現代的な論点を盛り込んだ、新しい日本酒の教科書【本モノReview:第9回】

[編集部より]
「本好き」「本読み」じゃない人たちにも、実はあなたが興味のある情報がこの本に入っているんですよ、ということを伝えるため、その本の出版に携わった方に「この本はこんなにおもしろいんだ!」という熱のこもったテキストを寄稿いただいてます。そういう感じのブックレビューです。第9回は編集者にして共著者のワダヨシさんに『日本酒はおいしい!』という本のレビューをしていただきました。「日本酒がおいしいのくらい知ってますよ」という人にはなおさら読んでほしい本。日本酒とは何かをわかりやす〜く解説してくれます。

それでは、「本モノReview」をお楽しみください。

第9回

現代的な論点を盛り込んだ、新しい日本酒の教科書

文/ワダヨシ(ferment books・編集者・本書共著者)

一部には「古風なアルコール飲料」とのイメージも根強く残る日本酒だが、実は若いファンがかなり増えており、造り手も世代交代して、若い醸造家がどんどん新しいことをやっている。酒類のジャンルで、いま最も「動いている」のが日本酒だ。2024年12月には「日本におけるこうじ菌を使った酒造りの伝統的な知識と技術」がユネスコの無形文化遺産に登録され、世界的にもその存在感が大きくなっているのは間違いない。

そんな「進化する日本酒」を伝えるために、類書にはない論点を盛り込み、ビジュアル的にもキャッチーな一冊になるよう、共著者の浅井直子さんと工夫しつつ編集・執筆にあたった。読者のみなさんにアピールしたいポイントをいくつか下記にあげてみよう。

ほぼすべてをイラストと文章で解説
読者の皆さんからよくいただくのが「イラストが多くて分かりやすい!」の誉め言葉。文章だけより、あるいは写真を添えるより、イラストと文章での解説は、すっと頭に入るようだ。ビジュアルが抽象化されて概念が伝わりやすくなるのかもしれない。

「クラフトサケ」など新しい動きをキャッチ
酒税法上「日本酒」「清酒」には該当しないが、日本酒の醸造技術を活かして造られるクリエイティブな新ジャンルを「クラフトサケ」と呼ぶ。こうした新しいムーブメントに大きな可能性を見出し、詳しく紹介している。

海外のSAKE事情もフォロー
いまやアメリカ、フランスにも酒蔵がある。そんな世界で造られるSAKEを紹介。また海外に輸出され、フランス料理をはじめ各国料理とペアリングされる日本酒についても、わかりやすく紹介している。

あらためて「酔い」について考えてみよう
共著者ワダが個人的に気になっているのが「酒の酩酊」。「日本酒ウェルビーイング」のチャプターでは、あまり語られることがない「酔い」というものについて、民俗学的な視点で解説してみた。

日本酒の分類、醸造法、歴史、酒蔵紹介、テイスティング法、ペアリング術、酒器、など基本的な情報はもちろん網羅しており、初心者がベーシックな知識を得るための「教科書」としての使いやすさはバッチリ。さらに上級者が楽しめるネタも随所に盛り込んである。

知れば知るほど楽しくなる、おいしくなる、日本酒の「アテ」としても、ぜひ!

【書名】日本酒はおいしい!
【著者】ワダヨシ、浅井直子
【定価】本体2,500円+税
【出版社名】PIE International

【著者のプロフィール】
ワダヨシ:編集者。『ガパオ タイのおいしいハーブ炒め』『サンダー・キャッツの発酵教室』『味の形』『発酵はおいしい!』などの書籍を手がける。マイクロ出版社/編集翻訳ユニット「ferment books」を翻訳家の和田侑子と運営
浅井直子:編集者。食の専門誌の編集部を経て独立。食と酒を社会学的な視点で眺めながら、雑誌やwebメディアなどへ寄稿もしている。日本酒にはまって以来、「日本酒を知ることは、日本を知ること」、ひいては「世界を知ること」だと実感中。また、日本酒と音楽のイベントなど、日本酒とカルチャーをつなげる企画も手がける。

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