Re:STYLING MONO #147 歩くたびに楽しくなる、そんな不思議なスニーカー「ヴィア・サンガチオ」

#147 ヴィア・サンガチオ


1970年代、アメリカ発の西海岸ブームは、音楽やアート、ファッションなど多くのサブカルチャーとその価値観を日本の若者に植え付けた。特にシューズは個性の発露に欠かせないアイテムであり、アメリカ西海岸から届くスニーカーは、古い価値観に縛られず、“自由”であることの象徴的な存在だった。軽くて歩きやすいスニーカーは世界中に広がり、1980年代~90年代にかけて多くのビッグブランドから名作と呼ばれる逸品が次々と発売される。90年代の日本は空前のスニーカーブームに沸き、ファッションとレアものコレクションという2つの要素が混じったムーブメントは、圧倒的な消費力を持った流行となった。今回のピックアップアイテムは個性的なスニーカーでファンに支持される『ヴィア・サンガチオ』。サブカル的な匂いと90年代のスニーカーに通ずる突出したオリジナリティを持つ。スニーカー好きなら放っておけないその魅力の秘密とは?

にゅ~ずSTEEL BLUE /2022年1月に抽選販売で受付がスタートし、現在は完売。

ひと目見たら忘れない「にゅ」の文字デザイン。「ヴィア・サンガチオ」は細部までこだわる日本の靴製造技術と、イタリアの創造的なデザインの融合から生まれたシューズ。同社の開発コンセプトは“海外から見た日本のスニーカー”であり、「質の高さ」と「遊び心」を追求したオール ハンド メイドのプロダクトである。そして、そんなサンガチオらしいデザインで、名作の誉れ高い『にゅ~ずSTEEL BLUE』が同社7周年記念モデルとして再発売された。ファンの間ではその復活が望まれていた逸品で、青みがかった灰色スエード革を使用し、初期モデルのエッセンスはそのまま残して、さらなる完成度で再製作されている。年を追うごとに素材や製法を進化させ続けていくことを常に考えているブランドらしく高レベルな完成度の再発モデルとなった。

2015年創業後、ブランド名「靴工房サンガッチョ」で展開していたが、2021年5月よりブランド名を「via SANGACIO(ヴィア・サンガチオ)」へ変更。靴を通して、毎日を、人生をもっと心地よく、もっと楽しくする。そんな、ものづくり、サービスを目指している。

「こだわりの品質」と「遊びごころ」が絶妙のバランス。歩くたびに楽しくなる、そんな不思議なスニーカー「ヴィア・サンガチオ」


 1990年代のスニーカーブームは社会現象だった。それまでのスニーカーが市場に安定供給される定番販売だったのに対し、80年代末にナイキのエア・ジョーダンが発売されて以降、スニーカーはモデルによって希少性やコレクション性という、新たな価値が付加されるようになった。いわゆる“レアもの”ブームだ。希少性の高いモデルが高値で取引され、それに伴う“○○狩り”という盗難・暴力事件まで起きるほど狂騒のブームが起きた。ただ、価値観の変化という面から見ると、モノの価値に“情報”という新たな価値が加味されるようになり、同時に技術の高さ、完成度や作りの良さという面でも、イノベーションが進んだ時代だったということが出来るだろう。“限定”という言葉が盛んに飛び交うようになったのもこの頃からだ。


『SANGACIO JAPAN』の創業者である前田一輝氏は、まさにこの90年代のスニーカーブームに、ど真ん中でハマった世代だったという。


「僕は学生時代、新聞配達でお金を貯めてそれを全部スニーカーにつぎ込んでいました。当時はいまみたいなECサイトも無いので、関西から現金書留を送って購入。その時のワクワク感はいまでも忘れませんね。中学の卒業アルバムには『スニーカー屋になる』と書いたほど。社会に出て会社勤めをしていましたが、やっぱり若いころの夢を捨てられず、働いていた会社を退社。神戸の学校で靴の製造技術を学び、次にデザインの勉強をするためにイタリア・フィレンツェの総合芸術学校に留学しました。その期間に学んだ知識や方法論を基に2015年にブランドを立ち上げたのです。」


