
古今東西のカメラの魅力をカメラ雑誌やWebマガジンを通じて発信し続ける赤城さん。カメラの魅力と楽しみ方とは? そもそも、どうしてこんなにカメラを買ってしまうのか?
写真/鶴田智昭(WPP) 文/鈴木誠
赤城耕一さん
1961年東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒。一般雑誌や広告、PR誌の撮影をするかたわら、ライターとして各種カメラ雑誌へ、メカニズムの論評、写真評、書評を寄稿している。またワークショップ講師、芸術系大学、専門学校などの講師を務める。日本作例写真家協会(JSPA)会長。著書に『フィルムカメラ放蕩記』(ホビージャパン)、『赤城写真機診療所 MarkⅡ』(玄光社)、『アカギカメラ-偏愛だっていいじゃない。』(インプレス)など多数。

写真家としてのオススメは「今でも修理が利くカメラ」
最近話題のコンパクトカメラ。人気機種は中古品が数万円から数十万円に高騰することも。しかし赤城さんは「あくまで写真を撮って楽しむのなら……」と前置いて語る。
「壊れたら直せないカメラは勧めづらいです。高いお金を払って買ったカメラがすぐに壊れてしまって修理も受け付けてもらえないという話を聞くのは、本人のガッカリ感も伝わってきてツラいです。電子部品の入ったカメラによくあります。その点、機械式のカメラなら古くても修理できる可能性があります」
カメラメカニズムと中古カメラ事情に精通する赤城さんらしい、“撮る人”に向けた助言だ。聞けば、自身の連載で取り上げるカメラを選ぶときにも、その時点で修理ができる機種かどうかを意識しているとのこと。記事を見て同じカメラを買う読者がいるかもしれないと考えるからだ。

僕にはエモくないけど……カメラが楽しいのは大事
フィルム=エモい、という図式が、フィルムカメラブームの文脈には必ず出てくる。しかしデジタルカメラ以前はフィルムが当たり前であり、最高性能を目指して開発されていた。
「僕にとってはエモくも何ともないわけです。同じカメラやフィルムを使って仕事をしていたから、エモいとされる写真を見ても『これは単に失敗なんじゃないのか?』と思ったりします。当時は仕事で撮影したフィルムをラボ(現像所)に入れて、無事に上がりを確認できるまでは不安で死ぬ思いでした。そのストレスに耐えられなくて廃業したカメラマンもいました」
「だからデジタルのほうが絶対に便利なんです。でも僕はフィルムで長いことやってきたから、今でも捨てきれない部分があります。とはいえ、新しくフィルムカメラを始めた人が『現像後にスキャンデータだけ受け取ってネガは捨てちゃう』と聞いたときは失神しそうになりました(笑)」
と、ジェネレーションギャップは感じつつも、カメラを始める人たちに対する気持ちはポジティブだ。
「まずは楽しいことが重要です。カメラを持って嬉しい、写真を撮って嬉しい、プリントが出来上がって嬉しい。そこから始まって、過去にはこんな名作があった、あの写真家がこのカメラを使っていた、と研究していくと、いよいよ“趣味”という感じになりますね」
いつもカメラを持ち歩いて「常にカメラとともにありたい」と考える赤城さんも、さすがに仕事で使うような一眼レフカメラや中判カメラでは、仕事を思い出して気持ちが乗らないという。そんなときに、カメラバッグのサイドポケットにスッポリ収まるコンパクトカメラは最適だ。
「何より潔いですよね。レンズも単焦点だったり。だから最初はコンパクトカメラを使ってみて、ズームしたいとか、もっと望遠や広角を使いたいという欲が出てきたら、一眼レフとかにステップアップするのも良いですよね」

何かを学ぶと、その先の楽しさが見えてくる
偶発性のエモさをおもしろがる先に、経験を積む楽しさがあるという赤城さん。
「撮影手順の確認というのは、面倒なようで楽しいんですよね。昔のカメラには操作する心地よさがあります。まずは、買ったカメラについているダイヤルの機能や、書かれている数字の意味をひとつずつ解明していくのはどうでしょう。そうすれば、おのずとカメラや写真の原理も身につくと思います」
「たとえばこのカメラ(オリンパス35RC)のファインダーを覗いてみたときに、二重像を見てピントを合わせる方式であることに気付きます。カメラの仕組みをちょっと勉強していれば、そこで『おお、ライカと一緒じゃん!』と感動できたりするわけです(笑)」

「カメラによっては『レンズを沈める前にシャッターをチャージしないといけない』みたいな約束事もありますから、こういうことが楽しいと思えるかどうかもカメラ選びには大切です。最近はフィルムなども質が良く、なかなかしくじることもありませんから、安心して楽しんでほしいです。むしろ僕が、エモく撮る方法を教わりたいぐらい(笑)」

