毎朝、テレビから流れてくる「ゴジラ♪ ゴジラ♪ ゴジラがやってきた♪」の歌声……! ゴジラ史上でも特異なコンテンツである『ゴジラアイランド』の悪役として、’90sキッズに強烈な印象を残したランデス役・鵜川薫さんに、当時小学生で番組を見ていた元’90sキッズ・タカハシヒョウリが超貴重インタビュー!
写真/鶴田智昭(WPP) 文/タカハシヒョウリ
協力/M1号、円山剛士、円谷プロダクション
TM &© TOHO CO.,LTD.
<<ゴジラアイランドとは>>
1997年から98年にかけて、朝の5分帯番組としてテレビ東京系で放送された『ゴジラアイランド』。従来の着ぐるみ特撮ではなく、市販の商品を改造して動かす「ソフビ特撮」とも言える独自のスタイルと、時にシリアス、時にシュールなドラマで、子供からマニアまで人気を博し、高視聴率を記録した。
ゴジラの悪役とウルトラマンの隊員の両方、本当に良いの? 大丈夫?
ーー『ゴジラアイランド』25周年ということで、X星人ランデス役を演じた鵜川薫さんに当時のことを色々とお聞きしたいと思います。まずは、ランデス役に決まった経緯から教えてください。
鵜川:オーディションですね。事務所からは「ゴジラの番組の悪役」だと聞いていたんですけど、平成『ウルトラセブン』でウルトラ警備隊の隊員をやっていたので、正直受からないだろうと思っていました。
業界のルールとかは分からなかったんですけど、自分のイメージではウルトラマンの隊員とゴジラの悪役の両方っていうのは無いだろうって思って。後で困ることになったら嫌だったので、念の為「ウルトラ警備隊の隊員をやってます」って自己申告しました。だから、受かったと聞いた時は、びっくりしましたね。え、本当に良いの?大丈夫?って(笑)。
ーーウルトラセブン、ゴジラと、特撮系のお仕事が集中したわけですね。
鵜川:この頃には特撮系の役をやらせていただく機会が増えて、うっすらと「特撮女優」と呼ばれはじめていましたね。自分ではそういうつもりでは無かったんですけど、そもそもセーラームーンの舞台をやらせていただいたり、アニメ顔だって言われていたんですよね。
ただ、これは『セブン』の時も同じなんですけど、私は特撮のことを全然知らなくて、ゴジラも見たことが無かったんです。テレビでやっているCMを見て、なんとなく怖いイメージしか持っていなかった。
だから、いざ『ゴジラアイランド』に参加したら、こんなにゆるいの!? って最初びっくりしました(笑)。ソフビの下から割り箸みたいのを突っ込んで、それを動かしてるのを見た時には、何これ!一体ここで何をやってるの!? って思って(笑)。
だから、私にとっては『ゴジラアイランド』が最初に触れたゴジラ作品で、ゴジラっていうと可愛いイメージになったんですよね。
ランデスの豹変っぷりは、ほとんどアドリブでした。
ーー鵜川さんが演じるランデスは強烈なキャラクターで、お嬢様かと思いきや、乱暴な口調になったり、一癖も二癖も三癖もありますよね。あのキャラクターはどのように出来上がっていったんですか?
鵜川:まさか自分がジュリアナ扇子を持つ日が来るとは思いませんでしたね(笑)。演技については、そもそもあそこまでの乱暴なキャラをやってくれっていう演出は無かったんです。「やってらんねーぜ!」とか、ああいう豹変っぷりは、ほとんどアドリブです。
最初はちょっと照れもあって、遠慮がちにやっていたんですけど、水谷しゅん監督も「いいよ!いいよ!」という感じで高笑いしているので、どんどんエスカレートしていって(笑)。
あの狭いヴァバルーダのセットの中で、誰とも絡まないでずっとひとり、しかも2カ月分を2日で一気にまとめ撮りするので、テンションを持続させるのがとにかく大変なんです。頭が、ちょっとおかしくなってくるんですよね(笑)。
それで、「自分なりに楽しまないとやっていけない」みたいな感じで、乱暴なことを口走ってみたり、プーってふくれてみたり。もうなんか、とにかく自分が楽しんでやっていたって感じですね。
ーー2日間で90カットにも及ぶ早撮りだったそうですが、撮影で苦労した点はありますか?