 サンガチオは日本のブランドである。ただ、そこはかとなくイタリアのエッセンスを感じるのはブランド名のせいだけではない。実際にイタリアで学び、その空気を吸いながら生活したからこその感性がある。同時に世界的な日本文化ブームで和風デザインに着目。ユーモア溢れる「にゅ」の文字など話題性が先行する部分もあったが、創業者は筋金入りのスニーカーマニア。ファンが欲しがる勘どころ、それを形にする生産技術への理解と造詣は、どこのブランドにも負けない深さがあった。


「僕が理想としていたのは、デザインに加え、高品質を担保する一貫生産。素材選びから最後の箱詰め・出荷まですべてにこだわりたかった。ただ、納得できるクオリティでスニーカーを一貫生産できる工場が国内になく、海外に自社工房を設立しました。それによって一貫生産はもちろん、近隣諸国から革をはじめとした各パーツの手配と、オリジナル加工も可能という理想的な工房となりました。ただ、手作りのため1日に生産できるのは少量で1足あたりのコストは当然高くなりますが、その品質の良さは一度履いていただければ体感できると思います。“オーダーメイドの履き心地”を目指して、履いた時に包み込まれるような履き心地になるよう、袋状に縫製したアッパーと靴底を接着させる製法で、1足ずつ手作業です。愛情込めて作っています(笑)」


 サンガチオ最大の魅力はオールハンドメイドであるという点。そこにこだわるのは、手作業の方がやりたいことができる、という理由から。工程は当然多くなるし時間もかかる。しかし、創業から7年目を迎えたいま工場スタッフの熟練度は増し、日々作り方が進化していることを実感しているという。同時にマニアックで突出したアイデアや企画を形にするのに、手作りは最適なメソッドとなっている。シューズの基本であるラスト(足型)は一から製作のオリジナル。甲の部分の隙間を無くし、最高の履き心地を追求。ファッションとして履いて欲しいからクラシカルやローテクのスタイルが多いが、中にはちょこちょこハイテク世代のデザインやカラーバリエーションがあることに気づく人も多いだろう。

 こうしたいたずら好きな遊び心も魅力のひとつ。サンガチオは笑顔が似合うスニーカーなのである。次から次へと作りたいものが出てくるから定番が生まれにくいブランドだが、小ロットの一定数を確実に売り切るという点で、余剰在庫を生み出さないSDG’s な一面も。欲しいものを逃したくないからサイトのチェックは欠かせない、SNS世代の勢いを感じるブランド、次に何が出てくるのか目が離せない。

新たに注目の限定コラボモデルも発売開始!


 スプレーを使ったステンシル技法で、世界中のあらゆる場所をキャンバス化する神出鬼没のアーティスト、バンクシー。そのバンクシーのグラフィティフォトを扱うBRANDALISEDとのコラボモデルが間もなく発売。右足はヒール部、左足はヒール寄りのサイドにグラフィティが入る。バンクシーらしい絵のサイズと配置場所、コラボモデルのツボを押さえたデザインは実に秀逸だ。新モデルが発表されるたび、常に作りのクオリティを上げてくるのがサンガチオというブランド。技術も素材も進化を続けることで、新しい高みを目指し続けている。なので、話題のコラボモデルであると同時に、その作りや履き心地はこれまで以上。価格2万8600円。購入予約はサンガチオ公式オンラインストアで抽選販売。

モデルラインナップ


*完売となった人気モデルの紹介がほとんどだが、とにかくvia SANGACIOはモデル数が多いのでまだまだ欲しくなるシューズがたくさん。まずはサイトをチェックしてみよう!

SANGACIO JAPAN
https://via.sangacio.com


初出:ワールドフォトプレス発行『モノ・マガジン』 2022.05.02号


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  • 1982年より㈱ワールドフォトプレス社の雑誌monoマガジン編集部へ。 1984年より同誌編集長。 2004年より同社編集局長。 2017年より同誌編集ディレクター。 その間、数々の雑誌を創刊。 FM cocolo「Today’s View 大人のトレンド情報」、執筆・講演活動、大学講師、各自治体のアドバイザー、デザインコンペティション審査委員などを現在兼任中。