
8月8日より公開される『ジュラシック・ワールド/復活の大地』。その日本最速上映ファンイベントが、7月23日にTOHOシネマズ 六本木ヒルズで開催された。来日中のギャレス・エドワーズ監督と脚本家のデヴィット・コープに加えて、吹替版キャストからも松本若菜(ゾーラ・ベネット役)、吉川 愛(テレサ・デルガド役)、楠 大典(ダンカン・キンケイド役)らが登壇! ひと足早く本作を鑑賞しようと駆けつけたシリーズのファンを大いに盛り上げた。
取材・文/ガイガン山崎



今回が8度目の来日となるギャレスは、お辞儀とともに「コニチハゴザイマス!」と日本語で挨拶。
「昔から日本が大好きなんです。実は3年前、東京で映画の撮影もしてるんですよ」と前作『ザ・クリエイター/創造者』の撮影秘話も交えつつ、「過去にゴジラ映画も監督しましたが、ジャイアント・モンスターが人々を殺戮しまくる映画の発祥の地である日本で、自分の『ジュラシック・ワールド』を上映することができて、本当に夢が叶ったような気持ちです」と、茶目っ気たっぷりにコメントを述べた。
一方、初来日のデヴィットも「幼い頃、テレビで東宝のロゴを目にすると、これからスペシャルな映画を観ることができるんだとワクワクした思い出があります。大人になって、自分もそういった作品に携われるようになり、しかもそれを日本の方々に観てもらえるということに大きな喜びを感じています」と、ギャレス同様に日本の怪獣映画に言及しつつ、喜びの気持ちをあふれさせた。やはり日本といえばKAIJU、KAIJUといえば日本なのだ。

その後、事前に集められたファンからの質問に答えるトークセッションを開始。シリーズ新章の監督として抜擢された経緯と気持ちを尋ねられ、ギャレスは「デヴィットの脚本が送られてきたときは、前作の撮影を終えたばかりで疲弊しきっており、最初は断ろうかと思っていたんです」と衝撃的な告白をしてみせた。しかし、いざ目を通してみれば、いても立ってもいられなくなり、次の日にはプロデューサーのフランク・マーシャルのもとを訪ね、ビジュアル化したいシーンのリスト片手にプレゼンしていたのだという。
フランクは、妻のキャスリーン・ケネディとともに、多数のスティーヴン・スピルバーグ作品を手掛けているハリウッドの大プロデューサーである。しかし、彼から「では明日、スピルバーグ相手に同じプレゼンをしてくれ」と頼まれると、ギャレスの緊張感はピークに。多くのフィルムメイカーもそうであるように、スピルバーグはギャレスにとってスーパーヒーローだからだ。もっともプレゼンの結果、まさかの褒め言葉までもらい、今ここで死んでもいい!と思うほどの人生最高の瞬間であったと興奮気味に語っていた。
また、『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』以来、約28年ぶりのシリーズへのカムバックを果たしたデヴィットは「まさに32年前、私にも同じような機会が訪れました」と、当時大ヒットしていた『ジュラシック・パーク』の原作小説を読み、どんな内容の映画が作れるかをスピルバーグに伝えてほしいという依頼を請けたときのことを回想。やがて映画化の企画が動き出した『ジュラシック・パーク』の脚本を手掛け、『宇宙戦争』や『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』、『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』でもスピルバーグとタッグを組んでいるのは周知のとおりで、今回もスピルバーグから「いいアイデアがあるから、また恐竜映画をやらないか」と持ちかけられたのだそうだ。デヴィットによると、スピルバーグのバイタリティは20代の頃から衰えるところがないようで「たとえば朝起きると、彼から37通ものテキストメッセージを受信していたりするんですよ。お互いに時差のあるところにいても、まるで蜂のように次々と送られてくるので、ただ目を通すだけでも疲弊してしまうんですが、それだけ膨大なアイデアを生み出せる方なんです」と、未だ現役バリバリの巨匠との仕事ならではの苦労と喜びをしみじみ語っていた。


