世界的メガヒット中『ゴジラ-1.0』のモノクロ版『ゴジラ-1.0/C』ついに公開! メインキャスト対談 神木隆之介(敷島浩一役)×浜辺美波(大石典子役)<特別版>:特撮ばんざい!第35回


全世界興収100億突破! ワールドワイドにメガヒット中の映画『ゴジラ-1.0』。最新のVFXで描かれるゴジラの脅威もさることながら、戦後すぐの日本を舞台にしたリアルな人間ドラマも作品の核となる。作品のモノクロ版『ゴジラ-1.0/C(ゴジラマイナスワンマイナスカラー)』上映を機に、『モノ・マガジン』ゴジラ特集号で、大反響を呼んだ対談を『モノ・マガジンweb』でも公開! 主演コンビ、神木隆之介さんと浜辺美波さんに、撮影時のエピソードや裏話など「ネタバレ解禁」で聞いた! 未公開コメントと画像を追加した特別版!

文/タカハシヒョウリ 写真/熊谷義久

本誌最大のゴジラ大特集‼
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『ゴジラ-1.0』あらすじ

特攻隊帰りの敷島浩一(演・神木隆之介)は、孤児の明子を抱いた大石典子(演・浜辺美波)と出会い、奇妙な共同生活を始める。次第に3 人の間に家族の絆が生まれていくが、戦争の傷跡から立ちあがろうとする日本にさらなる脅威「ゴジラ」が現れる。

注:作品の重要部分のネタバレを含みます!

神木「すごく繊細な表現をしなきゃいけないプレッシャーはありました」

浜辺「あんなシーンを撮っていただけるなんて、まさに夢のようでした」

浩一は典子に、戦争が終わっても消えない過去のトラウマを打ち明ける。

重いシーンの連続を救った山崎監督の一言

――敷島と典子の関係性を、おふたりはどのようにイメージして演じましたか?

神木 最初は敷島にとっての典子は異物のような存在でしたけど、それがいつしか敷島にとっての日常、ひとつの居場所になったんだろうなと思います。だから僕は夫婦だと思って典子に接していました。でも「一緒にいてほしい」っていう言葉が言えない人間というか、それこそ幸せになっちゃいけないと自分で思ってるような人間なので、どうしてもそれが言えない。そのもどかしさと、だけど心を許してるっていう雰囲気を作りたいなと思って演じました。

浜辺 最初は命からがら逃げてきて、明子の命のこともあるので図々しく家に押し入ってしまいますが、そんな図々しさをずっと持ち合わせてるような女性ではなくて。やっぱりどこかで居心地の悪い気持ちがありますし、この関係性にもいつか答えを出さなくてはいけないという、本当に現代に近いような感情もあるんだろうなと思います。でもずっと一緒にいる時間が長くなってくることによって、離れるのもすごく寂しくなっていくという部分をちゃんと描いていけたらいいなと思って演じました。

――ふたりの間で距離感を相談したりといったことは?

神木 細かいシーンの動きは相談してましたけど、大きな流れでこういう風にしようって話し合うことはなかったですね。でも以前もご一緒させてもらっていて信頼はすごくあったので、浜辺さんの演技の出方だったりを見ながら、本番で感じたように動いてみようと思ってましたね。

――敷島が過去を告白する夜のシーンは印象的でした。

浜辺 あのシーンは、大変でしたね。

神木 大変でした。なんかもう、全部が重いんですよね。僕が過去を明かすっていうのも、普通の作品のキャラクターの過去とは全然違うんですね。史実であることですし、戦争からまだ 1 0 0 年にも満たなくて、今も存命で実際に傷を負ってる方々もいらっしゃいますし。すごく繊細な表現をしなきゃいけないなと思ったので、プレッシャーはありました。

浜辺 (敷島を)こっち側の世界に引き戻さなきゃいけないという、本当に肝になるようなふたりのシーンだったので、前日から眠りが浅かったです。技術を使うというよりは、全ての力を使ってこの人の魂をこっちに引き戻さなきゃという気持ちで挑みました。

全編に渡って様々な困難に直面する敷島には「可哀想」との声も続出。演じる神木さんは「やっぱりエネルギーを使った」と語る。

神木 撮影の途中から敷島と同じように自分のことを追い詰めたら良いのかなと思い始めて。そうするとやっぱり心身ともに疲れてくるんですよね。そうなるともう撮影どころじゃなくなるので、あくまでも芝居は芝居で本番にエンジンをフルでかけて、あとはいつもの自分で現場を楽しめればいいんだなと思うようになりました。そのきっかけになったのは、監督が重いシーンでもワクワクしながら演技指導をしてくださったことです。聞いたら「だって僕はゴジラの映画の芝居をつけてるんだよ。そんな嬉しいことないよ!」って。そういう感じにすごく救われてましたね。

