テッパンスポーツカーの代名詞! 911カレラTに試乗したゾ!

テッパン中のテッパン

テッパン。お好み焼き系必須アイテムでもあるけれど、(お好み焼きを作る時など)それを使えば「外さないアイテム」といった側面の意味も。例えばアイドルグループは坂道系、若大将は加山雄三、二刀流は大谷翔平とイコールのテッパン的なモノが世の中にはある。クルマも同様でスポーツカーといえば、のテッパンはポルシェを思い浮かべても間違いではあるまい。ポルシェは大谷翔平のパートナー企業でもあるし。

そしてポルシェといえば何と言っても911が筆頭だ。近年のSUVやブランド初の電動車でもそのデザインに911のシルエットをオマージュしているほど、ポルシェにとっても911はテッパンなのだ。なお付帯する「カレラ」のネーミングはメキシコ縦断の公道レース「カレラ・パナメリカーナ・メヒコに由来する。

メーカーも認めるハンドリングマシン

創業以来、連綿と続くRRレイアウトを採用した911。現行モデルは901型から数えて8世代目の992型で、デビューは2018年。2024年にはマイナーチェンジが施されて、型式でいうところではタイプ992.2型に。911の車名なれど型式は992で、その進化版は992.2とまさにPCのアップデートのように根が文系で数字が苦手な筆者にはややこしい。

マイナーチェンジのトピックは色々あるかも知れないが、スポーツカー、つまり公道でも楽しい、となればツーリングの頭文字を冠したカレラTがクローズアップされる筆頭。それはクーペとオープンのカブリオレに設定され乱暴な表現と知りつつの狼藉だが、同車はハンドリングを楽しむことに多くのエネルギーを投入しているモデルになる。そしてメーカーも公式に屈折したワインディングや田舎道で、より優れた俊敏性、ダイナミクスでドライビングプレジャーを感じるクルマと謳う。そのためミッションは潔く6MTしか用意されていない。試乗車はクーペでオプションの「ゲンチアンブルーメタリック」が似合いまくるオトナのスポーツカーといった趣な1台。

そしてハンドリングを楽しめるイメージを裏付けるよう、軽量化の第一歩とも言えるリアシートは未装着仕様になっていた。もちろん911のリアシートは荷物置きや子供用としても実用的なアイテムであり、装着の有無は無償で選択可能。

マイナーチェンジでメーターも12.6インチの曲面ディスプレイ化、ステアリング右側にあるエンジンスターターがボタンに変更された。それまでのやたら存在感が強い「ツマミ」状のデザインは不評だったのかも知れぬ。

またダッシュボード上のサーキットなどで実用的なストップウォッチもらしい演出。本来はスポーツクロノパッケージのオプションなのだが、カレラTには標準装備だ。

スーパーに行けるフレキシビリティ

エンジンを始動すると瞬間的にレブカウンターは2000rpmまで跳ね上がり、若干静かになったらスタートOKの合図。もちろん最新のクルマであるからしてアイドリングは必要ないのだろうけれど、わずか1分弱でもそんなドラマがある。コレぞスポーツカー。ボタン押してすぐ動かせるけど、このちょこっとした手間がクルマ好きには楽しい瞬間でもある。

存在感のあるクラッチを踏んで1速へ。たった数mの移動でも、乗りやすいなぁ、と感じる。ポルシェはどのモデルでも一般公道で流れに乗るだけ、ならば超絶乗り易い。イカン、イカンこの乗りやすさは悪魔の微笑みだ。RRだし400PS近くあるし気を引き締めて行かなければ。それにしても乗り易い。

試乗車はフロントを上げるフロントアクスルリフトシステムがオプション設定されていたので(一番左のスイッチ)、スイッチひとつで車高が約40mm上がる。コンビニやスタンドに入る際は精神衛生面でも負担が少ない。しかもこの機能は定期的に通行するルートを覚えさせれば自動で作動するスグレモノ、らしい。

余談だがカレラTは素のカレラよりも車高が1cm低くなるPASMアダプティブサスペンションシステムが標準で装備される。

さらに後輪も操舵するリアアクスルステアは標準装備。低速走行時は回頭性に寄与するし、高速走行時は安定性に利がある、なんて書くと専門誌っぽいが車庫入れなどの取り回しでも威力を発揮するのだ。また乗り心地も流れに乗る速度ならかなりいい。といってもサスの芯の硬さは十分感じるし、路面がカワイソウなくらいのボディ剛性も感じるけれど、少なくとも即時腰痛即時帰宅願望の即時イヤイヤ症候群にはならない。

そんなカレラTは流す分には燃費も優しい。高速を90-100km/hで巡航すれば脅威の14.5km/Lを記録した。3リッターツインターボなのに。

アナタもオスカルになれる!