トークイベントが中盤に差し掛かると、吹き替え版キャストも登壇。松本からハリウッドを代表するオールスターキャストとの共同作業におけるエピソードについて尋ねられ、ギャレスが「この映画では、キャストやスタッフがとても親密になりました。実際のジャングルや滝、沼で撮影をしていたので、トイレに行こうと思ったら車で30分くらい移動しないといけなかったんですが、沼の中で1日中撮影していたときは、何故か誰もトイレに行かなかったんですよ。カメラを持って近づいたら、彼らの周りは少し暖かった気がします」と意味深なエピソードを語る一幕も。元々、裏方(VFXアーティスト)出身であるギャレスは、どちらかというとシャイな人物という印象があったのだが、この日ばかりは立て続けにジョークを繰り出しており、終始ご機嫌な様子だった。
また、楠から影響を受けた日本文化について問われた際には「映画の作り手で、黒澤明から影響を受けていない人はいないと思います。彼は映画界のシェイクスピアのような存在ですから。家族の物語という観点からですと、小津安二郎の作品からも影響を受けていますし、最近では『ゴジラ-1.0』を観たとき、とても爽快な作品で自分としても解放されるものがあり、その刺激的な作風に鼓舞されるものがありました」と語るデヴィットに続いて、「日本の文化について正しく理解できているとは思いませんが、いつも日本に来るとSFの世界……まるで別の惑星にやってきたような気持ちにさせられます。アメリカと日本の文化は、お互いに刺激し合い、インスパイアすることによってDNAがミックスされ、よりよいものを生み出していると思います」と親日家のギャレスらしいコメントを残していた。

トーク終盤では、吹き替え版キャストからギャレスとデヴィッドに、それぞれの名前や映画ロゴの入ったオリジナル法被をプレゼントされるという来日イベントではお馴染みとなった光景が展開された。特に『GODZILLA ゴジラ』のときも法被をプレゼントされているギャレスは慣れたもので「ベリーハッピー!」と駄洒落を交えつつ、「日本人になったような気分です。これならビザもいらないですね」とジョークを連発。終始和やかなムードでイベントは進んでいった。



では、「自分は将来、『ジュラシック』シリーズに関わりたいと思っているのですが、おふたりのようになるにはどうすればいいのか、アドバイスをお願いします」という若いファンからの質問へのギャレスの答えで、このレポートを締めたい。
「僕は16歳のとき、『ジュラシック・パーク』を観て映画に携わりたいと思いました。それからフィルムスクール(UCA芸術大学)に行きまして、いろんなテレビやミュージックビデオなどの仕事に関わりましたが、なかなか映画を監督することはできませんでした。何度も何度も断られ、負け続けていました。でも今日、この舞台で皆さんに『ジュラシック・ワールド』を披露することができています。僕は今年、50歳になりました。ですからアドバイスとしては、絶対に諦めないで! ネバー・ギブアップ! 夢は叶うものだと思います」。
ギャレス自身は、長々と自分の境遇について述べはしなかったが、深夜のスーパーマーケットでの棚卸しバイトの傍らに作った恐竜やロボットの出てくるショートフィルムを携えて、イギリスの映像業界に飛び込んだ青年は、常に映画監督になる夢を胸に抱きながらも、下請けのVFX仕事をこなし続けるという雌伏の期間を過ごしている。文字どおり最後まで諦めなかった男の、魂を込めた一作が『ジュラシック・ワールド/復活の大地』なのだ。是非とも劇場に足を運んで欲しい。

ガイガン山崎
“暴力系エンタメ” 専門ライター、怪獣造形集団「我が家工房」主宰。怪獣映画&変身ヒーロー番組を中心に、洋画、海外ドラマ、アニメ、漫画、アメリカンコミックス、模型などに関する原稿のライティングを手掛ける。
『ジュラシック・ワールド/復活の大地』8月8日より大ヒット公開中!
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