EV戦国時代の幕開けか!? BYD ATTO3に試乗!!


中国のEVメーカー、BYD

東京オートサロンでも展示されていた中国のEVメーカー、BYDが正式に日本へ上陸。最初に投入されたモデルはATTO3(アットスリー)と呼ばれるミドルサイズのSUV。

毎年大磯で開かれる日本自動車輸入組合(JAIA)の試乗会にATTO3も出展され、抽選倍率が高かったそのシートを幸運にもゲット、短時間ながら街へ乗り出した。

BYDは世界有数のリチウムイオン電池のメーカーとして知られ、その技術を活かして2003年に自動車産業に参入した、クルマとしては新興メーカーになる。

といってもヨーロッパや東南アジアでは2015年には宋や唐といった自国の王朝名を使ったSUVなどもリリースしている。

さて。ATTO3のボディサイズは全長はカローラクロスに近く、車幅はハリアーに近いモノ。リアガラス下にはメーカーのコンセプトであるBuild Your Dreamsの文字があり、また車名の由来は数字単位の「百京分の一」を表す単位という。文系の筆者には説明されたがサッパリだった。

スポーツジムと女子十二楽坊

乗り込むと、筆者の偏見で「中国の自動車産業はもう少し」と思っていた自分を恥じた。乗り降りやシートの出来など、なかなかどうしてどうして。キチンとした自動車を作っている印象。

ユニークなのはインテリアのデザイン。楽器やトレーニングジムをモチーフにしているというがまさにそれ。例えば、筆者が最初は操縦桿だと思ったシフトはダンベルをモチーフというし、ドアに設けられた小物入れは弦楽器になっている。

中国だから胡琴といった方がいいのかも。この弦、実際の音程とは違うらしいが、練習すればドアで音楽を楽しめるのかも知れない。

まさに筋トレする女子十二楽坊。シート合わせをし、セレクターをDに入れる。ちなみに前席左右ともに電動調整式でシートヒーターも標準装備だ。

後席の足元スペースもこのクラスでは長いホイールベース(2720mm)のおかげで広い。そしてそのホイールベースながらも小回りが効くのだ。カタログによる最小回転半径は5.35m。

日本人向けな奥ゆかしさ搭載

フロントに収まるモーターは150kWのモノ。駆動方式は前輪駆動。動きだしも柔らかい感じがする。EVあるあるのトルクがドン! と出るような感じはなく、ガソリン車から乗り換えても違和感はない。早い話が踏めば踏んだだけ加速するのだ。当たり前だけど意外に大事なことなのだ。

トルクトルク! とクルマが主張しないのは渋滞の街中でもソロリソロリと速度を上げようとするのもラクだし、回生ブレーキもハイブリッド車的な慣れを考えると、ずっとガソリン車っぽくて乗り手次第ではギクシャクしないのもうれしい。

それからウィンカーレバーは日本車同様に右についている。筆者、輸入車だからという先入観で右折時にワイパーを動かしてしまった。きっと国産EV組の乗り換えも違和感がないと思う。

総じて日本の道路事情にあったよく出来たクルマという印象。ただ最近増えてきたステアリングのパドルによる回生ブレーキは設定がない。

かわりにコンソールにブレーキの強さ、いわゆるワンペダル操作を可能にするモノはあるが、効きはマイルド。しかしながらクセで急にアクセル全オフにしてもつんのめるような効きでないのは嬉しいと思う。このあたりは個々人の好みの範疇で。

航続距離は400Km以上

ではEVを使う時の自分にあっているかの目安になる航続距離はどうか。それはカタログ値で485kmを謳う。バッテリー容量は58.56kWhでChademoの急速充電にも対応する。

また非常時にクルマの電源を家庭用電源として使えるV2Hやアウトドアでのワーケーションなどでうれしいクルマの電源を外でも使えるV2Lにも対応する。

抜群のコスパを誇る1台

ATTO3の価格はなんと440万円から。前席のパワーシート、シートヒーター、パノラマルーフ、最新のACCや安全支援システムすべてが標準装備。

来年度のCEV補助金が2022年と同額になるとしたら実質350万円前後の価格になる。価格面や装備面でも同じクラスのクルマでダントツにコスパがいいので、ライバル達にはまさに信長が桶狭間で名を売ったような感じだろうか。

今年中に導入予定のアナウンスのあるセダンのSeal(シール)やコンパクトカーのDOLPHIN(ドルフィン)も驚異的なコスパを誇るのかもしれない。まさにEV戦国時代突入なのだ。

BYD ATTO3


価格 440万円から
全長×全幅×全高 4455×1875×1615(mm)
モーター最高出力 204PS/5000-8000rpm
モーター最大トルク 310Nm/0-4620rpm
バッテリー総電力量 58.56kWh
WLTCモード 144Wh/km

BYD https://byd.co.jp/
問 BYDジャパン 0120934-557

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

関連記事一覧