闇バイト、ヤバい‼ ヒグマ、ヤバい‼ 鈴木福主演『ヒグマ‼』スペシャル対談

鈴木福主演の映画『ヒグマ!!』が、11月21日(金)より全国公開となる。テーマは「闇バイト」と「ヒグマ」。一見なんの関係もなさそうな、しかし現代の日本で大きな問題となっている2つの事象を取り上げた、これまでにないモンスターパニック映画だ。内藤瑛亮監督と、主演を務めた鈴木福さんの2人に話を聞いた。

写真/鶴田智昭(WPP) 文/小林良介 ヘアメイク/ショウジロウ フェニックス スタイリスト/作山直紀

映画『ヒグマ‼』公式サイト

傷も痛々しい小山内。物語はどんな結末を迎えるのか?
円井は「福くんとの初共演、そして内藤監督のユーモアとバイオレンスが交わる世界に参加でき、とても光栄に思います」とコメント。

「闇バイト」×「ヒグマ」。時代を映したパニックムービー

内藤監督は企画の経緯について「もともとは別の企画を考えていたのですが」と語る。「プロデューサーの佐藤圭一朗さんから “闇バイトがヒグマに襲われる映画を考えているんですけど、どう思います?” って最初に言われて。社会的に立場の弱い人間が罪を犯して、それ故にヒグマに襲われるという構図が秀逸で、面白い映画になりそうな予感がしました。映画会社側もそっちの方を先につくってくれって話になって、もともと進めようとしていた企画はとりあえず置いといて、みたいな」

これまでも内藤監督は、社会問題を取り上げた作品も数多く製作してきた。そして闇バイトの問題に対しても、かねてより気になっていたという。

「自分が住んでいる町の中でも “闇バイト強盗らしき事件がありました” みたいな報道があったりして、すごく身近な問題だなと思っています」

そんな映画の主演に、鈴木福さんをキャスティングした理由はどこにあるのだろう。

「プロットを書いている段階から福くんの顔が浮かんでいて、福君のもつ陽性というか明るくポジティブな感じがこの作品のトーンにはすごく合っていると。ヒグマに襲われても映画として楽しそうに見えるというか、シリアスすぎずに観られるなっていうのは思っていて。プロデューサー部に“福君がいいと思います”と提案したらみんな乗り気で、“これはもう福君以外は考えられないね”ぐらいな感じで決まりました」

闇バイトをして、最強モンスターに遭遇した主人公・小山内(右・鈴木福)とバディを組む戦闘力の高い相棒・若林桜子(左・円井わん)。
「闇バイト、始めたんだ」鈴木さん演じる小山内を衝撃の展開が待ち受けている。

一方の鈴木福さんは、この映画のオファーを受けた時はどう思ったのだろうか。

「やっぱり最初は“なんだこの話は”っていうのがありました。内藤監督の作品は社会派というか、そういうのもありながら人の心情をドロドロ出すようなイメージがあったので、この脚本がどうマッチするんだろうって、ワクワクしました」

ホラー作品も数多く手掛けてきた内藤監督だが、本作「ヒグマ!!」では、ホラー要素に加え、緊張と緩和の緩急が効いた演出になっている。

「僕が演じたことで、よりコミカルな感じになったところはあるかもしれません。一番最初に脚本を読んで思い描いていた印象よりも、撮影を進めてく中で、方向性がもう一段階ちょっと違う方向に進んで、キャラクター感が強まったっていうのは感じました」

鈴木福さんの言葉に、監督は付け加える。

「それを期待したキャスティングでもあって、脚本自体もある程度ポップな部分はありますが、それをバージョンアップさせたいっていうのは、福君だったら僕の脚本以上にやってくれるだろうっていう期待感もあって」

そうした部分に加え、アクションシーンもまた、鈴木福さんは内藤監督の期待以上の動きを見せたそう。

「福君自身がアクション好きなこともありますが、動ける人なんだなと思いました。回転して倒れ込んだり、蹴られてザザッと倒れ込むとか。福君が思い切って動けるから“じゃあ、もうちょっとオーバーにやってみて”って言えました」

初共演となった円井わん、ベテラン俳優の宇梶剛士の立ち回り

ハンター神崎役にベテランの宇梶剛士。燻し銀の味わいを見せる。

アクションシーンと言えば、ヒロイン役の円井わんさんの動きも見どころのひとつだ。以前に舞台挨拶を観たとき、ジーンズ姿に髪をまとめたワイルドな感じがかっこよくて、本作の役柄=若林桜子のイメージと合致したことが、彼女を据えた決め手だったという。

「彼女はすごくキャラクターを真から理解して、やりすぎず、冷たく突き放す感じがちょうどいいというか。ワイルドでちょっと野蛮なキャラクターで、変に笑わせようとしない感じがちょうどいいというか」

鈴木福さんと円井わんさんの共演は、これが初めてだ。

「最初は、この映画の役柄の桜子みたいなつんとした雰囲気がある方だったので、仲良くなれるのかなってすごい不安だったんですけど。実はめちゃめちゃ明るい方で、すごい助けになりました。昨日も連絡とり合ったりして」

