イカしたエントリーモデルがデビュー
全国のナイスなカーガイ(死語)の皆様、アルファロメオのブランニューモデルが登場しました! しかもエントリーモデルを担うそのクルマのお値段は「アルファロメオ」としては、かなりお買い得になっているのです。なおさら気にならざるを得ないじゃないですか。リーズナブルにアルファロメオ、なんて素敵な響き。本国価格よりも安い420万円からの価格設定。今や円が安くて海外旅行も大変なご時世なのに。
そしてアルファロメオなんつーおしゃれなシロモノに乗ってしまえばちょいワル親父な雰囲気も醸し出せてしまいまっせ!というわけで渋いオトナになりたい筆者が乗り出したのはジュニア。同車は前述の通りブランドのエントリーモデルを担うコンパクトモデル。コンパクトなアルファロメオといえばミトがあったが、今やコンパクトでも大きく見えるSUVの世の中なのだ。
ジュニアといえば、発表時はミラノのネーミングだった。1972年以前のモデルにはエンブレムに「MILANO」の文字もあったことだし。しかし発表から5日後にジュニアに変更。ジツはイタリア政府が同車の生産工場がポーランドだったため、ねるとん紅鯨団のごとく、ちょっと待ったぁ! としたのだ。結果、ジュニアに落ち着いたエピソードは記憶に新しい。


キザなセリフが似合うスイーツ?
ジュニアのデザインはひと目見たら忘らないモノ。「もし以前に見かけたならば簡単には忘られない関係に」とかなんとか言われているような雰囲気で、SUVらしく高い位置にボンネットがあるけれど、リアのドアノブをCピラーに配置するなど背の高いクーペ的なシルエット。フェンダーの膨らみをうまく見せた曲線美が特長なのだが、リアビューもスゴイ。流れるようなラインをストン! と惜しげもなくデザートのティラミスを切ったようなテールデザインにしている。

これはコーダ・トロンカという手法で1960年代に同ブランドが先駆けた空力性能に利のあるモノで、往年の名車33ストラダーレの現代解釈でもあるという。さらにその33ストラダーレを現代に蘇らせた特別なクルマも数台だけある。



そういえば同じネーミングでも1980年代の33もリアは切り立っていた、と思ったアナタはかなりのアルファ通。
イタリアンブリフィックス?
さてジュニアはBEVとマイルドハイブリッドの2つが設定されている。前者はエレットリカ、後者はイブリダになる。ところでイブリダ、エレットリカって何? イタリア料理のアンティパスト(前菜)とか料理の名前? とか思いそうだ。イタリアンのコース料理にはプリモ・ピアット(最初の料理、リゾットやパスタ、スープなど)やコントルノ(サラダなどの付け合わせ)などあることだし、恐れ多くもアルファロメオがつけるネーミングだ、きっと何かトキメキがあるに違いないと思ったら、エレットリカ=EV、イブリダ=ハイブリッドとそのままだった。また日本へは未導入だけれどフィアット500にも同じネーミング(イブリダ)を使ったモデルがある。
試乗車はマイルドハイブリッドのイブリダ。室内に入ると、間接照明がシートを照らしているのか、と思うような赤いアクセントのシート。目立つセンターディスプレイはキチンとドライバーの方を向いており、庇(ひさし)のあるメーターといいドライバーファーストの印象。いやアルファらしいモノ。

室内自体はサイズを考えたら十分使えるほど広い。ただし後席にはセンターアームレストは備わらないし、前席にはルーフグリップがつかない(後席はある)のはユニークだ。

熱心なアルフィスタ(ブランドのファン)が最も抵抗がありそうなのはシフトまわりかもしれない。世の流れ、親会社の意向、などオトナの事情的ワードが頭を駆け巡るシトロン、DS、プジョーとほぼ同じなのだ。