ゴジラに襲われ、ゴジラと戦い、明子もゴジラ⁉

――典子がゴジラに持ち上げられた電車の中にぶらさがる銀座シーンは衝撃でした。

浜辺 台本で読んだ時には「本当にやるのかな? 私できるかな?」と思ったのですが、揺らす電車のセットも全部作ってくださって。本当に命を守るために火事場の馬鹿力を出すような感覚で、どうにかしがみついてるという風に見えればいいなと思いながら撮影しました。撮影時はワイヤーも着けていたのですが、それだと本当に腕に体重がかかってる感じが出なかったので、結局、自重は全部自力で支えました。アフレコの時も、実際に鉄棒にぶら下りながら録ったんです。(山崎監督曰く「本気で力を入れている状態じゃないと出ない声があるんです」)。映像を見た時には……思わずちょっと笑ってしまいました(笑)。本当に出来ているのか自信がなかったので、しっかり使ってもらえていた事に安心しました。あんなシーンを撮っていただけるなんて、まさに夢のようだったので嬉しかったです。

銀座に出現したゴジラに遭遇する典子。持ち上げられ、水に落とされ、爆風に飲まれ、史上最も「大変な目」にあうヒロインかもしれない。
迫力満点の海上シーンも本作の見どころ。ゴジラに追われるスリルと恐怖感が話題を呼んだ。

――敷島には、海上や戦闘機でゴジラと対峙するシーンがありますね。

神木 まず、水の上はVFXではありません! VFXが凄すぎて一部では海までVFXなんじゃないかって言われてますけど、実際に海上に行きました。あの船の機関銃も、もちろん弾は出ないですけど、スイッチを押すとガッガッガッって本当に動くんですよ。撮影も命がけだったので、大自然とも戦いながら、ゴジラとも戦うという環境だったんです。実際に映像を見た時は、ゴジラがそこにいて、本当に死を直感させると感じましたね。

第二次世界大戦末期に大日本帝国海軍が試作した局地戦闘機・震電。作品の中では対ゴジラ戦で浩一がパイロットとなる。

神木 震電はとても大きくて、僕は戦闘機について詳しくはないですけど、やっぱり盛り上がりましたね。「え、実際乗れるんですか? 全部作ってあるんですか?」みたいな。操縦席の中のボタンやスイッチのひとつひとつまで全部動くようになってますし、見えないところまでもこだわり抜いた美術なので、ぜひそこも見てほしいです。(操縦のシーンは)元戦闘機乗りの先生がいらっしゃって、その方に重力はどっちに働いて、どういう体勢になるのかっていうのを教えてもらいながらやっていました。

明子との共演シーン。神木さん「大人たちに囲まれて怖かったと思うんですけど、ある程度ストレスなくやってくれたと思います」。

――おふたりと明子ちゃんとの交流シーンも、すごく自然な感じがしました。

神木 明子とのシーンは、大変でしたね。明子が本当のゴジラかもしれないです(笑)。でも良いんすよ。だってそれが子どもですからね。子どもに思うようにお芝居をさせるなんて不可能ですから。 そのイレギュラー感っていうのも、すごく良く出た部分もあるのかなと思っています。積み重ねの時間である程度懐いてくれたかなとも思いますし。それこそ浜辺さんも、休みの日に明子と遊びにスタジオに来たりしてましたよね。

浜辺 ポメラニアンを飼っているので、スタジオに連れて行って、明子と仲良くなれないかなって。

神木 積極的にコミュニケーションを取っていたので、たまに見るお兄ちゃんくらいには思ってもらえたかな(笑)。

浜辺 知ってるお姉ちゃんくらいには(笑)。

――おふたりの印象に残っている撮影時のエピソードはありますか?

神木 敷島と典子の最初の出会いのところで、浜辺さんが歯に黄色いのを塗るのを嫌がって。そういう指示だから、仕方ないじゃないですか(笑)。日常でやってるわけじゃないですし、歯が黄色になっていても誰も疑問に思わないわけですよ。

浜辺 汚れた感じを出したいと言われて、歯に黄色いのを塗られたのが、初めての経験でびっくりしてしまって、最初はすごく嫌でした(笑)。初めて塗るので、何なのかもわからなくて。小さい頃に科学の実験で使った黄色くて、色が紫に変化するやつ(ヨウ素)の匂いがしました。

神木 なんか写真撮る時も嫌がってましたよね。

浜辺 それは、だって庵野(秀明)さんが来てたんです!

