「効く」のは間違いない
アバルト595体験記


 栄光のスタンダードナンバーでもあるフィアット500。愛らしいスタイリングが人気のクルマだ。見て楽しい乗って楽しいベクトルのクルマなのだけれど、ソイツをベースに魅力マシマシのクルマがあるのだ。それがアバルト595。2013年に日本へ導入され、2017年にフェイスリフトの変更、同時に車名も現在の595に。ちなみに車名の由来の数字は1957年デビューの500をチューニングしたモデルになぞらえている。その当時のノーマルモデルの479ccに対しての595ccだ。

 それにしてもアバルトの音の響きが「通」っぽくてナイスだ。小型車はスタイリングで個性を出すことが多い。そこに最新のメカニズムだったりクラスを超えた装備を持たせたりすることで付加価値をつけるが、歴史や伝統、モータースポーツといった背景を持つクルマとなると数えるくらいになってしまう。昨今のSUVブームもさることながらプレミアムコンパクトと呼ばれるジャンルも人気なのだ。今回登場するアバルト595もその一台。

デザインは500同様丸っこく愛らしいが、変更された前後のバンパーやマフラーがタダモノではないオーラが漂っている。

 アバルトというブランドの響きはモータースポーツのイメージがつきまとう。創立者のカルロ•アバルトは実際、最強のライダーとして1930年代のイタリアを賑わせていた。そんな彼がフィアットをベースにしたスポーツモデルやレーシングカーを販売するブランドを1949年に設立。ブランドのエンブレムでもあるサソリは彼の星座に由来し、アバルトじゃなきゃ満足できない!と豪語する猛者を「サソリの毒にやられたヒト」と言うとか言わないとか。そんなアバルトは1971年にフィアット傘下に収まり、2007年に乗用車ブランドとして復活。そして現在に至っている。

 運転席に陣取り、シート合わせをしながら、

ふと見るとダッシュボードにはベースモデルの名残り(?)でもある500のロゴもある。コレを何となく嬉しく感じるのは筆者だけだろうか?

 キーをひとつ捻り、メーターの各種警告灯を確認してから、おもむろにスターターを回す儀式も古くさいといえば今はそうかもしれないが、アナログチックで気分は高揚する。ブレーキ踏んでボタンを押すだけとかはねえ。キャブレター時代のクセのあるエンジンの掛け方も「儀式」と表現されるが、齢40代の筆者がキーを捻ってエンジンをスタートさせることも「儀式」というとは考えもしなかった。時の流れはオソロシイ。金属製のクラッチペダルを踏んで、

ギアを1速にいれて、

クルマをスタートさせる。ここで気がついたのだけれど、エンストしにくい! ブレーキから足を離すと微妙にエンジン回転を上げてくれる親切設計。ミッションはツーリスモがATモード付きシーケンシャルミッションになるが他は5MTのみ。
 乗り心地は想像通りやや固めだが、不快ではないモノ。アクセルを踏まず(いわゆるアイドリング状態)でクラッチをうまくつなげば3速まで加速できるし、高速道路では5速2000rpmで80km/h巡行が可能。その時の燃費計は20km/L前後を示している。つまりイデタチから想像するよりも燃費がいいのだ。

 エンジンはエンジンは1.4リッターターボの145PS。

ちなみに上級モデルのツーリズモは最高出力165PS、コンペティツィオーネは同180PSだ。595でパワーウェイトレシオ7.7kg/PS、リッターあったり106PSのハイチューンエンジンになる。

 さて、これからクネッた道に行くのにスポーツモードのボタンでも押してみようか、とスイッチを探すと、いつの間にかサソリのロゴになっているじゃないか!

筆者、軽くにやけてしまいました。スイッチをポチッとなすると、ダッシュボードのブースト計に「SPORT」の文字が点灯。これでクルマにサソリの毒が回ったことになる。

毒のまわりに合わせてメーターのデザインが変わる。

スポーツモードはレッドゾーンが通常の5000rpm付近から6000rpmオーバーに変更され、トルクも通常の180Nmから210Nmに増す。

 実際に山道を走るとショートホイールベース(前輪と後輪の間が短い)ということもあり、
路面が悪い道だと結構跳ねる。これをわかりやすいととるかアブナイととるか人それぞれだが、アブなければ速度を落とせばいいだけのこと。それを承知の上でエンジンを回すとこれがまたエンタテイメントなんだな、コレが。適度な重さのキビキビしたステアリング、ヘッドレスト一体型のバケットタイプのシートなど、

イタリアのスポーツモデルって装備や演出などで乗り手(主に操り手だが)を楽しませるエンターテナーでもある。クルマとの一体感が強いし、心地いいエグゾースト・ノートも同様。やはり頰が緩むのだ。

デビュー当初のアバルト500よりボディやステアリングの剛性感が高く感じられるし、脚がよく動く印象もあってクネッた道ではサソリ毒にやられるのは間違いない。ネックは最小回転半径。これは想像(ボディサイズから受ける印象)よりも大きく5.4m。たとえば片側1車線でUターンをするときは1度リバースに入れないと厳しい面もあった。しかしステアリングを握って走り出せば顔がニヤけるイタリアンマジック付きなのだ。

アバルト595


価格320万円
全長×全幅×全高3660×1625×1505(mm)
エンジン1368cc直列4気筒ターボ
最高出力145PS/5500rpm
最大トルク180Nm/2000rpm
(スポーツモード時210Nm/3000rpm)
WLTCモード燃費14.1km/L

アバルト公式サイト https://www.abarth.jp/
問い合わせ先 0120-130-595

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。