ブランド独自のドライブモード、D.N.Aの操作もココからなのだがダイヤル式ではなく、なんとなく寂しい気がするのは筆者だけではないと思う。
テイストはやっぱりアルファ
動き出すと、モーターのみに驚く。マイルドハイブリッドなのにここまでできてしまうのか! と。もちろん始動時はエンジンがかかるのだけれど、バッテリーが十分充電され、かつ深くアクセルを踏まなければ、の話だけれど。20km/hくらいまではモーターだけでも加速できた。
搭載されるエンジンは1.2リッターの直3ターボ。これに駆動用のモーターが組み合わされる。エンジンスペックは136PS/5500rpm、230Nm/1750rpm。筆者がムムムっ! と思ったのは、最大トルクの発生回転数。往年の6Cや60年代のGTVを擁したアルファロメオだから1750rpmかと。いや2000rpm以下で最大トルクを発生させることを伝えたかったのだ。ほぼ日常域でトルクを享受できるので乗りやすいし、走り出しから想像以上のパワフル感。月並な表現だけれどとても1200ccとは思えないほどスピードもしっかりのせてくる。駆動用モーターは22ps/51Nm程度なのだが。

ミッションはギアボックスにクラッチを持つ6速DCT。概ねスムーズだったのだけれど、アイドリングストップからの再始動では、エンジン始動したんだもんね的ショックはあった。
もう一つすぐに慣れるけれど、心構えが必要なのはアクセルオフ時の減速。いわゆるEVのワンペダルモードに近い減速をする。回生ブレーキの充電が強力といえばいいのかもしれない。またその時はアクセルの抜き方ではブレーキランプも点灯するので、抜き方によってはブレーキの多いクルマ、と後続車に思われるかも。まあアクセルだけで停止までできて止まっているのにブレーキランプのつかないクルマよりは後続車には優しいかもしれない。
乗り味は若干硬めと感じた。ただ芯のある硬さといった感じなので、街中の流れに乗った速度で即時腰痛、即帰宅願望的なモノではない。これが高速やクネッた道に入るとしっくりくる。
高速では6速90km/hで約2000rpm。120km/hで約2500rpm。そして3速4000rpmで80km/hだった。走行中でもエンジンが停止(コースティング)し、その時はメーター速度表示が青くなる。高速を1時間以上流れに乗っていたところ21.7km/L(メーター表示)を記録した。

クネッた道に入ると、スポーティなイメージの「らしさ」は健在で、頬が緩む。SUVだけれどアイポイントが低いのでハンドルの切り返しが続いてもSUVらしくない身のこなし。ステアリングの切り始めからのレスポンスが楽しい。上まで回してこそアルファロメオのエンジン、という印象ではないけれど、エンジン音は心地よく、シフトダウン時のブリッピングもテンションが上がる。乗って楽しいのは間違いないのだ。ただそうして走ると燃費はダダ下がりで目的地に着く頃は15.8km/L(メータ表示)まで落ち込んでしまった。
方々で書かれている通り、ジュニアの基本骨格はCMPと呼ばれるモノ。同じステランティスグループで使っているのは、プジョー208、2008、フィアット600、シトロエンC4、DS3、ジープアベンジャーと数多い。また前述の通りシフト周りやドライブモードセレクターはプジョー・シトロエン系と同じのなが少しばかり残念だけれど、走りに直結するような足回りのセッティングはアルファロメオオリジナル。なるほど、こういう差別化なのね、と頷いた次第。

またジュニアにはブランド初の完全なEVモデルで494kmの最大航続距離を持つエレットリカもラインナップ。同車の1580kgという車重はEVとしてはライトウェイトと言っても過言ではなく、トルクフルでスポーティな走りでオーナーを魅了する。
なお、ブランドのデザインアイデンティティでもあるフロントの盾型デザイン、スクテッドは2種類用意され、EVには十字とヘビ(ビショーネ)のプログレッソタイプが、マイルドハブリッドには往時の8Cなどを彷彿させる筆記体のレジェンダが採用される。見ても乗っても味のあるイタ飯ってス・テ・キ。



アルファロメオ
ジュニア・Ibrida プレミアム
価格 | 468万円〜 |
全長 × 全幅 × 全高 | 4195 × 1780 × 1585(mm) |
エンジン | 1199cc直列3気筒ターボ |
エンジン最高出力 | 100kw/5500rpm |
エンジン最大トルク | 230Nm/1750rpm |
モータースペック | 16kw/51Nm |
WLTCモード燃費 | 23.1km/L |