菊池雅之のミリタリーレポート
待ちわびた20年!
国際観艦式2022

国際観艦式の様子。写真手前が観閲艦隊。「いずも」が観閲艦を務めた。
そしてその横を受閲艦隊が敬礼をしながら通り抜けていく。

2022年の今年、海上自衛隊は創設70周年を迎えました。

海上自衛隊が発足したのは1954年7月1日のこと。……とすると、計算が合いません。これには理由があります。海自がルーツとしているのが、前身である海上警備隊が発足した1952年4月26日なのです。

この栄えある年を迎えるにあたり、2022年11月6日、相模湾上において、国際観艦式を挙行しました。当日はネットにて生中継されたのでご覧になられた方も多いことでしょう。

参加国は、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、インド、パキスタン、シンガポール、マレーシア、タイ、ブルネイ、インドネシア、韓国、フランス(航空機のみ)の13カ国。うち、12カ国からトータル19隻が参加しました。

話を進める前に、「そもそも“観艦式”とはなんのこと?」と首をかしげる方も多いことでしょう。簡単に説明するならば、海軍や海上司法機関等が行う海上式典のことです。海で行われる軍艦のパレードと形容すると分かりやすいでしょうか。

1341年に、英国王エドワード3世が、英仏戦争へと出撃する自国海軍を見送ったことが起源と言われています。

その際、各艦艇は王に対し、精強さをアピールするため、一糸乱れぬ隊列を組んで、出征していきました。国王はその様子から我が部隊の精強さを知りました。そして国外にも伝聞されていきました。

これ以降、各国海軍では、威容を誇るために観艦式を実施するようになりました。多くの国で観艦式は実施されております。

その観艦式に諸外国海軍を招待し、艦艇を派遣してもらうことを国際観艦式と呼びます。英語では、International Fleet Reviewを略し、IFRと略して呼んでいます。

海自の例にもれず、最近では国際観艦式という形で、建国記念日や海軍創立記念日などを祝う国が増えてきています。最近でいうと、中国海軍が創設70周年を記念し、2019年4月26日に国際観艦式を開催しました。

こちらには、13カ国が招待されています。今では考えられない事ですが、日本も招待され、護衛艦「すずつき」を派遣しました。

その他、オーストラリアやタイ、シンガポール、インド、イギリスなど、様々な国で国際観艦式が執り行われております。日本では2002年に海自創設50周年記念として、初めて国際観艦式を実施しました。よって今回は20年ぶり2回目となります。

今回の観艦式において観閲官を務めた岸田文雄内閣総理大臣。

観閲する者を「観閲官」と言います。国家元首、またはそれに準ずる要人が観閲官を務めます。日本の場合は基本的に内閣総理大臣(代理人が務めたケースもあり)が観閲官を務めますので、今回は、岸田文雄総理となります。

そして観閲官が乗る艦を「観閲艦」と呼びます。“観閲官”と“観閲艦”、一文字違いですが少々分かりづらいですね。今回は「いずも」が観閲艦となりました。

そして観閲艦には水先案内人として、必ず先導艦が着きます。今回は護衛艦「しらぬい」が当たりました。

さらに観閲艦後方を数隻が続きます。これが「観閲艦隊」です。今回は、護衛艦「ひゅうが」と「たかなみ」が「いずも」に続きました。

観閲艦隊として、「いずも」に続く「ひゅうが」と「たかなみ」。受閲艦隊の旗艦を務めた「あさひ」(右写真の3隻目)は、訓練展示の際は観閲艦隊の後ろに付いた。

そして、観閲官に対し、敬礼をする艦を受閲艦と呼びます。こちらも複数の艦艇で隊列を組みます。これが「受閲艦隊」です。

今回は、海自が配備する護衛艦や輸送艦、掃海艇などによる第1~第5群までの5つのグループを、海外招待艦艇による祝賀航行部隊として、第6~第8群までの3つのグループをそれぞれ作り、受閲艦隊を構成しました。ちなみに、第9群は海上保安庁の巡視船「いず」が務めました。