鵜川:当時は、台本をもらってから撮りも早かったし、とにかく覚えていかなきゃっていうので精一杯でしたね。別の撮影で行ったパリのホテルでも、ずっと台本を読んでいたのを覚えています。その場にいたスタッフさんに、キャメロン役をやってもらって練習したり。「なんでエッフェル塔見ながら、こんなことしてるんだろ?」って(笑)。
長ゼリフも多くて、「ムー大陸がなんとかかんとか」とか、今までの私の人生で出てこなかった言葉の方が多かったので大変でした。
それで言うと、実は私ずっと「仰天号(ぎょうてんごう)」だと思ってたんですよ(笑)。元々は、轟天号(ごうてんごう)じゃないですか。「これ仰天号だ!」って言って白い目で見られました。
(※仰天号は、ゴジラアイランドの地下に眠る超戦艦。モデルになったのが『海底軍艦』に登場する戦艦・轟天号。轟天号は、大日本帝国海軍が建造した万能戦艦で、ムウ帝国を壊滅させる活躍を見せたが、仰天号は逆に古代ムウ帝国が建造した超兵器となっており、パラレルな関係性が面白い)
体当たりで演じた、ランデス様名シーン秘話
ーー共演者の方との思い出はありますか?
鵜川:共演者の方とは、控え室でもゆっくりお話しするような機会は無かったんですよね。最終話の辺りで、他の方と絡むシーンが2回ぐらいあって、やっと人と会話ができた(笑)。
それまではキャメロンとばかり会話していたんですけど、キャメロンのセリフは撮影時には水谷監督が喋ってくれました。
(※完成映像のキャメロンは、ナレーションも兼任の青山譲さんが声優を担当している。ちなみに水谷しゅん監督は、島村健一郎の芸名でルーカスの声優を担当。)
ーー作中で実際に共演しているのは、神宮寺餅助役の団時朗さん、ミサト役の麻生かおりさん、ザグレス役のあいざわかおりさんです。特に、前期の悪役であるザグレス、後期の悪役のランデスが押し合うシーンは印象的です。
鵜川:あんまりプライベートでもお話してなくて、急にあんな(押し合う)ことになったので、ごめんなさいって感じでしたね(笑)。
団時朗さんとは、本当に2回ぐらいしかお会いしてないと思うんです。打ち上げでもお話しさせていただいた記憶がありますね。そういえば、打ち上げの懸賞で水谷監督が編集したNG集のビデオが当たったんですよ。今も持っていますが、多分あれ一本しかない貴重なものですよね。
(※一部は、DVDボックスの特典DISCに収録)
ヘアスタイルとジュリ扇
ーーランデスは、時期によって髪型が違いますよね。初登場時は内向きのカールがかかっていますが、次に登場した際にはかかっていなかったり。
鵜川:髪型やメイクに関しては、私も番組側も何も言わなかったですね。アイシャドーの色なんかも変わっていってるんですけど、その場のノリっていうか、おおらかだったんでしょうね。でも、ランデスはこんなの(ジュリアナ扇子)持ってるくらいだし(笑)、綺麗にしていたいってところがある人だと思うので、色々な髪型に出来て良かったんじゃないですかね。
ーーボロボロのメイクもありましたし、色んなランデス様が拝めますね。
個人的に、ランデスが暗黒大皇帝に電撃を受けるシーンも印象的です。いわゆるコメディ的な「電撃を受けたリアクション」じゃなくて、鵜川さんは白目をむいて痙攣するような妙にリアルな演技をしているんです。かなり体当たりだなと。
鵜川:そうでしたっけ!?着眼点が素晴らしいですね(笑)。そうですね、何に対しても体当たりしかなくて。あんまり計算とかしなかったです。何も考えてなかったというか、ランデスを憑依させるだけというか。基本、不器用な人間ですから(笑)。
当時は実家に住んでいたんですけど、家で演技の練習をしていました。あの笑い方を練習しているのを聞いて、親はどうしよう……って思ったと思います(笑)。
〇〇が、ピクピク死にそうになってる動きをやって、上手いってすっごい褒められました
ーー本編も特撮も、撮影は全てビルのワンフロアで行われたとのことですが、どんなシチュエーションだったのでしょうか?
