【モノ・マガジンTV】
靴の工場見学
第5回:昔ながらの鞣し工程を守る栃木レザーを訪ねる


こんにちは。「YouTube・モノマガジンTV 工場見学ツアー」をwebで解説や裏話などをする、読んでも楽しい「レザーソムリエ西牧のじっくり動画解説と裏話」です。今回は昔ながらの鞣し工程を守る栃木レザーを訪ねる【大人の工場見学】【靴の工場見学 #05】を解説していきたいと思います。

 栃木レザーは昭和12年創業で85年目の超老舗タンナーです。革好きなら誰もが一度は手にしたことのある素材ではないでしょうか。僕は何度かお邪魔したこともあるのですが、いつきてもドキドキ、ワクワクする革マニア聖地の一つだと勝手に考えています。今回はそんな栃木レザーを大解剖!! しちゃいますよ。

 まずは圧倒的なボリュームのヌメ革。皮を革にしたのに、まだこんなに分厚いなんて、皆さん知っていました? この後に厚みを調整したり、加工するのですが、革本来の風味がなんとも言えないですね。

そしてこれが皮そのものの「原皮」となります。あまり見ることが少ないので、とても貴重な体験をさせていただきました。

 原皮は輸入されてきます。腐らないように塩漬けされてくるのですが、この時の皮は北米のカナダあたりの皮ということ。この後、塩抜きをして、鞣す前の準備に入ります。

 タイコというめちゃ大きなドラムで革を洗います。洗濯するイメージですね。一日以上洗い続けるとのことで、しっかりと汚れなども落としていきます。このボリュームは結構圧巻で、ずっーと見ていられる工程です。

 次は脱毛という工程です。石灰が重要で毛穴を開き、そこに硫化系の溶かすものが入ることで、毛を溶かします。何度もピットに入れては出してを繰り返すこの方法は栃木レザーならではのものだそうで、手間がかかるが綺麗に処理ができるので、手を抜けない部分なのです。

 そしていよいよ皮をなめす工程に突入!! 栃木レザーといえばピット鞣しの代名詞がつくほど超有名。ミモザの木からでる、タンニンで鞣していきます。

 まずはタンニンが薄い槽から漬け込んでいきます。薄いピット→濃いピットに漬け込んでいくことで、革の繊維を締めてきます。短くても一ヶ月以上は漬け込むことで、あの風合いの革が出来上がります。

 鞣作業が終わると、今度は抜け切った油などを再度革に浸透させます。柔軟剤的な意味合いもあるそうで、このオイルは各タンナーさんのオリジナルレシピだとか。遅澤社長に聞いたところ、「革の匂いはこのオイルの匂いなんです。」とのこと。なるほど!! 僕は匂いである程度どこの革かわかるという得意技があるのですが(笑)オイルの匂いを利き分けてたということなんですね。

 そして乾燥させます。この作業、超重労働です・・・。mono偉い人鈴木さんが体験してますが、マジでへなちょこ(笑)。この革、小さい方だとか。一つ一つに職人の技が光りますね。

 そして出来上がった革が各メーカーさんに届き、製品になっていきます。栃木レザーさんはなんと直営店があるタンナーさんです。その名も栃木レザーアンテナショップ。栃木レザーの革を使ったメーカーさんの商品を販売しているのですが、なんと!! 栃木レザーオリジナル商品が開発されたのです!!

 その名も「nogake」。nogakeとは広大な野山を駆け巡る、誰もがワクワクするような作品を作りたいと思い名付けたそうです。そして使用しているレザーはnogakeブランド開発にあたり「nogake smooth」と「nogake emboss」という2つのレザーを作り出したとこと。

 今回イチオシのヘルメットバッグは遅澤社長、肝入りの力作。「私が若い時に使っていたヘルメットバッグを自分たちがつくり上げた革で製品化したかったんです。」と同世代の僕にもグサッと刺さるアイテムでした。そして意外と価格が納得のいく感じで、今すぐ欲しくなります。
 ということで、今回は久しぶりにレザーソムリエらしいことができたのではないかと思います(笑)。実は仕上げなど今回は見ることができなかったところもあり、第二回目を期待したいところです!! 遅澤社長、ありがとうございました。
このWEBマガジンでは、工場見学ツアーなど動画配信したものをレザーソムリエ西牧が記事にしてお送りしています。裏話など動画では配信できない情報も提供していきたいと思います。ではまた読んでくださいね!!

西牧正晴(masaharu nishimaki)

1977年生まれのバリバリの氷河期世代。19歳から靴屋のバイトを初めて、そのまま靴、革にどっぷりハマる。靴メーカーやベルトメーカー、靴の組合など、とにかく革がある場所で革の知識だけでなく、売り方やマーケティングを学ぶ。レザークラフトの作家としても活動中。

現在はフリーランスで革、靴、バッグのライター・フォトグラファー、皮革アドバイザーなどをして、日々革について精進中。

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