作品中、ヒグマの糞をめぐってふたりが会話をするシーンがあるが、これは脚本の途中から、ふたりのアドリブになっている。

「うんちの件があんなにしっかり使われると思ってなかったです(笑)。監督から “カットをかけるまで好きに喋ってほしい” と指示があって、カットがかからないからとにかく続けてみたらああなって。もっと編集で短くなると思っていたら結構入ってたから、“あ、監督はここが好きだったんだ” って思って(笑)」

映画の中でこのふたりのシーンが多いことと比例して、撮影それ自体も、ふたりは長い時間一緒にいることが多かった。

「どの場面も一緒にいたんで、ずっと楽しくワイワイやれてよかったなと思います。僕もそうですけど、わんさんも監督の“こういう風にやって”っていう指示に “マジっすか、じゃあやりますね” って言って、それがどんどん楽しくなって」

危険なオーラを強烈に放つ、闇バイトのメンバー役に岩永丞威。

そんなふたりの仲を取り持ったのが、猟師役の宇梶剛士さんだ。

「ここで言える話、言えない話を現場でもいろいろと聞かせて下さったり、すごい気にして下さって。僕とわんさんとの3人だったり、スタッフさんとかも含めてだったり、2~3回くらい、食事をごちそうしてもらいました」

怒り、赤く光る目で、どこまでも追いかけてくるヒグマと戦う猟師の神崎。

内藤監督いわく、宇梶さんは今回の猟師の役作りにあたり、かなり積極的にいろいろな提案をしてきたという。

「北海道のアイヌの方々のコミュニティで作られた指輪とかクマの爪がついたチェーンみたいなアクセサリーとか持ってきて。少し北海道訛りが入ったセリフになってるんですけど、あれも現場で宇梶さんがそうしたいって、色々提案してくれて。知り合いに本物の猟師の方がいるそうで、撮影中にその方がヒグマに追いかけられたっていう映像も見せてくれました。ニュースに使えるんじゃないですかっていうぐらいの」

そうした背景をもち、意欲的に挑んだ宇梶さんのリアルな猟師役にも注目したい。

CGでなくあえて造形で描いたクマの姿に込められた「映画らしさ」

撮影現場の話で盛り上がる内藤瑛亮監督と鈴木さん。

そんな経験豊富な3人の演技だけでなく、「ヒグマ!!」にはさまざまな映画作品へのオマージュが盛り込まれている点も、見どころのひとつだ。『エイリアン』や『ゴジラ』など、誰もが知る作品だけではない。

「エドガー・ライト監督の『ホット・ファズ』とか、すごいいっぱいあるんですけど」

内藤監督が言う通り、映画マニアの人々は、鑑賞の際それらを探してみるのもいいだろう。

そして、もうひとりの “主役” であるヒグマはCGではなく、造形のクマだ。シーンに合わせてひとりが演じる二足歩行のヒグマと、ふたりが中に入って獅子舞のように動く四足歩行のヒグマを使い分けている。ヒグマをデザインしたのは『シン・ゴジラ』や『シン・仮面ライダー』『ゴールデンカムイ』などに参加した百武朋(ひゃくたけ・とも)氏。そのクマに対して、鈴木福さんはこんな感想を抱いたという。

「いろいろな技術が発達している今、わざわざこれだけ手の込んだことをやるっていうところが、僕はすごい面白いと感じましたし、ある種、逆に新しいところがあると思いますね。それが自分にとってはすごいいい経験だったというか、映画作りっていうものをひしひしと感じました。映画撮ってる!っていう感じがすごく楽しかったです」

福さんが楽しんで撮影に臨んだように、映画それ自体も楽しい作品だ。ただ「楽しいだけの映画では終わらせたくなかった」と内藤監督は語る。

「闇バイトに手を出す人たちの袋小路感は入れたいと思いました。映画は、愚かな選択をした人でも正しい道に進むことはできるということを示すものだと思っているので、そこは丁寧に描きました」

重いテーマを扱いながら、決して、観終わった後にいやな気持が残るものではない。鈴木福さんは主人公の小山内空について、このように語ってくれた。

「この大きな出来事を経た彼の成長が感じられる話になっていると思います。事件の後のことは映画では描かれていないけれど、それがイメージできるような話になっていると思うし、していかなきゃなっていう思いはすごいありました」

内藤監督は映画を観る人に向け「闇バイト、ヤバい! ヒグマ、ヤバい! 福くん、ヤバい!と思っていただければ幸いです」と結んだ。

映画『ヒグマ‼』は11月21日(金)全国公開‼

公式サイト
公式X:@HigumaMove 
公式TikTok:@higuma_movie

鈴木福(すずきふく)
2004年、東京都出身。子役としてデビューし2011年に放送された『マルモのおきて』で人気を博す。その後も映画・ドラマ・舞台など幅広く活躍し、広い世代から支持を集め、俳優、タレントとしてのキャリアを重ねている。

内藤瑛亮(ないとうえいすけ)
1982年、愛知県出身。映画美学校卒業後、特別支援学校で教員として勤務しながら自主映画を制作する。教員退職後は映画『ミスミソウ』『許された子どもたち』など、罪を犯した少年少女をテーマにした作品を多く手掛ける。

©2025 映画「ヒグマ!!」製作委員会

小林良介(こばやしりょうすけ)
大手出版社で契約社員として勤務した後、独立。取材&ライティング、台割の作成から簡単な撮影までを手がけ今日に至る。雑誌や書籍などの紙媒体をメインに活動を続ける。詳細 https://ryosuke-kobayashi.com/

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<内容>
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