鵜川:撮影場所は円谷映像さんの一室だったんですけど、そんなに大きくない部屋でした。エレベーターで上がると、まず手前に作業スペースがあって、そこでスタッフの方々がマスクを着けてソフビの加工をしているんです。そこの細い通路を抜けて奥側に行くと、撮影用のセットが組んでありました。セットも、司令室が終わったら次はヴァバルーダ、ヴァバルーダが終わったら次……、というふうに毎回組み直していましたね。
結局、外に撮影に行くことは(ランデスでは)一度もなかったですね。全部、あの部屋の中で撮りました。撮影の時は、音が入っちゃうので空調を止めるんですけど、ライトに照らされていて暑くて暑くて。
ーー鵜川さんは、特撮の撮影で怪獣も動かしたそうですが、覚えてらっしゃいますか?
鵜川:覚えてます!怪獣を動かしたくて、自分で手伝いに行ったんです。ゴロザウルスが、ピクピク死にそうになってる動きをやって、上手いってすっごい褒められました(笑)。
自分が動かしているシーンが実際に放送された時は、すごい嬉しくて。ゴロザウルスを選んだのは、なんとなくあの子が気に入ったからです。
ステージの台の下から怪獣を動かすんですけど、大人が真剣に怪獣のソフビを動かしてる様がおかしくて笑っちゃって、監督に「俺たちは毎日やってるんだよ!」って怒られました(笑)。
今明かされる、ネオヘドラのキノコの秘密!!
ーー鵜川さんのお気に入りのエピソードや怪獣はいかがですか?
鵜川:エピソードだと、アンギラスの話(179~188話)が好きです。サボテン怪獣のゴロリンが出てくる。自分のトゲで周りを傷つけたアンギラスが落ち込んじゃうっていう、よくこんな話を考えつくなって。
好きな怪獣は、ネオヘドラです。私、ヘドラって存在を知ったのがネオヘドラからなんですよ。ヘドラ好きな方には申し訳ないんですけど、最初は「何これ? これ怪獣なの?」って思ってたんです。でも、見ているうちになんか妙な魅力が出てきて、今はヘドラがすごい好きなんです。
ちなみに、あの話でキノコが生えてきちゃうじゃないですか。あのキノコは、ブナシメジを着色してるんです。
ーーえ、あのキノコは本物なんですか?
そう、本物。スタッフのみんなが、スプレーでシメジを塗装していました。撮影が2、3日続くと、だんだんしおれてきちゃうから、塗り直して。頭いいよねぇ、わざわざ作る必要ないんだもん。
ーーネオヘドラの回だと、ランデスがワイン片手にステーキを食べながら、食糧難に陥ったGガードを煽っていくシーンが印象的です。
鵜川:あ、私もすごい印象に残ってます。あのステーキ、味が無かったんですよね。女性のスタッフさんに「鵜川さん、このステーキは撮影用なので塩胡椒しかしてませんから、味はちょっとアレですよ」って言われて。ああいう食べながら喋るっていうのは、あんまり得意じゃなかったですし、とにかく一回で終わらせないとっていうので気を遣うシーンでしたね。
ランデスは、私にとっては最初で最後の悪役なんです。
ーー朝の番組としては異例の高視聴率だったそうですが、当時の反響はいかがでしたか?
