お酒博士・橋口孝司の酒千夜 Vol.27歴史編:これだけは知っておきたい! スコッチウイスキーの歴史


★今回おすすめのお酒
スコッチウイスキーカクテル「ラスティネイル」

スコッチウイスキーリキュール「ドランブイ」とスコッチウイスキーで作るクラシックカクテル。
ラスティネイルとは‘錆びた釘’という意味。お好みのスコッチウイスキーでどうぞ。

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スコッチウイスキーとは、私たちが「イギリス」と呼ぶ国(正式には「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」)の内のひとつである「スコットランド」で造られているウイスキーです。

ちなみに現在では、イングランドの4つの国(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)全てでウイスキーは造られています。

今回は、ウイスキーの起源(諸説あり)ともいわれるスコッチウイスキーの歴史について、知っておくと役立つポイントをご紹介します。

■スコッチウイスキーの起源

スコッチウイスキーの歴史は、ウイスキーの起源と共に始まります。

ウイスキーの起源については「スコットランド」と「アイルランド」の二大起源説が、現在もっとも一般的です。アイルランド起源説が口伝えによるものなのに対して、スコットランドにはウイスキーの起源といわれる文書が残っています。1494年のスコットランド王室財務記録帳に「8ボルの大麦麦芽を修道士ジョン・コーに与え、それでアクア・ヴィッテを造らせた」という記載があり、その事が根拠になっています。

ちなみに当時のウイスキーは現在のような琥珀色の液体ではなく、無色透明なお酒(蒸溜酒/スピリッツ)でした。

■熟成の始まり〜イングランドによる併合

「ウイスキーは琥珀色」というのは今では当たり前ですが、琥珀色=熟成することが一般的になったのは1830年代と考えられています。

そのきっかけのひとつが1707年イングランドによってスコットランドが併合されたことです。

イングランドに併合された事によりイングランド同等の酒税が課せられるようになったため、スコットランドのウイスキー蒸溜家は、高い酒税を逃れるために造ったウイスキーを隠しました。その時ウイスキーを入れたのは身近にあったワインやビールの樽、シェリーやポートワインの樽でした。

しばらくして隠していた樽を開けてみた所、ウイスキーは熟成し琥珀色に変化、味わいもまろやかに美味しくなっていたのです。

その後1915年にスコットランドではスコッチウイスキーについて、木の樽による熟成を義務化しました。

こうして偶然発見された「熟成」という方法が、その後ウイスキーの特長を決める重要なファクターとなっていくのです。

■ブレンデッドウイスキーの誕生〜連続式蒸溜機の発明

シドニー・ヤング著「fractional distillation」によるカフェ式連続式蒸蒸溜機(英語版)の図解 (1903年)
(出典:ウィキペディア)

18世紀半ばから19世紀にイギリスから始まった産業革命によって、ウイスキーに関する技術革新も進みました。

顕微鏡が出来てアルコール発酵に関する酵母が発見され、純粋培養法が確立されました。また蒸気を動力源とした蒸溜器も開発され生産能力が向上しました。

そんな中、ウイスキー業界を大きく変えたのが「連続式蒸溜機」の発明と「ブレンデッドウイスキー」の誕生です。

スコットランド人のロバート・スタインが発明した連続式蒸溜機を改良し、アイルランド人のイーニアス・コフィーが1832年に特許を取得しました。連続式蒸溜機はコフィーの名をとってコフィー・スチル、あるいは特許を意味する英語パテントからパテント・スチルと呼ばれるようになりました。

それまで用いられていた単式蒸溜器は蒸溜が終わる度に原料を投入する必要があるのに対し、連続式蒸溜機では連続的に原料を投入して蒸溜を行うことがでできます。そのためアルコール度数が高く(90度前後)、クリアで雑味の少ない原酒を大量に造ることができます。安価で入手可能な穀物(トウモロコシ、小麦、ライ麦など)を使う事も可能になりました。こうして現在の「グレーンウイスキー」(サイレントウイスキー)が誕生しました。

スコットランドで伝統的に造られてきたウイスキーの主流は、大麦麦芽(モルト)を主原料に、単式蒸溜器で造られる「モルトウイスキー」でした。クセの強いモルトウイスキーは万人受けするものではありませんでしたが、そこに連続式蒸溜器機で造られる「グレーンウイスキー」が登場し、それらを混ぜ合わせた「ブレンデッドウイスキー」が誕生したのです。

飲みやすさ、手軽さが加わることでスコッチウイスキー市場は広がっていきました。

「ブレンデッドウイスキー」の誕生はスコッチウイスキーの世界を一変させ、1909年にブレンデッドウイスキーが「ウイスキー」として正式に認められたことでさらに市場を拡大していきました。現在でも市場の約9割は「ブレンデッドウイスキー」が占めています。

■「スコッチウイスキー」のブランド化 〜法整備

その後、スコッチウイスキーが世界的なお酒になる要因のひとつは、いち早く法整備が進んだことにあると考えられます。法律によって「スコッチウイスキー」を規定することでブランド化したのです。

