走るサイレント映画!?
1890年代に誕生したモノの筆頭は映画とアウディだ。映画は1927年のトーキー映画(いわゆる今のモノ)が登場するまでは、映画といえば無音の中に製作者の意図や表現を伝えるサイレント映画だった。一方、アウディで無音と言えば、100%電気自動車というところだろうか。
e-tronはアウディの電動車を表す名称で、初見は2009年のコンセプトカー。つまりアウディにおける「e-tron」は電動化の象徴でもあり、その電動GTモデルがe-tron GTになる。同車のデビューは2021年。流麗なシルエットが特長的な4ドアクーペで低く構えたボディはGTというよりもスポーツカーと言われても違和感がない。
2025年にはマイナーチェンジが施された。見た目はほぼほぼ変わらないので、なーんだと思ってしまいそうなのだけれど、中身は異なるほどの進化を遂げた。試乗車はそのマイチェン後の最強モデル、RS e-tron GT パフォーマンスだ。


マイチェンで日本市場はSモデルの「S e-tron GT」とe-tronモデル初のRSを冠した「RS e-tron GT パフォーマンス」の2グレード体制になった。アウディモータースポーツ直系のRSネーミングだけでもスゴそうなのにメーカー側はなぜかRSだけでは飽き足らず、車名末尾に「パフォーマンス」なんていうネーミングもつけてしまった。パフォーマンス、っすよ旦那! 車名からこいつはただモノではないというオーラが出まくりだ。
EVだよね!? と思うような重低音を響かせてきたのが試乗車のRS e-tron GT パフォーマンス(以下GT)だった。EVの接近音なのかモーターの音なのか判別がつきかねたが、地下駐車場からスーパースポーツカー並の低音を響かせていた。わかりやすく申し上げると、怯んでしまったのが第一印象になる。
遠出OKな使い勝手
クルマの流麗なボディラインに目を奪われそうになってしまうが、隠し持った性能や使い勝手の良さはやはりGTだ。傾斜のあるリアゲートを開けると350リッター容量の荷室スペースがあるし、フロントにも収納スペースが確保される。こちらの容量は77リッターで大人4人で1泊2日の荷物なら十分以上だ。


またリアエンドには格納式のスポイラーがある。コレは車速や走行モードに応じて自動で展開するが、乗り手の気分や好みで展開や格納も可能。その操作はセンターディスプレイから。

ドアを開けると瞬時に車高が上がる。その素早さにびっくりする。クルマ自体の車高が低いれどもドアを開けるとクルマ全体がグワッと上がり、乗り込みをサポートしてくれる。その逆も然りで、停止させ降りようとドアを開けると即座に車高が上がる。スゴイ! 至れり尽くせりでホテルではドアサービスというモノがあるけれど、コレは「シャコーサービス」とでもいうのであろうか。その上下幅は上げが77mm、下げが55mmと車高としてはかなり上下する。
そんなシャコーサービスに驚きつつ運転席に。インテリアはブラックを基調とした空間でメタリックパーツもダークな色調にしているほど。ステアリングは上下フラット形状に改められたのも、ブーストモード機能が追加されたのもマイチェン後だ。なおブーストスイッチを押すと、通常時に加え10秒間だけ70kW出力が追加される。


試乗車は「スマートパノラミックルーフ」が装備されていた。コレはスイッチ一つで透明とスモークの切り替えができるハイテクモノ。ルーフは4種類の採光パターンがある。最近流行りのオプションアイテムだ。

ロゴの光るシートに身を預けて走りだすと、ほぼほぼ踏まないでもクルマが進んでいく。

ハイパワー車にありがちなモノだけれど、GTのそれは感覚的には5%くらい踏んでいれば交通の流れをリードできる印象だった。おまけにこの乗り心地の良さにも驚く。どう見てもサスストロークは長く取れなそうな車高なのに懐が深くしなやかな感じで、固いと思うことはなかった。薄い超扁平タイヤなのにまるで扁平率を感じさせない、と言った方が正確かもしれない。GTはエアサスが標準装備。オプションとしてアクティブサスペンションとリアアクスルステアリングも用意される。試乗車はそれが装着されていた。
この乗り心地ははアクティブサスの超絶な仕事ぶりなのだと思う。スポーツモードを選択してもそれは同じで、タウンスピードから高速まで快適な乗り心地だった。「快適」と表現すると馬力やパフォーマンスに対して、と思うかもしれないが、固さはほぼ感じない。それでいてフワフワして落ちつかないか、というわけでもなくキチンと路面のインフォメーションは感じるのもスゴイ。
そして4ドアクーペであるからして、当たり前だけれど後席もキチンとオトナが座れる。ただし乗り込む時はルーフが低いので頭を下げる必要がある。クルマは上がっても頭は下げるのだ。
運転席から振り返ると後席は広いのだけれど、センタートンネルっぽいところも。さては骨格がEV専用でないな、と思うのは時期尚早だ。コレはJ1プラットフォームと呼ばれるクルマの骨格がその理由。一般的なEVなら床一面にバッテリーを敷き詰めるのだけれど、このプラットフォームは後席足元部分をくぼませることで後席の快適性を実現するだけでなく、GTベクトルのクルマながらもスポーツカー並みに低い全高がわずか1.38mの低いルーフラインを実現している。


お楽しみは2.5秒間
さてGTはアウディ史上最強のパフォーマンスを誇るという。GTはポルシェ・タイカンと共通のハードウェアを持ち、システム最高出力は常識、いや良識を超える900PSオーバーの約925PS。マイチェンでリチウムイオンバッテリーの容量が93.4kWhから105kWhに増えたのだが、車重はほんの少し9kgだけ軽くなっている。
スポーツカーの速さを測るモノサシとして0-100km/hというのがある。文字通り停止状態から100km/hに到達するまでの時間なのだけれど、GTのソレは2.5秒。この数値ってランボルギーニ初の電動パワートレインであるPHEVモデルであり、V12エンジンを載せるレヴエルトと同じなのだ! 大人4人乗れるのに。
アウディのRS系でお馴染みとなったステアリングの赤いボタンを押すと、RSパフォーマンスモードなんていうのに突入する。クルマの持つすべてのパワーを解放、なんていうとドラゴンボールの超サイヤ人みたいだが、この解放した時の加速は思わずチビってしまいそうなほど。同乗者がいたら事前アナウンスをしない限り絶叫するはず。その加速は文字通りワープした気になる。確か、さっきまであの看板あたりにいたような……という。ただし加速はモノすごいのだけれど、安定感はもっとすごい。加速すればするほど路面に吸い付くような安定性なのだ。むしろ安定して安心感があるのがかえって怖いのかも。しかしながらこの超絶な性能を公道で楽しめるのはたった2.5秒しかない。うーむ。
これだけの動力性能を持っていてもカタログの航続距離は631kmと実用的。480kmくらいと思っていれば間違いはないし、それでも480kmも走るのだ。アウディ、ポルシェ、VW、レクサスの共同充電ネットワーク、PCAに設置されている150kW規格の充電器にも対応しているのもポイントが高い。EVスポーツカー戦国時代は始まっているのかも?

RS e-tron GT performance
| 価格 | 2469万円 |
| 全長 × 全幅 × 全高 | 4995 × 1965 × 1380(mm) |
| システム最高出力 | 680kW |
| 最大トルク | 1027Nm |
| 一充電航続距離 | 631km |
アウディ
RS e-tron GT
問 アウディジャパン 0120-598-106





















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