JVCケンウッドが敢えて「TRIO」ブランドで、3セット限定、100万円越えのトランシーバーを作る理由。


オーディオの名門同士、ビクターとケンウッドがタッグを組む「JVCケンウッド」から、わずか3セット限定という特別なトランシーバーが発表されました。しかもそこに使われるブランドネームは「TRIO」で、9月10日までの応募による抽選販売になるといいます。なぜいま、なのでしょうか。本プロジェクトが実施された背景を探ります。

モノマガWEB読者にはオーディオ好き、音楽好きが多いと思いますが、であれば話は早いというもの。1927年創業の日本ビクター(設立時は日本ビクター蓄音器)と1946年創業のケンウッド(設立時は春日無線電機商会)が華麗なるタッグを組んだJVCケンウッドのことは当然ご存じでしょう。

JVCケンウッドの設立は2011年のこと。
(参照:JVCケンウッドのあゆみ

両ブランドはJVCケンウッドのもとでそれぞれ得意分野での展開を行っていますが、主としてJVC、Victorブランドではオーディオ製品やポータブル電源、ポータブルソーラーパネルなどを、KENWOODブランドでは無線機やカーナビ、ドライブレコーダーなどを手掛けています。

そのKENWOODブランドで注目の商品/プロジェクトが展開・実施中です。それは、同社製トランシーバー「TS-990」をベースとした、TRIOモデルを3セット限定で発売、というものです。

TRIOロゴバッチ部分、起動時ディスプレイ表示

トランシーバー? 抽選販売で限定3セット?

と聞いても無線機ファンでなければなかなか直感的に情報をつかみづらいと思いますので、今回編集部では、JVCケンウッド セーフティ&セキュリティ(S&S)分野 無線システム事業部 商品企画部 商品企画グループの石田祐一さんに取材をし、「いまなぜ=WHY?」なのかを探ってみました。

まず「TS-990」という製品についてです。TS-990はケンウッドが2013年に発売した最高級実戦機であり、トップクラスのアマチュア無線ユーザーをターゲットとしています。「TS-900番台」はKENWOODのいわば旗艦モデルであり、その歴史は、ケンウッドがまだトリオだった1973年発売の「TS-900」までさかのぼります。

TS-900(1973年発売)
TS-930(1982年発売)
TS-940(1985年発売)
TS-950SD(1989年発売)

※歴代機種のあゆみについては同社「トランシーバーギャラリー」も参照ください

TS-990発売から10周年というアニバーサリーイヤーが本年2023年であり、これを好機に企画された特別メニューが「TS-990」TRIOモデルです。

石田さん「TS-990発売10周年の記念として10セット限定という案もございましたが、よりプレミアム感を出す事と本企画として使用する事となったTRIOブランドにちなんで3セット限定といたしました」。

「TS-990」TRIOモデルの特設ページ

と石田さんは教えてくれました。なるほど。希少性という部分もありますが、もっとも根幹にまつわるTRIOのもつ意味合いからも「3」という数字が導かれたことが分かります。もとより、TRIOブランド自体、春日無線を創業した春日三兄弟に由来するブランドネームでした。

初代TRIOロゴ

TRIOと聞いて思わず涙するファンも多いのではないですか?

石田さん「はい。8月19日、20日、東京ビッグサイトにおいて開催されたハムフェア2023で「TS-990」TRIOモデルを展示しました。その際、シニア層の方々から「やっぱり俺たちの世代は“TRIO”なんだよな」、「はじめて買った無線機が“TRIO”だった」、「“TRIO”カッコいいよね」等のご意見を頂いております」。

ハムフェア2023でのJVCケンウッドブース

ですよね! 続いて現在の無線機ファンのユーザー層、無線機の楽しみ方、トレンドを伺いましょう。

石田さん「アマチュア無線は、10歳代から80歳を超える方々まで幅広いファンとユーザーを持っています。その中で、現在はシニア層の割合が多くなっています。楽しみ方はさまざまで、出来るだけ遠くの無線局との交信、車での移動局運用、ハンディ機による街中等での手軽な運用等があります。東日本大震災以降、災害時の通信手段としてもアマチュア無線の活用が見直されております。これらを機に昔アマチュア無線をしていた方が再開して開局される「再開局ユーザー」の方も多数いらっしゃいます」。

無線機ユーザーにも「ホビー再起動層」が現れているのですね。
 
石田さん「TS-900シリーズでもっとも大切にしていることは、強い信号が重なる中、いかにして弱い目的信号を受信するかと言ったダイナミックレンジ性能や混信除去機能の充実が挙げられます。また、長時間でも聞き疲れなく受信できる音の良さは、「トリオ・トーン」や「ケンウッド・トーン」としてご評価いただいています」。

余談になりますが、本稿を執筆する編集長もケンウッド・トーンを愛する一人です。現在もなお、同社往年のCDプレーヤー「D-3300P」とカセットデッキ「KX-5010」が美音を奏でています。

メディアをいかに美しく・好みに再生するかを追求するオーディオ趣味と異なり、無線趣味は聞き取りにくい電波を独自にキャッチし、交信したり、自分で機材を構築するというDIY的な要素があります。その際に問われる受信性能や、聞き疲れしにくいトーン、ここにこだわることにTS-900シリーズの真骨頂があるとみてよさそうです。

さて、主役たる「TS-990」TRIOモデルの販売についてですが、9月10日(日曜)までに申し込みをされた方の中から抽選を行い、幸運な3名を決定する手順となります。商品のお届け期間は10月下旬の予定です。

「TS-990」TRIOモデルのお申し込み、詳細

TRIOロゴをあしらった製品部分

なお記念モデルの特別仕様は、トランシーバー「TS-990S」、外部スピーカー「SP-990」のフロントパネルバッチに「TRIO」ロゴを採用するとともに、「TS-990S」の起動時、メインスクリーンに「TRIO」ロゴを表示すること、並びに「TRIO」ロゴを使用した特別仕様の取扱説明書を採用すること等となります。

世界にわずか3台の珠玉の無線機。もしかしたら貴兄の手に……。

「TS-990」TRIOモデル/価格119万9000円(税込)

(お問い合わせ)JVCケンウッドカスタマーサポートセンター/0120-2727-87
アマチュア無線機 WEBサイト

  • モノ・マガジン&モノ・マガジンWEB編集長。 1970年生まれ。日本おもちゃ大賞審査員。バイク遍歴とかオーディオ遍歴とか書いてくと大変なことになるので割愛。昭和の団地好き。好きなバンドはイエローマジックオーケストラとグラスバレー。好きな映画は『1999年の夏休み』。WEB同様、モノ・マガジン編集部が日々更新しているFacebook記事も、シェア、いいね!をお願いします。@monomagazine1982 でみつけてね!

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