なにぃ〜、海でもVTECだとぉ!? 今ホンダのマリンエンジンが熱い!

クルマやバイクだけじゃない

 Honda(以下ホンダ)といえば、F1のホンダ、バイクのホンダと善良なシビック(ホンダだけに)は思うはず。タレント・ルー大柴さんの会話のような始まりになってしまったが、ジツはその製品ラインナップは陸・海・空と多岐。陸ではクルマやバイクだけに脚光が集まってしまうけれども耕運機から除雪機、発電機と奥が深い。中でも乗用芝刈り機は最高速230,446km/hの「世界最速」のギネスレコードを持つことでも知られている。

 空は飛行機。あるところにはあるのねぇと夕飯の買い物時にスーパーでワイドショーネタで盛り上がる主婦のように小型ビジネス飛行機カテゴリーで出荷数世界一を記録している。

 そして、海はマリンエンジンとしてパワーユニットを提供している。ホンダの提供するそれは船外機で、文字通り艇体の外に取り付けるモノ。そのラインナップも幅広く、船舶免許不要の2馬力モデルからスピード最優先的な350馬力まで取り揃えるエンジン、いや馬力の総合デパートとなっているのだ。

水上を走るもの、水を汚すべからず

 ホンダのマリンエンジンヒストリーは1964年からとすでに半世紀を超える。自動車産業に進出した時もそうだけれど、独自の技術を全面に押し出すのがホンダ流。船外機も同様で当時2ストロークエンジンが主流だった時に4ストローク採用の「GB30」で参入した。

 これはブランドの「働く人の為になる商品はその仕事場の環境を汚してはならない」というコンセプトに基づくモノ。2ストロークユニットに対して部品点数による重量増やコスト面で不利であってもこだわり続け、今も一貫して4ストロークユニットを開発し続けている。

市販初のV8

 ホンダのV8エンジンといえば一般に市販されたことはない。強いてあげるならば2011年までアメリカのインディカーシリーズのオープンホイーラーに供給されていたくらい(2012年からはレギュレーションによりV6に変更)。しかしながらホンダのV8という響きだけでクラクラしてしまいそうなのは筆者だけではないはず。それが今回初の市販化。といっても船外機だけど。

 それでも市販初のV8となれば嬉しい限り。しかもVTEC搭載となればいずれクルマにも? とか淡い期待をしてしまいそうだ。ファンにとってホンダの魅力は、やはりエンジン。特に高回転型のパワーユニットは自分の意思にシンクロするようなパワー感は気持ちいいモノ。

 このユニットのスペックは排気量4952cc、最高出力350PSとホンダが市販している中では最大。パワフルな船外機のニーズの高まりを受け、真打登場といったところか。メーカーは「大きな排気量ならではの回転数を抑えた余裕のクルージングをこなし、加速が必要な時は回転数の上昇とともにパワーの高まりと迫力のエンジンサウンドを堪能できる」という。確かに定速巡航時はゲストとの会話を楽しむうえでも静粛性は高い方がいいし、速度が必要な時はきっちりとパワーが出ることが求められる。さらに海上などは、当たり前だけれどマリーナにでも戻らない限りガソリンスタンドはないため、燃費性能も求めらる。そういった面でもVTECに白羽の矢が立ったのだろう。
 
 VTECエンジンは2代目インテグラで採用されたメカニズムで、エンジン回転数が高まった時にバブルの開閉量を切り替える。低回転時と高回転時では燃焼室内の爆発力が異なるので、必要な空気量が違う。そこで低速用のカムシャフト(以下カム)と高速用のカム、2つを組み込んで回転数によってそのカムを切り替えるのがVTECだ。この結果を乱暴にまとめてしまえば、低回転域のトルクと高回転域のパワーを両立し、かつ燃費にもアドバンテージが認められるスグレモノなのだ。

 インテグラは1600ccの自然吸気エンジン(NA)ながら160PSを誇り、NAでは世界初のリッターあたり100PSを超えた金字塔でもある。

 そして今回はマリンエンジンにも搭載。またこのパワーユニットはレギュラーガソリンでOKという。「手に入りやすいレギュラーガソリンできっちりと350馬力出せることが重要で、燃費にも優れているので航続距離も長くなる」とメーカーの弁。またオイルフィルターは交換時にオイルがこばれて海を汚さないようなレイアウトにしているのも特長。

残念ながらマリン用

 このV8はマリン用という。マニアックな視点ならば、2代目NSX(NC1型)の高強度クランク材を使っているのも事実。しかしながら、このマリンエンジンをそのままクルマに、というわけにはいかない。このV8ユニットのバンク角は60度と狭いからだ。

 クルマのエンジンだと、バンク角は広角傾向。その代わりエンジン単体が幅広くなってしまうけれど、低重心を実現できる。特にスポーツ色にこだわるホンダのクルマではエンジン幅はともかく低重心はマスト項目だろう。

 マリンエンジンはエンジン自体を文字通り縦置き、いや立てて使う。特に船外機は2基掛け以上が多くなるので左右幅は極力小さい方がいい、となるのだ。

 そして今回の船外機のカラーリングはシルバーとホワイトの2色が用意されているのだが、白は「グランプリホワイト」になる。いかにもホンダらしい逸品。

コレなら買えるV8がある!!

 なんだよぉ、結局は船を買わなくてはダメぢゃんと嘆く皆様。1/20スケールのプラモデルもある! それなら筆者でも買える! しかもみのりチャンもついてくるキットがあるのだ。

 みのりチャンはホンダが製作したコミック、「みのりの大地」に登場する農業ガール。ゲームキャラクターデザインやイメージイラストで知られる山下しゅんや氏が手がけたオリジナルキャラクターになる。そのりチャンがついにマリン分野にも進出! しかも今回のみのりチャンは水着着用でライフジャケットの開・閉と帽子のありなしを選択して組み立て可能なのだ。

 しかもメーンとなるBF350カバー内のV8エンジンは注目必須。マックスファクトリーらしく実機を十二分に取材し、精緻に再現しているのだ。この再現っぷりは見本品を持ち込んだ時にホンダ側から「こんな細く作るの!?」と言わしめたほど。唯一の修正はエンジンを運ぶ台座の角度だけだったというモノだ。そんなモデルの誕生秘話はホンダのサイトにもある。

プラモデルで作りたかった「世界観」

今度の休みはプラモデル作りもありかも!?

BF350

価格390万5000円~
エンジン4952ccV型8気筒
連続最大出力350PS/6000rpm

PLAMAX MF-88 minimum factory
みのり with Honda 船外機 BF350

価格4620円

ホンダマリン
BF350
みのりの大地
マックスファクトリー
グッドスマイルカンパニー

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

関連記事一覧