むしろヤマハの底力。PASの新作クロスバイク「CRAIG」は「意外」のカタマリ!


1993年、初代PASで電動アシスト自転車を開拓したヤマハから、新コンセプトバイク「CRAIG(クレイグ)」が登場する。この洒脱なクロスバイクに込められた「意外」な特長とは? 最初に書いておきますが、これで12万9000円はバーゲンプライスですよ!

このPASの登場は「意外」⁉

千代田区麹町のカフェで開催されたヤマハPAS「CRAIG」の発表会。編集部が得たキーワードは「意外」だった。

最初の「意外」は、「CRAIG」がPASラインナップになかった個性だということ。

企画担当の碓井紗和さんは言う。
「初代PASはシニアの便利な移動手段として歓迎され、次第に子育て世代にも普及しました。昨今ではYPJシリーズなどでファンバイクとしての認知も進んでおりますが、直近の購入者の70%が初めての電動アシスト自転車です。これからも積極的にPASの電動アシスト自転車を選んでいただけるよう検討し、開発した一台がCRAIGです」

発表会に登壇した「トリオ・ザ・PAS CRAIG」。左から車体設計担当の西山統邦さん。企画担当の碓井紗和さん。デザイナーの北山亮平さん。

PASラインナップのクロスバイクといえば「ブレイス」がロングセラーだが、今回届けたい層は「そこじゃない」

スポーティにガシガシ走りたいわけじゃないからギアは内装3段でいいが、デザインには徹底的にこだわりたい。街中を走るのに充分なスペックをもちつつ、洒脱で、乗っている自分を格上げ(!)してくれるような自転車を手に入れたい、ここがターゲットであり、PASラインナップの「意外」な穴でもあった。

そうしたフォーカスを経て、企画担当、デザイナー、車体設計がカンカンガクガク、時に激論を交わして生まれたのが「CRAIG」なのだ。

街中をおよぐユーザーの相棒がCRAIG。トップチューブの高さを抑えたスローピングフレームで、またぎやすいのも高ポイント。

なぜ「鉄フレーム」だったのか?

ふたつ目の「意外」は鉄である。

鉄と言っても「何のこと?」だろうが、フレーム素材の話。

デザイナーの北山亮平さんは、
「商品コンセプトからもできるだけフレームを細くしたいと考えました。それならと選んだのが鉄で、鉄はアルミと同じ強度なら細く作れます。多少重さは増しますがアシストの力もありますし、なにより電動アシスト自転車ではめずらしい鉄フレームとしたことで、スマートなデザインを実現できた意味は大きいと思います。チェーンガードも鉄製としてコンパクトなデザインとしました」と語る。

このスリムな鉄フレームに注目! 鉄製チェーンガードもできるだけコンパクトに。内装3段ギアゆえ後輪周りの見栄えはとてもスッキリ。

アルミチューブ全盛の現在だが、こだわり派にはいまだにテッチン(鉄)フレームが人気だ。さりげなく自転車好きのツボをついたな(笑)と、これは編集部の深読みか。

車体設計の西山統邦さんは、
「デザイナーの無理を叶えるのが車体設計(笑) PASではごく一部の実用自転車をのぞいて鉄フレームを採用したことがなかったため、CRAIGのフレーム設計は確か4~5回やり直しています。ふたつの三角形を組み合わせたダブルトライアングルフレームを基本に、多くの人に乗りやすいようトップチューブを低くしたのも、結構大変でしたね」と苦笑い。

傾斜したトップチューブがよくわかる。写真のフレームカラーはマットラベンダー。

「でも」と西山さんが続ける。

「一番大変だったのはこの価格を目標にしたことですよ。設計チームとしてはもっと高く売ってよと、これは正直な感想(笑)。ともかく今は、街中で颯爽とCRAIGが走るところを見たいですね」

ブラックで統一されたフレームカラー。マットジェットブラック。編集部のイチオシはこの漆黒!

最後の「意外」は、オネダン。

モノの値段がすべからくインフレする中、12万9000円というプライスタグは、ヤマハよ頑張りすぎでないか⁉ と思わせる数字である。

デザイナーの北山さんによれば、
「がんばりました! でも企画主旨やユーザーニーズから逆算して達成できた結果でもあるのです。たとえば同じクロスバイクのPASブレイスに比べるとディスクブレーキではなくリムブレーキですし、フロントサスペンションも持ちません。「バッテリー容量はこれくらい、ドロよけやカゴはオプション、ギアは内装3段で充分」といった取捨選択がありました。それと実はデザイン重視で選んだ鉄フレームですが、アルミフレームよりも低コストなんですよ」

トレンドのアンニュカラー、マットグレイッシュベージュ。

70%を占めるという電動アシスト自転車デビュー層に対し、納得できるデザインと手が伸びる価格で訴求する。ヤマハだからこそ作れた一台、それが「CRAIG」。

発売は来年3月29日とちょっとお待たせするが、モノ・マガジンはオーダーが積み重なることを確信する。「そろそろ電動アシスト自転車かな」と妄想しているそこのアナタ! 来春からCRAIG生活を始めたいなら、取り急ぎ予約が正解、だぞ!

「CRAIGをよろしくお願いします!」と車体設計の西山さん(左)とデザイナーの北山さんのシャー・ペー(西・北)コンビ。西山さんは新型クラウン納車直後で「ドライブが楽しみ!」と、これは余談。

ヤマハ/PAS CRAIG
価格12万9000円

車体サイズ:全長1860㎜、全幅595㎜、サドル高815~945㎜。車体重量21.6㎏。適応身長:156㎝以上。1充電当たりの走行距離:36~70㎞。車体カラー3色。

ヤマハ発動機カスタマーコミュニケーションセンター/0120-090-819

  • モノ・マガジン&モノ・マガジンWEB編集長。 1970年生まれ。日本おもちゃ大賞審査員。バイク遍歴とかオーディオ遍歴とか書いてくと大変なことになるので割愛。昭和の団地好き。好きなバンドはイエローマジックオーケストラとグラスバレー。好きな映画は『1999年の夏休み』。WEB同様、モノ・マガジン編集部が日々更新しているFacebook記事も、シェア、いいね!をお願いします。@monomagazine1982 でみつけてね!

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