鵜川:「視聴率5パーセント突破おめでとう!」みたいな記念のテレホンカードをもらったの覚えてます。『セブン』の撮影の時も、子供たちに「X星人なのに、なんでウルトラ警備隊にいるの?」「良いもんなの?悪もんなの?」って聞かれたり(笑)。
うちの母親が中学の教師をやっていたんですけど、生徒がふざけて「『ゴジラアイランド』に出てる鵜川さんって、鵜川先生の子供?」って聞いてきたらしいんです。うちの母親も真面目な人だから「そうだ」って言っちゃったらしくて、ある日突然「生徒から手紙を預かってる」ってファンレターを受け取ったことがありました(笑)。
「毎朝見てます、応援してます」みたいなことが書いてあって、「ありがとうございます」って返事を書いて、母親を介して渡してもらうっていうこともありました。
ちょうど『おはスタ』の後にやっていたから、みんな学校に行く準備をしながら『おはスタ』の流れでなんとなく見ていたんじゃないですかね。
ーー学校に行く前に、テレビから流れてくる「ゴジラ♪ゴジラ♪ゴジラがやってきた♪」の歌(「ゴジラの歌 ~The Theme of GODZILLA~」)が強烈でした。
鵜川:あの歌、本当にすごいですよね。もっと知られるべきだと思うんですよね。誰が歌っているんですかね?
ーーTHE EDGEという方が歌っているんですけど、調べても何者なのか出てこないんですよね。ぜひ、またイベントなどで歌って欲しいですよね。ということで、ここまで『ゴジラアイランド』のお話をお聞きしてきましたが、25周年を迎えた『ゴジラアイランド』を振り返ってみて、いかがでしょうか?
鵜川:子供の頃に見ていたという方が本当に多くて、ゴジラの力はすごいなって思いますし、本当にありがたいですよね。大人が全力で真面目にふざけていて、それに私も乗っかって楽しんでいたという感じです。そこにランデスがいることの化学反応があったなら、役者冥利に尽きると思います。
ランデスは、私にとっては最初で最後の悪役なんです。『セブン』のサトミは、やっぱり正義の味方なので外れちゃいけない部分があったんですけど、そういう意味ではランデスは自由に存分にやらせていただいたなって思います。また悪役をやってみたいですね。
古谷敏さん(『ウルトラマン』スーツアクター、『ウルトラセブン』アマギ隊員役)とお会いした時に、「僕は、X星人をやったんだ」(映画『怪獣大戦争』)という話をしてくださって、「私もX星人でした!」って盛り上がったことがあります。X星人とウルトラ警備隊の両方を演じたのは、古谷さんと私だけだと思います(笑)。
<<鵜川薫プロフィール>>
東京都出身。10代からアイドル、女優として活動し、“平成ウルトラセブン”シリーズのハヤカワ・サトミ隊員役でファン層を広げた。『ゴジラアイランド』では、番組後期の悪役・ランデスとしてレギュラー出演。近年はウルトラセブン関連イベントや特撮イベントでも活躍。
<<タカハシヒョウリプロフィール>>
ミュージシャン・作家。ロックバンド「オワリカラ」ボーカル・ギター、特撮リスペクトバンド「科楽特奏隊」ボーカル・ギター。音楽家として活動する傍ら、その様々な文化への偏愛と造詣からコラム寄稿や番組出演など多数。近年は円谷プロダクション公式メディアやイベントでも活躍。
公式Twitter https://twitter.com/TakahashiHyouri
史上最大の誌上KAIJU大決戦!!
ゴジラだ!ガメラだ!ウルトラだ!
『モノ・マガジン』超大怪獣特集
超大絶賛発売中‼
気になる内容はコチラを!!