《神話は続く 2/2》日産 GT-R NISMO


 本誌(5月2日号)ではちょうどスポーツカー特集だ。日本のスポーツカー(もはやスーパーカーの域だけれど)といえばGT-Rでしょ、やっぱりということでここでご紹介。借りだしたのはGT-R NISMO。

 このモデルは2020年型でフロントフェンダーのエアアウトレットやルーフパネルが設けられている。もちろんカーボン製。軽量化はクルマ全体で考えれていてトランクリッドまで1部カーボンファイバーを使用するほど。

下回りではカーボンセラミックブレーキが採用され、フロントには6ポッド、リア4ポッドのキャビパーが与えられる。キャリパーはもちろんブレンボ製。

ホイールもNISMO専用のレイズ製で20インチ。タイヤはフロントが255/40ZR20、リア285/35ZR20を履く。搭載されるエンジンの2017年型からの変更点は見た目にはないが、ターボチャージャーの排気側翼形状を高効率化し、慣性質量が14.5%軽減。軽量、効率化にこだわった。

もちろん、このパワーユニットには組み立てを担当した熟練工のネーミングプレートが装着される。
 インテリアはブラックを基調にレッドのアクセント、シートはお約束のレカロ製だがこれもカーボンバケットタイプを採用。

 眺めてニヤけていては仕事にならないので、コクピットシートに。目の前には340km/hまで刻まれたスピードメーターとGT-Rのエンブレムが入るステアリング。

 これがクルマ好きとしてコーフンせずにおらりょうか! と上がったテンションだったがある言葉を思い出した筆者。それは昔、駆け出しだった頃、最後のスカイラインGT-RとなったR34型の話だ。「これを素人に売っちゃ危ないよ」と某有名レーサーと評論家のセンセーが同じことを言っていたのだ。その真意は誰でもイージーに超絶性能を引き出せるけれど、限界点が高いため、限界に達した時にはそれなりのドライビングスキルが必要になる、ということ。ステアリングを握る時はどうぞ冷静に。走り出すと意外にも乗り心地がいい。ただ、道路のデコボコを通過する際はやはり乗り心地がいいとは言えない。もちろん、この性能を考えると公道はとてもいい方になるけれど、やはり固い。そこでダメ元でセットアップスイッチ(ミッションやサス、車両制御の調整が可能)でサスをコンフォートモードに。

これが意外に功を奏して、ゴザとパイプ椅子くらいの違いになった! GT-R、しかもNISMOにのりつつ軟弱な、と思われても街中は至極快適な方がいいのでござって、拙者の腰痛にもお優しきスイッチでござる。しかし、ホント乗りやすい。乗りやすいのは07年登場のモデルから続く美点でもある。筆者の萎えた記憶だとデビューイヤーのモデルはコーナーでも電子制御ばりばりで自分が曲げている感が弱く、翌年のモデルはそれがちょこっとリアを滑らせることができた記憶がある。当時のモデルも乗り心地は我慢系なレベルだったと思う。また街中でシフト操作をクルマに任せると、約1500rpmでシフトアップし、燃費に貢献する。カシコイ! しかもちょっとした登り坂でも律儀に1500rpm付近でシフトアップするのだ。

そして高速道路。この加速感は麻薬だ。劇毒。一度味わったらやめられない系の。しかも前輪も駆動しているからどんなに踏んでも急にステアリングが軽くなるような怖さが微塵もない。こんなにイージーに600PSを味わえる技術力ってスゴい。それも覚悟無しに。

GT-R NISMOは速い。間違いない。感覚的な速さを楽しむモデルもあるけれど実速が伴っている超絶な速さだ。速さの基準のひとつがサーキットのラップタイム。サンデーレーサーの聖地筑波サーキットではツルシ(いわゆる無改造の市販のまま)で1分を切るという!!! 筑波1分切り、一昔前だとコテコテのチューニングカーで届くかどうかのタイムだ。横に1分6秒台(でもかなり速い)で走るクルマがあったら10周以内に周回遅れに出来る。恐るべし。「もともとメンテナンスフリーのファミリーカーとして作ったスカイライン。それに速さが加わったのがGT-R」とスカイラインの産みの親として著名な故・櫻井眞一郎氏はおっしゃっていたが、現行モデルは景色が溶ける加速を披露してくれる。断言する、コレより速い日産車はGTのレースカーだけだと。

 お値段、国産車としては雲の上の2420万円。現在のエントリーでさえ1082万8400円からで、デビュー当時の777万円から比べると随分とお高くなりあそばした。ライバルの性能がどんどんあがっていく中、勝つためには改良が必要条件。R32の開発を努めた伊藤修令氏の言葉通り「GT-Rというクルマはレースに出るためだけではなく、勝つために設計され作られた」という伝統があるのだろう、GT-Rが負けるわけにはいかんのでしょ、なんせサーキットで勝つために設計されたクルマであるからして。そうするとこの価格も納得どころかリーズナブルに思えてくるのが不思議だ。GT-R NISMOといえば4月14日に2022年モデルが発表されたばかり。

着実に進化しているモデルでもある。

GT-R NISMO

価格:2420万円
全長×全幅×全高:4690×1895×1370(mm)
エンジン:3799ccV型6気筒ターボ
最高出力:600PS(441kW)/6800rpm
最大トルク:652Nm(66.5kg−m)/3600-5600rpm

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  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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