【みんなの建モノ】生みの親・山縣有朋との70年目の“邂逅”
ホテル椿山荘東京70周年へ・後編

2021.11.25

“都会のオアシス”と呼ばれるホテル椿山荘東京は、7つの季節がうつろう森のような庭園と、2022年の70周年に向けた取り組み「庭園プロジェクト」の第2弾として今冬スタートした「森のオーロラ」など、あらゆる要素が組み合わさったランドスケープ。そんな唯一無二の価値を再発見するには、ホテル椿山荘東京自身が自らの存在意義を見つめ直す時間が必要だった。

昨年来の新しい生活様式への移行により、大きな影響を受けざるを得なかったホテル観光業界。むろん、ホテル椿山荘東京もそのひとつで、2020年の5月から約1ヶ月間、創業以来初となる休業を余儀なくされた。そんな中、会社から全スタッフに向けて1通のメールが届く。その内容は、新しいプロジェクトのアイデアを募るというものだった。

「例えば、庭園の真ん中にある幽翠池という池で鯉を釣れるようにしてみてはどうか、とか(笑)。ほかにも、アクセスを改善するべく地下鉄を通したらどうかなど、たくさんのユニークなアイデアが社内に飛び交っていましたよ。ただ、実現できるかどうかは別にして、アイデアを自由に発言していいのというのは画期的だなと思いましたね」とスタッフのひとりが話してくれた。

最終的には「いつの時代も、その時代に必要なオアシスであり続けること」(ホテル椿山荘東京・山下信典総支配人)に自分たちの存在意義を見出すことになる。オアシスの象徴である広大な庭園の最大4分の3を覆う霧の演出「東京雲海」や、ホテル庭園の全天に広がる「森のオーロラ」でニューノーマルなライフスタイルのいまに合った新しいオアシスを表現するというわけだ。

庭園を守るために、庭園を活用する。これがいまのホテル椿山荘東京の根底にある考え方。ホテルとは何なのか、どんなサービスを提供し、どんな場所であるべきなのか。常に自問自答を続け、今後も彼らが考えるオアシスを具現化していくが、その取り組みは庭園だけにはとどまらない。

スパユーザーとスパジャーナリストが選ぶ「スパ クリスタルアワード2021」において「TOP SPA of JAPAN」を受賞した“悠 YU, THE SPA”では、「ウェルネス」の観点から、医療と掛け合わせてリラクゼーションを深めるアプローチ「ウェルネスプログラム」(価格11万円)を10月1日から実施。ドクターの医学的、客観的視点から自身の身体への気づきが生まれるだけでなく、なりたい自分になるための運動、食事、リフレッシュ法など日常生活での取捨選択の方法論まで体得できる。

また、“おうちで癒しのホテルライフを”とECサイトをリニューアルし、あたかもホテルにいるかのような快適アイテムや、椿に携わる産業や市町村の支援になるような商品開発も展開予定。直近では“枕”が爆売れして話題になった。ホテル椿山荘東京の枕でホテルにいるかのような気分を味わいたいというのが購入理由の声が多いそうだが、ニューノーマルなライフスタイルで、「モノ」だけでなく、「癒し」もネット購入できるということか。

今年の秋には、金木犀の香りをミストの霧に織り交ぜ「香る、東京雲海〜可憐なる金木犀〜」を実施したが、来年の秋に向けて、ホテルオリジナルの癒しの香りも発表予定。

「日本的、文化的、歴史的という話は、ほかの施設や空間でも語られるものですが、私たちは庭園を活かした“圧倒的な絶景”とさまざまなサービスで、やすらぎと癒しをご提供していければ。この点においては一番だと思っています! “自分に戻れる場所”をつくりたいのです」とホテル椿山荘東京・マーケティング支配人の眞田あゆみさんが力強くはなった言葉に、この地を愛したひとりの男との邂逅を覚えた。

山縣有朋によって造られた「椿山荘」は、彼の故郷である山口県の“萩”を再現したとも言われている。これは憶測だが、常に緊張感張り詰める当時の政界の幹部であり、明治の元勲とも呼ばれる山縣は、遠く離れた故郷に思いを馳せ、癒しややすらぎの中で何にも邪魔されない空間を求めたのかもしれない。山縣有朋にとっての“自分に戻れる場所”は、140年以上経ったいまもその本質はここ、椿山荘の森の中にしっかりと生かされている。

ときに少々窮屈な思いもさせれらる、今という時代だが、人生の主人公はあくまで自分。本来の自分に戻って、自分らしい人生を全うする活力をみなぎらせる。山縣有朋が愛したこの場所の理由を今あらためて知っておいて損はない。


「森のオーロラ」概要

期間:2021年11月11日(木)〜2022年2月7日(月)
出現時間 :19:00 / 19:30 / 20:00 /20:30 / 21:00 / 21:30 / 22:00(1日7回 約5分) ※閉園後のオーロラを楽しむステイプランでは、23:15にもご覧可能。
出現エリア:庭園内 幽翠
見どころ:幽翠池から空を見上げるようにオーロラの演出を見るのがオススメ。

ホテル椿山荘東京
住:東京都文京区関口2-10-8
TEL:03-3943-1111


  • いま日本のいろいろなカテゴリで生まれている新しいコト・モノ・ヒトに興味津々なフリーライター。趣味はハミガキ。プライベートでは最近わが家に迎え入れたデグー(♀)に癒され中。