
いとうせいこうさんとみうらじゅんさんによる『見仏記 三十三年後の約束』(KADOKAWA)が発売された。1992年(平4)に仏像を愛する “仏友” のふたりが始めた「見仏記」シリーズの最新刊で、第1作で交わした「33年後の3月3日、3時33分に京都・三十三間堂の前で会おう」という冗談のような約束を果たすクライマックスシーンも収められている。そんなふたりが都内で発売記念の記者会見を行うという。みうらさんが好評連載をしているモノ・マガジンとしては、是が非でも行かねばなるまい!
三十三間堂から「午後3時に閉門しますけど、開けておきましょうか?」
10月某日、都内某書店のイベントスペースにて『見仏記 三十三年後の約束』発売記念の記者会見が行われた。モノマガ取材班が到着すると、会場には33年前のいとうさんとみうらさんの等身大パネルが置かれていた。さすがにふたりともお若い! みうらさんは杖を持っているので、「当時は杖がマイブームだったのだな」と感慨にふけっていると、一輪の花を持った、いとうさんとみうらさんが登場した。
記者会見が始まるといきなり「なにか質問はありますか?」とみうらさん。記者たちがとまどっていると、いとうさんが「質問がない場合は……」と33年後の約束の裏話を語ってくれた。
いとう「『見仏記』も京都で終わりだねと。連載も終わるという話だったから。しんみりして“33年後の3月3日、3時33分に三十三間堂の前で会おう”ってどうですかね、と冗談を言って楽しい気持ちになっていたんだよね……」
みうら「いとうさん、トークショーじゃないんだから(笑)」
いとう「いやいや、いきさつを言わないとわかんないでしょ。ところがびっくりしたことに33年後に三十三間堂さんから “やるんですか?” とみうらじゅん事務所に電話がかかってきたんです。三十三間堂は3時30分に閉門するけれども、“あと3分どうします? 開けておきますか?” とありがたいお話がありまして」
みうら「三十三間堂は京都の中でも撮影許可を取るのが大変なお寺で、そんなお寺から “開けておきましょうか?” といただいたので、おかげでぼくらは会えたんです」
いとう「会えるもなにもすっと一緒にいたんですけどね。で、三十三間堂の長い廊下の上・下に待機して、ふたりが近づいてきて……」
みうら「それを今からやります」
3時32分になってもみうらさんがいない!? みうらさん、やらかしたかもしれない!

いとう「3時32分になりました。もうドキドキです」
みうら「3時33分ぴったりに会わないと、33年前の約束がチャラになってしまう。僕らはジラした方が盛り上がるんじゃないかと5分前から時報のカウントダウンを鳴らしていたんですけど……」
いとう「なぜかそこに1機のヘリコプターがやってきたんです。すると集まった2000人の観客全員が、僕らがヘリコプターから来るな、と思っちゃった。」
みうら「ざわざわざわ……(笑)」
いとう「降りて来ないって!」
みうら「新庄監督ならやりそうだけどね」
いとう「角っこに待機している僕らはお互いが見えなかった。僕は性格上早めに出て行ったんだけど、みうらさんがいない!? “みうらさん、やらかしたかもしれない” と、時計を見ながら、“おかしいなぁ~” という顔をして小芝居を続けていた」
みうら「観客は “あれ!? いとうさんだけだ、どうしよう” って。スタッフに“速足で”と言われたので、前の日に観たSnow Manのラウールがランウェイを歩くように腰をくねらせて歩いたんです。ウケなかったけど」
いとう「で、時報がピッピッピーンと鳴って、今だっ! てことで」
みうら「僕がひざまずいて、赤いバラを渡したんです」
いとう「僕もなんでもらったのか、わからなかったから、花を持って上にあげるしかなかった」
みうら「僕は求愛成功って感じだったんでしょうね」
いとう「感動したみうらさんは、自分で泣いちゃったんですよ」


みうら「そのときに涙がダーッときて……でも本来ならウケるシーンじゃん。泣いてんじゃねーよって」
いとう「でも2000人が感涙して、むせび泣いちゃった。僕もツッコミようもないよ、これ」
みうら「その後、トークショーを30分やってくれって言われたけど……」
いとう「何も言うことがなかった。だって、盛り上がりはもう終わってるんだもん」
みうら「それ以上の話はいらないんだよね」
いとう「……そんな感動を呼んだ本が書店に並んでいるっていうじゃないですか!」
みうら「僕の最後のページを読むと、いまでも感極まってズクズクですよ」
いとう「みうらさんは泣く度に僕にメールをくれます。いま、泣いているんだな~って。お酒も飲まないので、しらふで泣いて報告してくれます。それだけ感動する本が発売されます」
みうら「『見仏記』シリーズは紀行文で始めたんだけど、最後は純文学になっているのがすごいなって」
いとう「みうらさん、イベントでは“さらに33年後もあるからね”って言いだしましたから」
みうら「どうせ守れないぐらい遠い約束なら責任がなくていいじゃないですか」
いとう「みうらさん、ぴったり100歳なんですよ。多分、生きていると思いますよ。みうらさんは “車椅子で出てもいいか?” と僕に確認しています。俺もそうだろうから “いいよ” って言ってます。もしかしたら全部AIになって、もう僕たちじゃないかもしれない」
のっけからまるでおふたりのトークショーを見ているような記者会見でした。
購入はこちら



































