
全国各地のちょっと個性的なおみやげを探していたところ、発見したのは山形県・玉谷製麺所の『アートパスタ』。将棋駒や雪の結晶、ブルーインパルスなど、ファニーな形が魅力的だが、原料には山形名産のラ・フランスを使用しているのもユニークだ。「もったいない」精神を吹き込んだ、知恵と工夫にあふれる山形らしい逸品である。
山形県天童市の名産・将棋駒が、もちもちのパスタに!
まさか!? と目を疑ったが、その細部のディテールまで丁寧に再現されていることに驚いた。しかも、原料には摘果されたラ・フランスが使用されているというではないか。これは一体どういう商品なのか。

きっかけは、2011年に起きた東日本大震災。世界中から東北の食が敬遠されるなか、「東北でしか作れない食品を」と、有限会社 玉谷製麺所が開発したのが『雪の結晶』のマカロニだった。これは東北芸術工科大学主催『共創のテーブルプロジェクト』の産学連携により開発されたもので、パリの展示会に出品したところ、たちまち注目を集めた。
その成功を経て、今度は地元・山形にフォーカス。生産量日本一を誇る将棋駒と、同じく特産のラ・フランス、この2つの要素を詰め込んだ『将棋駒パスタ』を新たに開発することになった。

それまで廃棄されていた摘果ラ・フランスには、GABAやポリフェノールが含まれており、栄養価の高い食材としての魅力があった。「それはもったいないと農家さんたちにお願いし、なんとか100kg集めていただき、開発することができました」と話すのは、専務取締役で品質管理・企画開発担当の玉谷貴子さん。
パスタの駒のデザインには、人気の「王将」、縁起の良い「左馬」、飛び回れる「飛車」、どこにでも進める「と」を採用。見た目の楽しさも、つい手に取りたくなるポイントだろう。
『雪の結晶』や『将棋駒パスタ』を皮切りに、アートパスタのラインナップは次々と拡大している。これは、昭和24年の創業以来培ってきた技術と、革新的なアイデアの結晶である。
【編集部が注目する アートパスタ】




茹でても『王将』がクリアに再現できるよう工夫したパスタの金型作り
通常、パスタは茹でると形が崩れてしまうものだが、『将棋駒パスタ』はキリッとした鋭角を保っている。
将棋の駒の形を忠実に再現すべく、押し出し口の金型の設計には多くの苦労があった。「金型屋さんが、漢字で必要な“点”や“はらい”をデザインだと思って省いてしまうので、何度も説明を重ねながら根気強く修正しました」と玉谷さん。

金型の完成には約2カ月を要した。製作時に懸念されていた「王将」の形が、崩れることなくパスタとして押し出せたことも大きな成果である。その努力が実を結び、第9回新東北みやげコンテストでアイデア賞を受賞。一躍注目され、山形を代表する新たなおみやげとして定着しつつある。
ちなみに、気になる味については甘味はないもののラ・フランスの風味がする。しかしながらスープやサラダなどのほかさまざまなメニューと相性が良く、低温乾燥によるもちっとした歯ごたえが、メニューにアクセントを加えてくれる。ユニークでおいしい『将棋駒パスタ』は、誰かにあげるだけでなく自分用にも買ってみたくなるおみやげだ。
■購入先
アートパスタは、玉谷製麺所のECサイトのほか、以下の店舗でも購入可能。
・おいしい山形プラザ(東京・銀座)
・クイーンズ伊勢丹
・山形空港
・清川屋(山形県内・宮城県内)
有限会社 玉谷製麺所
フリーダイヤル TEL:0120-77-5308
受付時間:9:00〜17:30(火曜定休)