【みんなの建モノ】ソニービルをすぐ建て替えなかった深いワケ Ginza Sony Park 中編


前編でご紹介した「Bar Morita」が地下4階にある「Ginza Sony Park」。長年にわたり東京・銀座の名所だった旧ソニービルの跡地を活用して展開されているが、9月30日にフィナーレを迎える。翌10月1日からは「新Ginza Sony Park」としてすべてを建て替える工事がはじまり2024年の完成を目指すが、旧ソニービルの解体を行ったのは2017年から。翌’18年8月に「Ginza Sony Park」として開園させたが、なぜ、これまでの間、公共スペース的な空間として提供してきたのか?

「そもそもビルが老朽化したから壊すというわけでなかったのです」とは「Ginza Sony Park」を運営するソニー企業・プロジェクトマネジメント室の佐々木康浩さん。ソニービルがオープンしたのは1966年にまで遡る。当時、ソニーのエレクトロニクスを紹介する場として誕生したソニービルだったが、「時代が変わり音楽や映画・金融など、手がけるモノやカテゴリの広がったいまのソニーを表現する空間としては物足りなくなってしまったのです。そこでソニーの創業70年、ソニービルの創業50年を迎えた2016年に、新しいソニーのブランドコミュニケーションの場としてソニービルを建て替える『Ginza Sony Parkプロジェクト』の始動を発表しました」。

ソニービルに歴史があり、社を象徴する建モノだったことも大きいと思われるが、すぐに新しいビルへと建て替えないところもソニーらしい。

「もちろん、すぐに建て替えるという方向性もありましたが、どこにでもあるような普通のビルになってしまうのではソニーらしさが表現できません。そこで、あえてすぐに建てないという発想にたどり着いたわけです」

同時にあらためてソニービルのこと、ビルをオープンさせたソニー創業者のひとりである盛田昭夫のことを学ぶ機会にもなったという。

「盛田はウォークマンがデビューするはるか前にソニービルをつくったわけですが、その思想、構造はいまのソニーの人間から見ても先進性にあふれていました」

そのひとつが、かつて盛田が”銀座の庭”と呼んだ数寄屋橋交差点に面する10坪ほどの公共スペース「ソニースクエア」だ。

「限られたスペースの中でも街に開かれた空間をつくりたい、と。その思想がいまの”Ginza Sony Park”に繋がっています。ソニービルは当時から他社の先進的なプロダクトを一緒にディスプレイするなど、自社商品のPRだけにとどまらない複合的な施設でした。現在、『Bar Morita』を展開している地下4階にはもともと本場のフレンチ・レストランを持ってきて、大人の社交場的な空間を生み出していました。海外の著名アーティストなども地下3階の車寄せからビルに入り、螺旋階段を下りてここを訪れたと聞いています。さらに、ふたつ階を上った地下2階には当時としてはとても珍しい海外の雑貨を集めたソニープラザ(現・プラザ)の前進的な場になっていました。ソニーの商品だけが前に出るのではなく、ソニービル全体として人々が豊かになるきっかけを体験する空間になっていたのです。当時からその思想を具現化していたことも、今でもソニーの人間が『盛田は超えられない』と憧れの存在であり続ける理由でもありますね」

盛田が生み出した”銀座の庭”を”公園”と解釈してみる。公園には走っている人もいればトランペットを吹いている人もいる。ぼんやりとくつろいでいる人もいれば、そこを通り抜ける人もいる。そもそも公園はなにをするところか定義されている場所ではない。なにをしてもよく、なんでもできる場所。そのコンセプトを具現化している現在の「Ginza Sony Park」には地上部から地下4階まで”余白”ともいえるゆとりにあふれた空間が展開されている。10坪程度のスペースしかない「Bar Morita」にしてもしかりだ。

「この余白の大切さこそ、盛田が示してくれたことのひとつだと考えています。10月から工事がはじまり、2024年に新しいビルとして生まれ変わるわけですが、ソニービルの最後は盛田と一緒に終わりたい。同時に”街に開かれた施設”という思想も次に繋げ、”公園”というコンセプトも継承していきます。既成概念にとらわれることなく、人のやらないことをやる。これは井深(大)と盛田が示してくれたソニーのスピリッツですが、『クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす』という現在のソニーの存在意義にも繋がります。この建て替えプロジェクトはソニービルを単に新しいビル(モノ)にするのではなく、ソニーを支え続けているスピリッツのもと、ソニービルのコンセプトを進化継承した”新Ginza Sony Park”を創りあげる。それが究極の目的です」

約3年間、”公園”を展開してきて感じたのはいわゆるソニーっぽい生き方をしている人が世の中にはたくさんいるという手応えだったという。そんな人々がパークに集いプロジェクトを盛り上げ、そのフィナーレを迎える。いうまでもなく「Bar Morita」のバーテンダー・栗岩稔さんもそのひとりだ。後編に続く。


Ginza Sony Park

東京都中央区銀座5-3-1
開園時間.11:00-19:00(通常は10:00-20:00、状況により適宜見直す可能性あり)

※9月30日まで開園。地上部は5:30-20:00の間、自由に回遊可能(花びら構造の残る最上部は11:00〜)、パーク内の店舗営業時間はそれぞれ異なる。

https://www.ginzasonypark.jp/


下川冬樹(fuyuki shimokawa)
  • 80’sをこよなく愛するグラサン男。モノづくりやライフスタイルに強いこだわりを持つ人々の熱血応援サポーター。みなさんの熱いハートと想いを写真と文でほどよくゆるくお届けします!