四条通りに面した正面は全面ガラス張りで明るく、とても開放的。入ってすぐカフェカウンター、奥が試聴エリア。音響を施したテクニクスのスタッフによると「試聴室ではないので反響のコントロールがめちゃくちゃ難しかったです。しかし想像していたより車の走行音が入らないこともあり、いい音楽環境が作れたのではないかと思っています」とのこと。

テクニクスカフェ京都は四条通りと烏丸通りという京都のど真ん中の交差点から4,5分の好立地で、全面ガラス張りのインテリアは、試聴室というよりは開かれた音楽ヒューマンスクランブル。

設置されるオーディオは総額600万円を超えるテクニクス入魂のコンポーネンツたち。京都小川珈琲監修によるコーヒーやフードの販売もあり、インストアでも持ち帰りでも楽しめる(持ち帰りできるのはコーヒーのみ)。やっぱりここは「カフェ」だ。

さて今回のオープニングイベントのゲストは、京都に暮らすくるりの岸田繫さん。3枚の愛聴盤と共に満を持して入場!

くるりの岸田さんと3枚のレコード

くるりの岸田繫さん(左)と、司会進行のテクニクス上松泰直さん。

くるり岸田繫さん(以下、岸田さんと略):こんにちは。

テクニクス上松泰直さん(以下、上松さんと略):岸田さんと私は立命館大学のロックコミューンという音楽サークルの先輩後輩でして(笑) さて今回は総額600万円を超えるテクニクス・リファレンスシステムで岸田さん厳選の3枚のアナログレコード盤を聴くという企画なのですが、何と8枚もお持ちいただきました! さて突然ですが岸田さんにとって、京都ってどんな場所でしょうか?

岸田さん:人口当たり学生一番多い街、若い人がまとまっている街、若い人が作っている文化が途切れることなく継承されている街ですかね。一時、東京にも住んでいましたが、やっぱり京都がラクですね(笑)

上松さん:ですよね。では最初の一枚をご紹介ください。

岸田さん:シングル盤です。1990~2000年代というといろんなダンスミュージックが流行った時代ですが、その中でもドラムンベース、レゲエを倍の速さにしたような音楽をやっていた人が突然歌声のキレイな曲を作った。4heroというアーティストの『Les Fleur』です。

(レコード演奏中)

岸田さん:普段SL-1200MK3を使っています。古いモデルですが全然壊れなくって(笑)普段家ではそこそこの音量で聴いているので、今回、このシステムで大きい音で聴いたら割れるかなと思ったけど全然大丈夫ですね。90年代の作品だから録音クオリティは48kHz16bitだと思うのですが、音の天井がしっかり見える。楽器が鳴ったその端っこのところつるっとしたところもクリアに聞こえますね。圧縮音源ですと上がガクっと落ちる感覚ですが、さすがだと思いました。いい音で。家に持って帰りたい。

上からターンテーブルの「SL-1000R」、ネットワーク/スーパーオーディオCDプレーヤー「SL-G700M2」、SL-1000Rのコントローラー、ステレオインテグレーテッドアンプ「SU-R1000」。チームテクニクスの四番打者そろい踏み!
オーディオ再生の肝心要たるスピーカーはSB-R1。リファレンス・ワンという型番通りテクニクスの頂点サウンド。

上松さん:お買い上げありがとうございます。あとで配達日をご指示ください(笑)

岸田さん:頑張って仕事します。

上松さん:続いて2曲目をお願いします。

岸田さん:1曲目から時代をさかのぼります。1986年かな。オーディオマニアというより様々な取り組みをされているアメリカのシンガーソングライターで、現役でもやられているトッドラングレンのアルバム『Nearly Human』。すごく好きで、「Parallel Lines」を聴いてみたいです。

上松さん:これも愛聴盤ですね?

岸田さん:中学生の時、蔦屋というレコード屋でレンタルして知って、のちにCDで聴いて、いい音ではあるけど……その後アナログを買って聴いたら、これは様子がおかしいぞ、と。これは相当いいんじゃないかなと、けっこう聞くようになった曲です。1970年代まではアナログ2インチテープとかに録音していたわけですけど、今のトッドの作品はデジタルレコーディングが始まった頃で、ヨンパチがとれるデジタルテープに録音していたわけです。

デジタルテープは編集が便利ですし、くせとしてキラっとした音がするので、デジタルが新しい時代にはこりゃいいと思われていました。近年、録音の技術がどんどん良くなってハイレゾという環境で96kHz32bitとか、ものによって128kHzとかね、ヒトが聞こえないくらい細かい音であったり、犬しか聞こえないという周波数まで録音できるのですけど、実際にそれでCDにするときに44kHz16bitにダウンコンバートしなくちゃいけないわけで、「あれ? こういう音いれたハズだけどCDにしたらよく聞こえないな」というのはミュージシャンにはよくあることです。

アナログの素晴らしいところは、すごく簡単に言うと、アナログでピークについた時にはひずみになり、デジタルのひずみはクリップしてパチっていうデジタルノイズになるのですが、アナログは蒸気のように上に散っていく、下に散っていくみたいな感じで究極のハイレゾと言われている感じです。デジタルで録られてキラキラと軽薄だった音も、アナログでこうしたハイエンド機器で聴くとさすがだな、と思います。話が長くてすみません(笑)

上松さん:ありがとうございます。ずっと聴いていたい感じなのですが、そうも参りませんので最後の曲。違うジャンルになりましたね。

岸田さん:はい。ジャケットはたぶん私と同い年くらいの感じですね、肌具合からすると(笑)。小澤征爾さんとシカゴ響のレコードで、僕がずっと好きなバルトークというハンガリーの作曲家の「オーケストラのためのコンチェルト」です。大きい音でクラシックをかけたかったので持ってきました。その第二楽章を聞いていただきたいと思います。

上松さん:最後までかけたいのですが残念ながら時間切れ。公式オープン後もぜひ岸田さんにはお越しいただきたいと思います。完全に顔パスですので(笑)

岸田さん:いえいえ~(笑)

開かれたHi-Fiを目指して

ハイエンドオーディオというピラミッドの頂点部分でしか得られない音楽の喜びや凄さ、機器の実力やその存在感を知る層のすそ野を広げたい……。ハイエンドオーディオとDJ機器を同時に手掛ける世界でも稀なブランド「テクニクス」が京都にカフェをオープンした背景には、こんな思いがある。

発表会ですさまじいDJプレイを魅せたDJ RENAさんは現役高校生。DJプレイがオリンピック種目になる日も近い⁉ ピュアオーディオとDJカルチャーは、テクニクスの両輪だ。

京都駅からは地下鉄で2駅、繁華街の四条河原町から散歩しても15~20分程度という好立地の「テクニクスカフェ京都」は、京都からオーディオの世界を変えるかも知れない“音の秘密基地”なのだ!

Information
テクニクスカフェ京都

京都市中京区新町通錦小路下る小結棚町444番地 京都四条新町ビル 1F
日曜~木曜:11~20時、金曜~土曜:11~22時
年末年始休み

  • モノ・マガジン&モノ・マガジンWEB編集長。 1970年生まれ。日本おもちゃ大賞審査員。バイク遍歴とかオーディオ遍歴とか書いてくと大変なことになるので割愛。昭和の団地好き。好きなバンドはイエローマジックオーケストラとグラスバレー。好きな映画は『1999年の夏休み』。WEB同様、モノ・マガジン編集部が日々更新しているFacebook記事も、シェア、いいね!をお願いします。@monomagazine1982 でみつけてね!

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