菊池雅之のミリタリーレポート
富士総合火力演習とは?
【第1回 そもそも総火演とは?】

富士総合火力演習
陸自の最新10式戦車による射撃の瞬間です。打撃力だけでなく、ネットワークを駆使して戦うハイテク戦車です。


戦車が射撃し、ミサイルが飛び交う
大迫力の公開演習は知る人ぞ知る巨大イベント


“ソウカエン”という単語をご存じでしょうか?
 これは、富士総合火力演習のことです。毎年実施している陸自最大規模の実弾射撃演習であり、これを略して“総火演”と呼びます。頭に富士と冠しているように、富士山の麓にある東富士演習場にて実施されています。
 ミリタリーに少しでも関心がある方にとって“総火演”は、非常に有名な演習です。いや、「イベント」と言ってもいいかもしれません。
 と言うのも、この総火演、一般公開されています。民間人が自衛隊の実弾演習を見学できる非常にレアな機会なのです。また、防衛省にとっても、自衛隊に関心を持ってもらい、理解を深めてもらうために、必要不可欠なものと位置付けています。自衛官募集のためのリクルート活動という重要な一翼も担っています。


富士総合火力演習
富士山の目の前に広がる東富士演習場が、総火演の舞台となります。今回は「令和3年度富士総合火力演習」として、2021年5月22日に実施されました。


総火演を実施する富士学校とは?


 もともと総火演は、今のようなイベント的な演習ではありませんでした。1961年より、富士学校に入校中の学生に対して行う教育の一環として始まりました。
 富士学校とは、普通科(歩兵)、野戦特科(大砲)、機甲科(戦車と偵察)の第一線戦闘職についての教育を行います。もともと、「普通科学校」(福岡県東久留米市)、「特科学校」(千葉県習志野市)、「特車(戦車)教育隊」(群馬県相馬ヶ原市)と、それぞれ職種ごとに教育を行っていたのですが、1954年に統合されました。
 富士学校では、実に様々な教育が行われています。まず、幹部候補生学校を出た初任幹部に対し、小隊長等部隊指揮官となるための基礎となる幹部初級課程(BOC:Basic Officer’s Course)があります。そして、部隊勤務を経て、今度は中隊長や大隊長と言った指揮官となるための幹部上級課程(AOC:Advance Officer’s Course)、さらに上の指揮官となる者を対象とした幹部特修課程(FOC:Functional Officer’s Course)なども行われます。陸自の幹部であるならば、富士学校は何度も入校する場所となります。また陸曹(いわゆる下士官)を対象とした特技課程もあります。
 こうした学生たちの教育支援を行うのが富士教導団です。現在は、団本部及び本部付隊、普通科教導連隊、機甲教導連隊、特科教導隊等という編成になっています。この部隊が、時には先生となり、学生を教えていきます。
 この富士教導団(前身・富士教導隊)が、学生たちに実弾射撃を見せて、火力戦闘とはどのようなものかを知ってもらうのが、総火演の始まりだったのです。そして、1966年より、自衛隊への理解を深めてもらうことを目的に一般公開も開始されました。
 毎年8月に必ず実施され、今年で63回目を数える歴史ある訓練なのです。


コロナ禍で状況は一変…


……しかし、昨年、状況は一変しました。まず、開催月が5月となりました。その理由は、夏に東京オリンピック・パラリンピックが控えており、陸自は各種支援に当たるため、6~8月は忙しくなることから、時期を早めて5月としました。しかし、みなさんご存じのように東京オリンピックは新型コロナウイルス感染症拡大を受け、延期となりました。総火演は感染予防の観点から、一般公開を取りやめることになりました。
 今年についても、同じ理由から、5月22日に開催されることに決まりました。これは残念なことですが、一般公開についても昨年同様に中止されることになりました。
 このような状況ではありますが、「令和3年度富士総合火力演習」は、予定通り開催されました。
 完全クローズドとなってしまいましたが、全5回に渡ってその演習の状況をご紹介して行きましょう。


富士総合火力演習
機甲教導連隊に配備されている74式戦車。引退間近の戦車ですが、今年も大活躍しました。


富士総合火力演習
普通科教導連隊の96式装輪装甲車です。陸自初のタイヤ式装甲車となりました。


富士総合火力演習
16式機動戦闘車による射撃シーン。機動力を生かし、総火演の主役として演習場を所狭しと走りまわり、咆哮を轟かせました。


富士総合火力演習
北海道限定のレア装備である89式装甲戦闘車です。実戦部隊としては、第11普通科連隊(東千歳駐屯地)にしか配備されていません。あとは教育用として普通科教導連隊等に配備されています。


富士総合火力演習
155㎜りゅう弾砲FH70です。これもまもなく消えゆく装備であり、いつまで見られることか…

菊池雅之(masayuki kikuchi)
  • 軍事フォトジャーナリスト.。1975年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。講談社フライデー編集部専属カメラマンを経て軍事フォトジャーナリストとなる。主として自衛隊をはじめとして各国軍を取材。また最近では危機管理をテーマに警察や海保、消防等の取材もこなす。夕刊フジ「最新国防ファイル」(産経新聞社)、EX大衆「自衛隊最前線レポート」(双葉社)等、新聞や雑誌に連載を持つなど数多くの記事を執筆。そのほか、「ビートたけしのTVタックル」「週刊安全保障」「国際政治ch」等、TV・ラジオ・ネット放送・イベントへの出演も行う。アニメ「東京マグニチュード8.0」「エヴァンゲリオン」等監修も行う。写真集「陸自男子」(コスミック出版)、著書「なぜ自衛隊だけが人を救えるのか」(潮書房光人新社)「試練と感動の遠洋航海」(かや書房) 「がんばれ女性自衛官」 (イカロス出版)、カレンダー「真・陸海空自衛隊」、他出版物も多数手がける。YouTubeにて「KIKU CHANNEL」を開設し、軍事情報を発信中
  • https://twitter.com/kimatype75