菊池雅之のミリタリーレポート
嫌われっ子のオスプレイが本州で訓練!? その目的と狙いとは?
日米共同訓練「フォレストライト21」の裏側を見る

【菊池雅之のミリタリーレポート】
VMM-265の司令機。尾翼にスペシャルマーキングが施されている。

 アメリカで開発されたティルトローター機であるMV-22オスプレイ。日本では非常に知名度が高い機体です。ここまで認知されている理由は、マスコミで取り上げられることが多いからです。ネガティブな内容がほとんどですが……。
 日本には、米軍が駐留しています。東アジアから東南アジア、果ては中東まで展開する際の拠点となっており、空軍、海軍、陸軍、海兵隊が、横田基地を中心に、三沢(青森県)や横須賀(神奈川県)、岩国(山口県)、嘉手納(沖縄県)など、日本列島各地に拠点を置いています。
 特筆すべきは沖縄県です。米軍基地は沖縄本島に集中しています。かつて、米国であった沖縄は、東西冷戦時代は、アジアの砦となっていました。朝鮮戦争、ベトナム戦争と、沖縄はまさに足掛かりとして使われていました。日本へと返還されてからも、アメリカにとって戦略上重要な場所であるのは変わりませんでした。こうした背景から、今日に通じる反米基地運動があるのです。
 米海兵隊が新しく配備したMV-22Bは、その反米基地運動の象徴となりました。巷で言われるように、決して事故率は高くありません。これまでの航空機と全く異なるシステム、運用方法、何よりもその見た目から、“海のものとも山のものともつかない”存在に、恐怖心を抱く人の気持ちは分からなくもないです。

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米海兵隊が陸自第12旅団のCH-47チヌークへと乗り込んで行く。

 昨年、そんなMV-22Bオスプレイが、訓練のため、本州へとやってきました。本州での訓練は珍しいものではなく、何度も行われています。
 今回は、2020年12月7日から18日まで、相馬ヶ原駐屯地及び関山演習場等で実施された日米共同実動訓練「フォレストライト21」に参加しました。なお、訓練のコードネームに“21”と記しているのは、米側の会計年度によるためです。日本では毎年4月から新年度が始まりますが、アメリカでは、毎10月1日から新年度会計となるため、2020年12月に実施した訓練であろうとも次年度、要するに2021年度扱いとなってしまいます。少々わかりにくいですね…。

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米海兵隊MV-22Bオスプレイによるヘリボーン。降着すると、機内から第30普通科連隊の隊員たちが飛び出してきた。

 さて、この「フォレストライト」は、毎年、陸上自衛隊と米海兵隊の間で行われている二か国間訓練です。基本的に年に2回実施します。
 この時は、日本側から第12旅団(相馬ヶ原駐屯地:群馬県)・第30普通科連隊(新発田駐屯地:新潟県)、米側から第3海兵師団第4連隊(キャンプ・シュワブ:沖縄県)がそれぞれ参加しました。テーマは毎回ことなり、積雪寒冷地での機動をメインにしたもの、実弾射撃を含む野戦をメインにしたもの、野戦や市街地戦闘を盛り込んだ複合的なものなど、さまざまです。
 ここで取り上げる「フォレストライト21」のテーマは“空中機動”となりました。それは、陸自側の特徴を生かしたからです。
第12旅団は、2001年3月27日に第12師団から改編されました。規模だけを見ると、縮小されてしまいましたが、他の師団・旅団にはない、空中機動力強化型となりました。別名「空中機動旅団」とも呼ばれています。
 この空中機動力を高める為、UH-60ブラックホークやCH-47チヌークなど中・大型ヘリを配備しました。通常師団・旅団には、飛行隊が1個編成されているのですが、第12旅団については、第1飛行隊(UH-60JA)と第2飛行隊(CH-47J/JA)の2個飛行隊を内包する第12ヘリコプター隊を編成しています。
 そんなヘリ空輸専門部隊と訓練を行うため、米海兵隊は、VMM-265:第265海兵飛行隊(普天間基地)のMV-22Bオスプレイを派遣してきました。この部隊のニックネームは、「ドラゴンズ」であることから、機体に漢字で“竜”と書かれているのが特徴です。今回は尾翼にスペシャルマーキングを施した同部隊の司令機が投入されました。米側の気合を感じます。
 そして、「第12旅団と米海兵隊が空中機動作戦により、日米共同で島嶼部に対する攻撃への対応」を想定した訓練を行うとプレスリリースに明記されました。
 日米共同作戦下での戦術技量を向上させるため、陸自のヘリに米海兵隊員が乗り、米海兵隊のMV-22Bオスプレイに陸自隊員が乗って、訓練を実施しました。ヘリボーン(ヘリコプターなどの空中機動力を生かして部隊を展開させること)作戦における相互運用性を高めることが目的です。
 陸自もMV-22Bオスプレイを配備しておりますが、まだ数は揃っていません。それまでの間、米海兵隊のMV-22Bオスプレイにて、運用方法を学ぶのは非常に有意義です。

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米第3海兵師団第4連隊の隊員。写真中央の隊員がかまえているのはM27。新しい分隊支援火器だ。

 さらに今回の訓練には、もう一つ目的がありました。それは、2016年9月の日米合同委員会で合意された「MV-22の訓練移転にかかる事業」の一環としての側面です。
 先述したように、沖縄に米軍基地が集中しており、騒音問題など、沖縄県民の皆様が多大なる負担を強いられているのは事実です。そこで、MV-22Bオスプレイの訓練を九州や本州、北海道でも分散して実施していく、というのがこの事業の骨子です。
 その一環として、今回、米海兵隊は、群馬県及び新潟県で訓練を行う「フォレストライト」に、MV-22Bオスプレイを派遣しました。成果は十二分にありました。

【菊池雅之のミリタリーレポート】
今回の訓練における現場指揮官となった、遠藤雄一郎1等陸佐とネイル・ベリー中佐。

 なお、「フォレストライト21」については、「コンバットマガジン3月号」にてご紹介しております。是非こちらもお手に取ってご覧ください。

そして私のYouTubeちゃんねるである「KIKU CHANNEL」でも、訓練をレポートしています。併せてこちらもよろしくお願いします。
https://youtu.be/yccWf7M0PIw

菊池雅之(masayuki kikuchi)
  • 軍事フォトジャーナリスト.。1975年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。講談社フライデー編集部専属カメラマンを経て軍事フォトジャーナリストとなる。主として自衛隊をはじめとして各国軍を取材。また最近では危機管理をテーマに警察や海保、消防等の取材もこなす。夕刊フジ「最新国防ファイル」(産経新聞社)、EX大衆「自衛隊最前線レポート」(双葉社)等、新聞や雑誌に連載を持つなど数多くの記事を執筆。そのほか、「ビートたけしのTVタックル」「週刊安全保障」「国際政治ch」等、TV・ラジオ・ネット放送・イベントへの出演も行う。アニメ「東京マグニチュード8.0」「エヴァンゲリオン」等監修も行う。写真集「陸自男子」(コスミック出版)、著書「なぜ自衛隊だけが人を救えるのか」(潮書房光人新社)「試練と感動の遠洋航海」(かや書房) 「がんばれ女性自衛官」 (イカロス出版)、カレンダー「真・陸海空自衛隊」、他出版物も多数手がける。YouTubeにて「KIKU CHANNEL」を開設し、軍事情報を発信中
  • https://twitter.com/kimatype75