
世界的に有名な建築家である隈研吾氏。現在開催中の万博の世界各国のパビリオンを始め、近年は活躍の場を海外にも広げ、その活躍は建築だけにとどまらず、美しいプロダクツなども多く手がけている。
そんな世界的に注目される日本人建築家を、かつての教え子である岡博大監督が、なんと約15年間にわたり、密着し撮影したドキュメンタリー映画『粒子のダンス』が完成した!

隈研吾氏の代表作品とその叡智を後世へ継承しようと、監督の岡博大氏が2010年から、15年もの歳月をかけて自主制作した映画で、世界16ヵ国において、隈研吾氏が手がけた、80以上の建築プロジェクトが登場する貴重な映画だ。

東日本大震災に伴う東北の復興プロジェクトでは、2011年の震災直後の被災地の訪問から始まり、2013年から復興計画に携わる様子、10メートル以上かさあげされた大地に、さんさん商店街(2017)や中橋 (2020)、3.11メモリアル (2022)を建設し、見事に復興を遂げる南三陸の力強い姿が描かれた。



また東京2020大会では、国立競技場のダイナミックな建設風景が描かれ、その他コロナ禍などの中で、絶えず新たな建築のあり方を問いかけ、現代に提案し続ける隈氏の日常的な旅の姿や講演会、建築教育の様子なども、臨場感満載に描かれている。

映画では、国内外で活躍する隈研吾氏の建築作品の数々を通して、国籍や文化の垣根を超えて多くの人々と協力し働くことの意義や、人々の生活の基盤となる、建築が本来持つべき社会的な姿をも、学ぶことができる。



さらに、実験的なパビリオンの建設も、隈研吾氏の建築の見どころのひとつである。これまで、世界中で様々なパビリオンを手がけてきた隈研吾氏の建築物は、常に素材の特性や性質を活か、革新性に満ちている。
北鎌倉の禅寺、浄智寺の一角に設置した期間限定のモバイルシアター「Ozu-Ana」もそのひとつ。本作品の監督を務める岡博大氏が手掛ける「NPO法人湘南遊映坐」が主催した、市民映画祭「予告篇ZEN映画祭」の手作りシアターだ。

なんと境内の竹林から切り出した割竹を、たわませて曲面を作り、防水層を竹で挟み込み、防水性能をもたせた特別なシアター。竹の居室空間に入ると、シアターが広がり誰もが芸術を享受できる。

隈研吾氏の身近な存在である、岡博大監督のフィルターを通して描かれる建築群は、それぞれに異なる輝きを放ち、まるで粒子のように美しく煌めき、決して色褪せることがない。
今年1月に開催された完成披露の初試写会では、隈研吾、岡博大監督が登壇し、舞台挨拶が開かれ、映画にかける想いが述べられた。
「隈建築は粒子状のデザインによって、軽やかに周囲の環境に溶け込み、地元市民や街との間に関係性を築きます。この作品を通して、観客の皆さんには隈建築と自然、環境、市民との間で、日常的に営まれる関係性=ダンスを感じていただけたらと思います」と語る岡博大監督。

さらに隈研吾氏は、「これまで海外で仕事をすることを楽しむかのように、様々な建築を手掛けることに挑戦してきましたが、今は過去の記憶を未来へとつなげて、後世に引き継いでいきたい、そんな想いを持っています」と、15年という月日を振り返り語る。
15年の密着自体、前例がないのであるが、作品そのものも、スピード感と社会的なメッセージのある、特別なものに仕上げられている。
建築家・隈研吾氏のドキュメンタリー映画『粒子のダンス』は、10月19日までコペンハーゲンで開催される、北欧を代表する芸術祭「コペンハーゲン建築ビエンナーレ」の映画部門でも上映された。
さらに、10月2日から12日まで開催される、北米最大級の映画祭のひとつ「バンクーバー国際映画祭」でも、10月8日・9日に、映画が上映される予定だ。是非この機会に日本が誇る、名建築家隈研吾氏のプロジェクトの舞台裏をともに覗いてみよう!
<上映作品>
『粒子のダンス』(岡博大監督/2025 年/145 分)
制作:NPO 法人湘南遊映坐