「スコッチウイスキー」という呼称について、最初に法律に規定されたのは1933年の財政法です。その中で、「スコッチウイスキーの呼称は、スコットランド内で、穀物を麦芽の糖化酵素で糖化、発酵させて蒸溜し、保税庫で木樽で最低3年間熟成させたスピリッツにだけ適用される」とされました。

その後も蒸溜時のアルコール度数など、様々な規定が追加されるなどの改正が続けられています。

「スコッチウイスキー」とラベルに記されている商品について、品質や消費者の信頼を損なうような事件が起きる度に改正を行い「スコッチウイスキー」のブランド力を保ち続けています。

<参考>スコッチウイスキーの定義

スコットランドでは、スコッチウイスキーについて次のように定義されています。(2009年制定:スコッチウイスキー規則)
-----------------------
・穀物を原料とする
・スコットランドで醸造(糖化/発酵)・蒸溜・熟成をする
・容量700リットル以下のオーク樽で3年以上、スコットランドで熟成する
・アルコール度数94.8%以下で蒸溜
・瓶詰時のアルコール度数は40%以上で ほか
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詳細についてはその後も改正が行われており、2019年には、スコッチウイスキーの熟成に使用できるオーク樽の種別と、使用できないオーク樽の種別を明瞭にすることを目的とした改定が行われました。

<参考>スコッチウイスキーの種類

現在、スコッチウイスキーの種類は大きく3つに分類されます。

2009年制定されたスコッチウイスキー規則では、スコッチウイスキーの種類を5つに定めています。
・シングルモルト スコッチウイスキー=1カ所の蒸溜所で造られたモルトウイスキー
・シングルグレーン スコッチウイスキー=1カ所の蒸溜所で造られたグレーンウイスキー
・ブレンデッドモルト スコッチウイスキー=複数のシングルモルトウイスキーを混ぜたウイスキー
・ブレンデッドグレーン スコッチウイスキー=複数のシングルグレーンウイスキーを混ぜたウイスキー
・ブレンデッド スコッチウイスキー=モルトウイスキーとグレーンウイスキーを混ぜたウイスキー
※それまで慣例的に使用されていた「ピュアモルト」の表記は禁じられた。

■スコッチウイスキー簡単年表

1494年 ウイスキーを造っていた最古の公式文書(スコットランド王室財務記録帳)=スコットランド起源説
1707年 スコットランドがイングランドに併合される
1824年 政府公認第1号蒸溜所として「グレンリベット蒸溜所」が登録される
1832年 アイルランドのイーニアス・コフィーがコフィー・スチル(連続式蒸溜機の原型)の特許を取得
1909年 ブレンデッドウイスキーもスコッチウイスキーとして認められる(ウイスキー論争)
1915年 「木の樽による2年間の熟成」を法律化 (1916年に3年間に変更)
1920年 アメリカにおける禁酒法(~1933年)→カナディアン、スコッチが伸張
1933年 Finance Act(財政法)でスコッチウイスキーが初めて法的に定義された
1964年 アメリカでバーボン法確立。→ウイスキー熟成にバーボン樽の使用が広まる
1988年 スコッチウイスキー法 (Scotch Whisky Act 1988)スコットランドで、スコッチウイスキーの基準に合致したウイスキー以外のウイスキーを製造、貯蔵、ブレンドすることは違法である、とした。

  • 株式会社ホスピタリティバンク代表取締役 ホテルバーテンダーから料飲支配人、新規ホテル開業準備室長、運営などをてがけ26年間ホテルに勤務。2008年より株式会社ホスピタリティバンク代表取締役に就任。バー開業コンサルティングなどを手がけ酒類関連団体の顧問、理事を歴任し国内外で講演、セミナーを行っている。ウイスキーバープロデュース・運営(2017-2019)を行う。 シャンパーニュ騎士団「シュバリエ」、ベルギービールプロフェッサー、日本伝統濁酒学博士などの称号を持つ。 2015年からは「橋口孝司 燻製料理とお酒の教室」にてセミナーの開催や、ウイスキーを愉しむイベント「ザ・シークレットバー」も銀座と西麻布にて定期的に開催している。 「ディスティラリーパッケージ1992」を皮切りに、「ウイスキーの教科書」「カクテル&スピリッツの教科書」「本格焼酎名酒事典」「ビジネスエリートが身につける教養 ウイスキーの愉しみ方」などを執筆、「世界のウイスキー図鑑」「世界のベストウイスキー」「ハリウッドカクテル日本語版」などを監修。ウイスキー、カクテル、スピリッツを中心に酒類に関する執筆・監修は26冊以上。 Webでは、「たべぷろ」にて執筆(https://tabepro.jp/author/hashiguchi) 「江崎グリコ お酒の話」を監修(https://jp.glico.com/osake/index.html)
  • https://www.hospitality-bank.com/

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