
[編集部より]
「本好き」「本読み」じゃない人たちにも、実はあなたが興味のある情報がこの本に入っているんですよ、ということを伝えるため、その本の出版に携わった方に「この本はこんなにおもしろいんだ!」という熱のこもったテキストを寄稿いただいてます。そういう感じのブックレビューです。第11回は編集者の綿引勝美さんに『新谷かおる名車グラフィティ 著者が語るカー&バイクガイド』という画集のレビューをしていただきました。これは漫画家、新谷かおるさんが描いてきた数々の名車にスポットを当てた本。新谷先生の過去の原稿を新たにスキャンしており、その筆圧が見る者に単なる名車ガイドと違う「熱気」を伝えてくれます。
それでは、「本モノReview」をお楽しみください。
第11回
新谷かおるが愛したクルマとバイク満載の超ボリューム画集!
文/綿引勝美(メモリーバンク株式会社 代表取締役)
「見本誌、届きました?」。『新谷かおる名車グラフィティ』が完成したので、漫画家・新谷かおる先生にお電話を入れた。「届いた。ご苦労さま」という声に、中身に目を通した興奮が伝わってきた。「よく描いたねえ」と私が誉めると、「本を見ると、改めて数えたら50台を超えるクルマ、バイクを入手していた。1週間もウチにいなかったものもあるけど」という新谷先生。年齢ゆえに、今はすべて処分した名車たちだが、
彼が乗ったクルマ、バイクの多くは、描かれた漫画の中で生き続けている。
リアルな表現は、実際に乗り回したことから生まれるのだろう。航空アクション漫画『エリア88』などの代表作で知られる新谷かおる先生。『クレオパトラD.C.』という作品では、主人公・クレオパトラの愛車としてシボレー コルベット スティングレイC3を描いているが、
このクルマは新谷先生の大のお気に入りで3台も乗り継いだという。
コルベットは、トラックなどで使用されるリーフリジッド式サスペンションを用いた頑丈な車体だ。新谷先生はいかにもアメ車らしい特性を生かし、クレオパトラに派手なアクションを演じさせたという。
その一言一言に、自ら購入したクルマ、バイクへの愛がほとばしる。
漫画家が1コマの絵にどんな想いを込めて描いているのか。それを知りたくて、新谷先生にコメントを求め続けた。
それがはからずも “著者が語るビジュアルガイド” という画集シリーズとして刊行されるようになり、『ARTWORKS』『航空機グラフィティ』『コンバットグラフィティ』と冊数を重ねて、『名車グラフィティ』でシリーズ4冊目となった。2021年から足かけ5年におよぶ仕事だが、新谷先生との半世紀を超えるお付き合いゆえの我儘を言わせていただいた。2025年夏に79歳を迎える私は、新谷かおる先生に次の企画を相談している。
生涯一編集者を目指す私にとって、果てしない夢はまだまだ続いている。




【書名】新谷かおる名車グラフィティ 著者が語るカー&バイクガイド
【著者】新谷かおる
【判型仕様】A4変型判・272頁・帯付き
【定価】本体4,500円+税
【出版元】株式会社玄光社
【著者のプロフィール】
1951年4月26日生まれ、大阪府出身。
高校時代から少女マンガに傾倒し、高校卒業後に上京。
72年にりぼん漫画賞佳作に入選し、73年「りぼん」4月大増刊号に『吸血鬼はおいや?』を発表してデビューする。
同年2月、マンガ家の佐伯かよのと結婚、3月に松本零士の零時社に入社する。
3年半ほどのアシスタント生活を経て独立。77年に、「月刊プレイコミック」に「戦場ロマン・シリーズ」を連載して本格デビューする。さらに翌年「週刊少年サンデー」増刊号に発表した『ファントム無頼』(原作/史村 翔)がヒットし、一躍注目を集める。
以後、精密なメカニック描写と魅力あふれるキャラクターが織りなす物語で、多くのファンの支持を獲得。
85年、『エリア88』及び『ふたり鷹』で、第30回小学館漫画賞を受賞。
航空マンガやカーアクション物の他に、『クレオパトラD.C.』、『砂の薔薇(デザート・ローズ)』等、女性を主人公とした作品もファンを熱狂させている。
■本書の魅力
・『クレオパトラD.C.』『ふたり鷹』など新谷かおる作品から、クルマとバイクを集めた珠玉の1冊!
・人気作より、肉筆原稿をオリジナル・スキャンした豪華画集。
・大型サイズ&フルカラー印刷で、絵具の濃淡やペンタッチを再現。
・新谷かおるがクルマとバイクの魅力を語る、楽しい “名車よもやま話” が満載!!
・新谷かおるの人気キャラクター勢揃い! 『暴走ホリック』を生原画Ver.で初収録。
・村上もとか、麻宮騎亜、新谷かおるの特別インタビュー収録(掲載順・敬称略)
Ⓒ新谷かおる 文中敬称略
詳細は玄光社のHPへ