メルセデスにあってベンツにあらず。
AMG C43に試乗!


サーキットの香りがするメルセデス

メルセデスブランドのAMGといえばモータースポーツ直系のモデルとして人気があるクルマだ。大磯で開催されたJAIA(日本自動車輸入組合)の試乗会でそのC43に試乗。人気の秘密を探ってきた。

試乗車は型式でいうところのW206型、Cクラスとしては5代目を数えるモデルに追加されたC43のセダンになる。日本デビューは2022年の10月。

エクステリアはAMG専用のフロントグリルやスポイラーなど、一見するとエアロパーツ付きのCクラスに見えなくもないところが「羊の皮を被った狼」的で萌えポイントでもある。そのエアロパーツの控えめなところがオトナというところか。

Sクラス+スポーティ=C43

ベビーSクラスの異名を持つCクラス。AMGモデルも同様だ。しかしながらSクラスの豪華さに振ったベクトルと違う要素をふんだんに使ってスポーティさに磨きをかけたのがC43な感じがする。

ダッシュボード上部は航空機のエンジンナセルを彷彿させるモノで、エアコンのエアアウトレットのデザインもスクエア形状に。そしてダッシュボード下部はセンターコンソールまで曲面でつながっている。

インテリアトリムは内装色にかかわらずメタルウイーブと呼ばれるカーボンパネルがスポーティ感を高めている。そしてC43にはブルメスター製のハイエンドオーディオシステムが標準装備でもある。

そんなインテリアでまず目を引くのは縦型の大型ディスプレイ。筆者ユニークだと思ったのが、なんと洗車モードがあるのだ。

その中身を見るとミラーの格納や窓が閉まっているかとかで、おそらく洗車機にこの玉体を惜しみなく「突入」させる使用を考えてのモードだと思う。洗車機を使わない派の筆者にはちょっとしたカルチャーショック。

前席のシートはヒーターやベンチレーション機能が備わったスポーツシート。後席は前席と共通のツートンのデザインでAMGだから狭いとかはなく天井高も膝のスペースもあり、窮屈さは感じなかった。

乗り心地に感動!

いざ走り出すと、その乗り心地に筆者は感動。上品ってこういうことなの? というくらい。今までのメルセデスはモデルによって多少なりの違いがあるけれど、タウンスピード域では若干固めで、80km/hくらいから乗り心地が良いと感じ初めて、120km/h付近で「ああ、さすがアウトバーンを安全快適に移動する国のクルマなのね」となるのが通例だった。

筆者の乗り継いだW202ワゴンや20万kmオーバーを記録したW203ワゴンもそうだったし、今の下駄であるW212ワゴンもそんな感じだ。

それなのにこのC43の乗り心地はどうでしょう。しっとり感と言いましょうか。モデルラジコン的表現をするならばバネとオイルダンパーの相乗効果。

高級なオイルダンパーといった感じでタウンスピード域でも上品に路面の凸凹をいなしてくれる。あの、AMGがである。アウトバーンでイケイケ番長のAMGが、である。うーむ。

エンジンはなんと直4!

ジツはC43の目玉はエンジンにある。ひとりの職人が作り上げるエンジンはAMGの特長だが、今回の2リッター直4ターボに組み合わされたエレクトリックエグゾーストガスターボチャージャー(長い!)は世界初採用という。

なんですかソレ。そのターボチャージャーは F1直系ともいうべき排気タービンとコンプレッサーの間に電動モーターを組み込んだモノ。ターボのコンプレッサーが回るまではモーターの力でターボを回す。

これによって微速域から高速域まで抜群のレスポンスと低回転域でもトルクが得られるというのだ。フロントフェンダーのエンブレムはその技術をさりげなく主張する。

さらにマイルドハイブリッドも装着しているのでほぼターボラグのない加速を享受できる。と長々書いたが、実際はかなりどころか相当に速い。

先代の最高出力に対して18PSアップしてるのだ。特に3500rpmを超えたあたりからターボの伸びを実感できる。また室内にはなかなかなエンジン音が聞こえてくる。

AMGリアルパフォーマンスサウンドはエグゾーストノートをセンサーが拾って室内のスピーカーから流すという凝った仕掛けがあり、これはゲストを乗せて音楽を楽しむ時はステアリング下のスイッチで操作可能。

高速では速度が増すだけ安定感が増える感じもさすが。C43はリアアクスルステアリングが装備されており、100km/h以下では前輪と反対方向に後輪がステアし、取り回しの良さや俊敏なハンドリングを実現、100km/h以上では前輪と同方向に後輪が切れ、レーンチェンジなどでも高い高速安定性を実現している。

クネッた道では湿式多板クラッチを使う9速のAMGスピードシフトMCT(マルチクラッチテクノロジー)が瞬時にギアを切り替えてくれる。無駄にシフトダウンをしたくなるほどのレスポンスだ。

ちなみにこのミッションはそれまでAMGでも旗艦モデルたる63系専用なモノだったが、ついにC43にも装備されるようになった。快適で速い、それでいて実用性も抜群。AMGが支持される理由を身を持って感じた筆者であった。

メルセデスベンツ
AMG C43


価格1116 万円から
全長×全幅×全高4785×1825×1450(mm)
エンジン1991cc直列4気筒ターボ
最高出力408PS/6750rpm
最大トルク500Nm/5000rpm
モーター最高出力10kW
モーター最大トルク58Nm
WLTCモード燃費11.1km/L

メルセデスベンツ
問メルセデスコール:0120-190-610

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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