カレラTのエンジンは前述のように3リッターのツインターボ。もちろんこだわりの水平対向6気筒。そのスペックは394PS、450Nm。パワーユニットには前期型との変更点はないけれど冷却性能の向上をはかって前期型のターボ(グレード名)用のインタークーラーを装着する。このイタズラにパワーを求めない(といっても十分高出力だけれど)ところは、レーシングカーではなくスポーツカーなのだ。唯一の不満(?)は394PSの「御神体」を直接見られない、ということだろうか。

このエンジン、2000rpm付近ではコレからトルクが仕事をしまっせ的にまだ眠たげな印象。といっても排気量も十分あるので街中で流れに乗ったり、リードしたりするくらいではまったく不満はないどころか、運転という行為自体が楽しい。クルマを操るのは自分が主役でクラッチやシフト操作しつつパワーを操るのは堪らない魅力。

「硬派」なRSやGT3系と違い、あくまでも自分が主役気分になれる。宝塚歌劇団の舞台で良く見かける大階段を音楽にのって降りられるのだ。911Tの場合はフラット6ターボのエンジン音がBGMだけれど。高速の合流で2速全開で約100km/h。どこまでも加速が続くフィーリングはこのパワーユニットにとって公道で楽しめる数少ないシチュエーションのひとつでもある。7500rpmのレッドゾーンまで一直線に吹け上がる。特にスポーツエグゾーストモードにしての全開はコレぞスポーツカーを操っている! という実感になり、中毒性を持ってしまいそう。

そしてお楽しみのクネッた道へ。「硬派」系よりも柔らかい足回りはクルマの姿勢変化を楽しめる。この姿勢変化はタイヤの接地感を強く感じられるのでドライバーにとっても安心感に。それでいて昔の911ほどコーナリング中のアクセルオフに伴うRRの危険な香りも非常に少ないセッティングなので、筆者のようなボンクラを絵に描いたような下手っぴでも心の奥まで楽しさが込み上げてくる。クルマの姿勢変化と一連のシフト、アクセルワークがピタっ! と決まった時には頬が緩みっぱなしになることは保証いたす。その演出は超絶なエンジンサウンド。思わず「見せてやるぜ! ユーとミーのテクニックの差をな!!」と隼人ピーターソンのごとく呟きたくなる。

ボンクラな筆者は6速化されてギアの場所がよりわかりやすくなった。シフトダウン時にはブリッピング機能がついており、コレを使うかどうかはモニターから選択可能。このオートブリッピング機能はその昔の納車して家に帰るまでクラッチがな無くなった、などの都市伝説的なカレラ神話とは縁遠いモノ。つまり筆者のようなクラッチ下手な人間がヒール&トゥをしなくてもミッションは抜群の回転合わせで入ってくれる。コレがまた気持ちいいくらいにギアは入るし、絶妙なタイミングなの。しかしヒール&トゥをやりたいためのMTでもあるし、ウムウムウムと悩むところでもある。もちろん今日の絶対的な加速性能といモノサシで測ればATのPDKの方が速い。

余談だがリアのクオーターウィンドウやドアのカーテシーライトなど6MTされた証は外からもわかる。

ゆっくり流す時には別の顔を見せてくれるのも魅力。前述の燃費もしかり。スポーツエグゾーストシステムをオフにしておけば音楽を楽しむこともできる。そんな時のためにBOSEサウンドシステムがオプション設定されているし、試乗車にはコレがついていた。タイヤノイズはスポーツタイヤを履いている以上ある程度は仕方ないけれど。

コンパクト(といっても全長の面だけれど)サイズで日常でも乗りやすい、それでいてブランド伝統のRRレイアウト。ポルシェはテッパンのスポーツカーだ!

ポルシェ・カレラT

価格2060万円〜
全長 × 全幅 × 全高4545 × 1850 × 1290(mm)
エンジン水平対向6気筒ツインターボ
最高出力394ps/6500rpm
最大トルク450Nm/2000-5000rpm

ポルシェ
カレラT
問 ポルシェコンタクト 0120-846-911

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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