日本では、観閲艦隊と受閲艦隊が相互にすれ違いながら式典を実施します。これが「移動式」です。その他には、錨を打って洋上に留まる受閲艦隊の前を観閲艦隊が航行していく「停泊式」があります。さらに、観閲官が陸上の観閲台に立ち、その目の前の海域を航行していく「海上パレード式」というものもあります。

オーストラリア海軍のイージス艦「ホバート」。

1番派遣規模が大きかったのは、オーストラリア海軍で、イージス艦「ホバート」や潜水艦「ファーンコム」など4隻を派遣しました。小型の艦艇で遥々日本まで来てくれたブルネイ海軍の「ダルエーサン」、最後の最後まで参加を渋っていた韓国海軍は補給艦「ソヤン」を派遣するなど注目艦艇も多かったです。

ブルネイ海軍の哨戒艦「ダルエーサン」。
韓国海軍の補給艦「ソヤン」。

予定には含まれていなかった米海軍空母「ロナルド・レーガン」がサプライズ参加しました。観艦式実施海域付近を航行中だったので急遽参加したというアナウンスでしたが、もちろんそんな偶然はないでしょう。

サプライズ参加となった「ロナルド・レーガン」。観閲艦隊の「ひゅうが」と奇跡的に重なった。

空母の行動は米軍の中でもトップシークレットであるため、事前に「観艦式に参加する」などと公表すれば、すなわち、その期間は日本にいることを公言することになってしまいます。

だから事前に公表せず、本番当日まで隠し通したというのが真相でしょう。事実、国際観艦式終了後、岸田首相はヘリで空母へと渡っています。事前調整なくできるわけはありません。

しかしながら、アメリカが空母を派遣したこと自体が強いメッセージとなって世界に伝えられました。これは、今回の国際観艦式のひとつの成果であったと言えるでしょう。

受閲・祝賀航空部隊による祝賀飛行も行われました。陸海空自衛隊の航空機が第1~第9群までのグループを作り、それぞれ飛行していきました。

続いて第10~第12群が海外招待機となりました。第10群が米海軍のF/A-18E/Fスーパーホーネット、第11群が米海兵隊のF-35B、第12群がフランス海軍の哨戒機ファルコン200でした。

その後、訓練展示が行われました。実施された訓練は、「潜水艦による潜航・浮上」「P-1によるIRフレア発射」「US-2による離着水」です。そしてトリを務めたのがブルーインパルスでした。

訓練展示の最後は「ブルーインパルス」が務めた。写真の演技課目は「サンライズ」。

さて、次の国際観艦式はいつになるでしょうか? 海自創設80周年記念を祝うのであれば、2032年となります。はたまた、刻んでいくやり方はせず、30年後に海自創設100周年記念として大々的に行うかもしれませんね。

  • 軍事フォトジャーナリスト.。1975年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。講談社フライデー編集部専属カメラマンを経て軍事フォトジャーナリストとなる。主として自衛隊をはじめとして各国軍を取材。また最近では危機管理をテーマに警察や海保、消防等の取材もこなす。夕刊フジ「最新国防ファイル」(産経新聞社)、EX大衆「自衛隊最前線レポート」(双葉社)等、新聞や雑誌に連載を持つなど数多くの記事を執筆。そのほか、「ビートたけしのTVタックル」「週刊安全保障」「国際政治ch」等、TV・ラジオ・ネット放送・イベントへの出演も行う。アニメ「東京マグニチュード8.0」「エヴァンゲリオン」等監修も行う。写真集「陸自男子」(コスミック出版)、著書「なぜ自衛隊だけが人を救えるのか」(潮書房光人新社)「試練と感動の遠洋航海」(かや書房) 「がんばれ女性自衛官」 (イカロス出版)、カレンダー「真・陸海空自衛隊」、他出版物も多数手がける。YouTubeにて「KIKU CHANNEL」を開設し、軍事情報を発信中
  • https://twitter.com/kimatype75

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