今やタイヤがタイヤに生まれ変わる時代! カートで試してみたゾ

タイヤに帰るタイヤ

モータースポーツの登竜門の一つ、レーシングカート。そして全日本カート選手権のEV部門は2022年に始まった。このカテゴリー創設当初よりタイヤを供給しているダンロップは、2023年に未来の環境を考慮したサステナブル原材料を43%使用する「サステイナブルレースタイヤ」を各チームに供与開始している。

そして今年は新たにEVカートのウェットタイヤを公開。こちらの再利用される原材料の割合はもうすぐで半分! の49%。このタイヤのトレッド面にはイネのもみ殻を用いた「もみ殻シリカ」を採用。サイドウォール、ビードワイヤーなどにも当然再利用可能なモノを使っている。その再利用品は例えば天然ゴムや天然由来の原材料を活用するほか、リサイクル鉄から再生した材料を使用といった具合だ。

このサステナブルタイヤはあくまでもタイヤ素材などの再利用である。その昔に流行った山掛けタイヤ(リトレッドタイヤ)とはまるで違う。山掛けタイヤをご存知ない若人に解説させていただくと、山掛けタイヤは消耗してツルツルになったタイヤの表面に新しく黒いゴムを接着剤で貼り付けて溝を作ったモノ。そしてこのタイヤにも松竹梅とあって、100km/hでも剥がれない、というのが一番高級なシロモノだった。昔のヤングマンはある意味イケイケだったのだ。

さて、話は戻ってそんなサステナブル素材のタイヤ、キチンとグリップするのかいな、と思ってしまう斜め目線の筆者。特にカートではマシン性能に差がないため腕とタイヤがモノいう競技。このタイヤが発表された当時に試乗した山内英輝選手(今年はGT300クラスで活躍)によると「従来にタイヤと比べて遜色なく、むしろこっち(サステナブルタイヤ)の方がグリップ力が高い感覚があるくらいのハイグリップにびっくりしました」というではないか。確かに筆者がちょこっと体験した限りではキチンとグリップしていた。

なお試乗会場はシティサーキット東京ベイで、同コースはお台場エリアにあり、都心からのアクセスも抜群のコース。ヘルメットなどのレンタルもあるので手ぶらでカートを体験できるところとしても人気だ。

そして住友ゴム工業は資源循環型カーボンブラックを一部のレース用タイヤに採用。それは今年のスーパーGTの第4戦GT300クラスに投入し、完走を果たすなど「使える」モノとして進化する。素材のカーボンブラックはタイヤの主原料。これをうまく循環させようというのが同社の狙いで、具体定には製造工程のゴム片、使用済みタイヤの粉砕処理品を三菱ケミカルに供給、三菱ケミカルはそれらをリサイクルし、再び住友ゴムに供給することで資源を無駄なく循環させていく。つまりタイヤがタイヤに生まれ変わるのだ。そしてこの技術を使ったタイヤを年内には一部乗用車向けに採用する予定という。

ダンロップといえばあのタイヤ

さてさて。巷で話題のスーパーオールシーズンタイヤの誉れ高いシンクロウェザー(以下SW)。これを筆者のクルマ(ジャガー Xタイプ、FFモデル、タイヤサイズは225/45R17)に装着して約半年。

その感想は快適で燃費も向上した、というモノだ。履き古したタイヤと比べるのは間違いと重々承知だが、まず交換直後のステアリング操作が軽くなった。同タイヤの体験記でも感じたタイヤの柔らかさが筆者のクルマではプラスに作用したようで、車庫入れといった極低速時でも軽く感じる。雪道もアイスバーンも対応しているオールシーズンタイヤながらもサマータイヤの感覚でブレーキを踏めるのは交換直後でも気を使わないのは嬉しい。また後席にクルマにまったく興味ない家人が乗ったら「タイヤだけで随分と乗り心地が変わるんだね」と感想をもらっている。

次に絶対的な燃費の向上。筆者のXタイプはV6の2.1リッターと税制の面では非常に中途半端なトコロにいるエンジンを載せているのだが、今までは街中で5.4〜5.7km/L、高速を2時間近く流しても10.8km/L程度走ればいい方だった。これがSWにした途端、6.3〜6.5km/Lまで向上。なお高速では12km/Lとこのクルマで初めて見た数値を出すなどびっくりするくらい。いつも通りの運転スタイル、普段使いしているからほぼ同じ交通量の同じ時間帯ということを考えても絶対的な燃費向上はあったと思う。もちろんオイル交換もしていない。

また高速走行時のロードノイズも低減していると感じた。それまでオーディオの音量が高速に入ると10から14くらいにしないと聞こえづらかったのだが、SWにしてから絶対的なボリュームは小さい傾向にある。タイヤだけでこうも違う、という体験を身を持ってした次第。

ただし。筆者のクルマと使い方(月2000kmくらい走る)だと空気圧の管理が重要な印象だ。もともとのメーカー指定空気圧は前後とも230kPa。SWを交換していただいたメカさんの話だと「280kPaになってます」と。従来が230kPaだからかなり高めな設定だと思う。この辺りのエピソードを持ってしてもダンロップが認定ショップを勧める訳がわかる。

使い勝手といった面ではSWでは月イチの測定で0.2kPaの補充はルーティンだった。想像以上に空気が早く抜ける。もちろんパンクではないのだけれど最低でも月イチの空気圧点検は必須。SWに限ったことではないけれど。

残念ながら雪道は自分のクルマでは未経験。1月と2月末から3月中旬まで点火系トラブルで工場に入庫しておりほとんど走っていないため。その後の梅雨時では豪雨の高速をリラックスして巡航したり、主催者側発表的にイケイケで走ってもキチンとグリップしてくれた。少なくともタイヤが原因で「うぉ!」という場面には遭遇しなかった。

最後にタイヤの減り具合だが、半年1万km弱の走行で目視で8部山ほど残っている。次の目標は今冬の雪道だ!

ダンロップ
問 ダンロップ 0120-85-5565


シティサーキット東京ベイ

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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