神木 別に見られたところで、こいつ歯が黄色いなとは思わないじゃないですか(笑)。そういう役なんだなって思いますよ。

浜辺 その場では、なんかすごく恥ずかしくなってしまって。

ラストシーンに隠された撮影秘話

――おふたりが病室で再会するラストシーンは、どこか神々しい雰囲気もありました。

神木 撮影も後半でふたりの感じもわかっていたので、ラストシーンの演出自体は詳しくこうしてくださいっていうのはなかったですね。敷島に手をやって、母親のように包んでいく感じっていうのは言われてた気がしますね。

浜辺 たしかにマリアのような感じで、包み込むようにというディレクションがあったような気がします。やっと会えたっていうのもそうですが、「戦争は終わりましたか?」という一言がすごく重たい言葉だったので、いかにしてこの言葉を選んだのかというのを考えたいなと思っていました。ただあの日の思い出としては……やっぱりアンパンマン。

神木 そうですねぇ。ベッドの窓側の方から撮る時に、明子が典子の方を見てないといけないんですけど、なかなか目線がもらえないわけです。
そこで助監督さんが申し訳なさそうに、明子が好きなアンパンマンが踊ってる動画を見せて……。

浜辺 ちょっとご機嫌が良くない日ですぐに泣いてしまうっていうのもあって、アンパンマンのパワーを借りました(笑)。その日が明子ちゃんの最後の撮影の日だったんですが、撮影が終わった後に映画内で私たちにしていた呼び方が掘ってある切り株のキーホルダーをくれて。それが本当に嬉しかったんです。だから、私は家に置いてある鍵に付けてます。

神木 あとはあれ……首のこと。

浜辺 首? 誰の?

神木 あなたのです!

浜辺 あ、私の。ラストシーンで典子の首のあたりが動いていたと思うのですが、あれは実は脚本には無いんです。監督が最終日に加えて。

神木 実は、2 パターン撮ったんですよ。

浜辺 急にCG用のグリーンの点線を首につけられて。どっちの最後にするんだろうって言っていたら、首のあたりで動いていましたね。次のシリーズがあったら、私が人間を踏み潰してるかもしれません(笑)。

ゴジラが電車を咥え上げる初代『ゴジラ』のオマージュシーンについて、浜辺さん「監督のロマンとしてやりたかったことだとお聞きしました」

【初公開コメント】

リラックスした笑顔の神木さん、浜辺さんと、マスクをして演出中の山崎貴監督。和やかな撮影現場。

――山崎組ならではの撮影現場の雰囲気みたいなものは感じましたか?

神木 僕はまだ(山崎組は)2作目なので『ゴジラ -1.0』の撮影を通してだけですけど、みんな笑っていて優しい現場だなっていうのはすごく感じましたね。監督が場を和ませてくれるので、それが今回のゴジラの撮影だとめちゃくちゃ助けになりました。

浜辺 うん。大御所の監督さんなのに、すごく穏やかで優しい方です。(初期から)ほぼチームが変わってないらしくて。それもあって、本当に連携が整っていてスムーズです。出来上がったチームに混ぜてもらっているような感覚があります。

浩一のシーンの撮影が終わりクランクアップ記念の花束を手にした神木隆之介さんと、労う山崎監督。

――先日の舞台挨拶では山崎監督が「僕はタカシと呼ばれているらしいです」とおっしゃっていましたが。

神木 いや、もちろん普段からタカシとは呼ばないですよ(笑)。現場では「監督、ちょっと聞きたいんですけど……」みたいな感じです。でも取材とかの場面では「タカシ~」ってふざける時もありますね(笑)。

浜辺 むしろ嬉しそうな顔してくれます(笑)。それくらい本当に穏やかな方なんですね。

神木 「なんだよそれ~、やめろよ~」って(笑)。それもそれで言いやすくなっちゃう。

(終)

神木隆之介(かみき・りゅうのすけ)
1993年生まれ、埼玉県出身。2005年『妖怪大戦争』の主演で日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。以降、様々な作品で活躍。劇場アニメ『サマーウォーズ』『君の名は。』では声優としても主演を務める。2023年のNHK連続ドラマ小説『らんまん』では主人公・槙野万太郎を演じ、浜辺美波さんと夫婦役として共演。

浜辺美波(はまべ・みなみ)
2000年生まれ、石川県出身。2011年、第7 回「東宝シンデレラ」オーディションでニュージェネレーション賞を受賞、同年映画デビュー。以降、数多くの映画、TVドラマに出演。2017年『君の膵臓をたべたい』の主演では複数の新人賞を受賞。2019年『屍人荘の殺人』で神木隆之介さんと初共演。

2023年11月3日、TOHOシネマズ日比谷で行われた『ゴジラ-1.0』初日舞台挨拶より。

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<ライタープロフィール>
タカハシヒョウリ 
ミュージシャン・作家。ロックバンド「オワリカラ」、特撮リスペクトバンド「科楽特奏隊」のボーカル・ギター、作詞作曲家。その様々なカルチャーへの偏愛と造形から執筆、番組・イベント出演など多数。近年は、円谷プロダクション公式メディア連載やイベント出演、ポケモンカードゲームCM音楽なども担当。

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