大統領公用車にもなる
DS9 E-TENSEに乗ってみた!


 なんとなくフランスのクルマがブームになりつつある。別にその昔、プジョー405Mi16でアクセルワイヤーが切れたり、イグニッションコルの不調で強制的に修理工場に入庫した記憶が色濃く残っているからではなく、街中で見る機会が増えた気がする。事実、フラ車のインポーターも日本で過去最高の販売台数をウンヌンというからあながち間違いではない。でも個性で勝負したいけど、プジョーやシトロエン、ルノーだと上記のように意外に見る機会も多いし、と思うならDSが大本命だ。特に発売間もないDS9こそベスト・オブ・コスパで個性にエンジンをつけて走っているようなモノなのだ。

 DS9。シトロエンの高級ブランドとして独立したDSオートモビルのフラッグシップモデルである。このクルマはフランス大統領の公用車としても使われるなど豪華さと実力を兼ね備えたセダンなのだ。そこで筆者が大統領気分を味わってみようじゃないか、と乗り出したのはDS9オペラのEテンス。オペラはDS9の上級グレードで、Eテンスはプラグインハイブリッド車である。

エクステリアデザインは1930年代に栄華を誇ったカロセリと呼ばれるコーチビルダーへのオマージュといい、実用性を度外視し、純粋に美と創造性を競ったファッション業界におけるオートクチュール同様の一点モノの雰囲気を演出という。筆者のようなボンクラはよくわからないけれど、明らかに分かる箇所が一つだけある。それは今までのDSモデルにはなかったボンネットにある、セイバーと呼ばれる

サーベル状のアクセント。

しかもこのボンネットのセイバーはよくよく見るとパリの石畳をモチーフとしたクル・ド・パリ模様になっている。なんて手の込んだ演出! 加えてボディをよく見るとヘッドライト周りやテールランプ下もクロームの装飾が使われている。さすが大統領の公用車にも使われるだけある。気品の中にも個性があるフレンチラグジュアリーというヤツか。キーを持って近づくと格納されていたドアハンドルが静かにせり出してくる。

この辺りの所作も高級車として、メルセデスやBMW、アウディといった、いわゆるジャーマン3にも引けを取らないモノだろう。それを使ってのドアの開閉なども同様で、いつからフラ車ってドアから剛性を感じられるようになったの!? と驚く方もいらっしゃるはず。

 インテリアはフレンチ流の豪華さに溢れている。

試乗車、オペラに待っていたのは赤というか、そう、ルビーのような色調のムラ染めレザーをふんだんに使った空間。アールルビィと呼ばれるムラ染めのレザーが貼り込まれたインテリアだ。さらにルーフは贅沢にも全面アルカンタラを使用。

 そして随所にインパネのひし形を多用したデザインはDS流。もちろんシフト周りも同様だ。(編集部注:過去のDSの記事はコチラhttps://www.monomagazine.com/30520/

また後席はフラ車とは思えないほど至れり尽くせり感がある(失礼)。

例えば後席シート左右にはシートヒーターだけでなくベンチレーション機能もあるし、頭を寄りかからせても受け止めてくれるラウンジヘッドレストや大型のアームレストにはマッサージ機能(しかも左右!)のスイッチはあるし、空調だって後席で調整可能。

2895mmのホイールベースがもたらす後席の足元空間は広大。どのくらい広いかというと、助手席側後ろで、助手席を後席のためにソンタクせず、かつ助手席も狭くない状態で

身長175cmの筆者が座ってもかなり広かった。まさに気分は大統領。ん? 筆者が言うと余興の掛け声みたいだって?

 えー、無理やりアラを探すなれば、後席のブラインドがないことくらいだが、そこは「太陽がいっぱい」(編集部注:1960年に公開されたアラン・ドロン主演の映画のタイトルです)の国だからかもしれない。

 エンジンスターターのスイッチ上部、すなわちセンターコンソールの頂きに鎮座するのは、B.R.Mの時計。B.R.Mはピュア・レーシングスピリットをテーマにするクオリティの高いハンドメードのウォッチメーカー。腕時計などでは機械式のモノに熱狂するファンから高い支持を得ているので、読者の皆様はご存知の方も多いと思う。これがエンジンスターター連動で展開されるのだ。

そのギミックもさることながら夜間は夜間でなかなかに優雅な雰囲気。

もちろん、この時計の周りにも時計の歴史を200年早めたと言われる職人、ルイ・ブレゲがパリの石畳を意匠化した様式のクル・ド・パリ(ギヨシェ彫り)が施される。

 さて走り出すとまず静粛性能の高さに感動する。試乗車がプラグインハイブリッド車でバッテリーのある間はよほどの踏み込みでなければエンジンが始動しないことを考えても、だ。これはフラッグシップモデルらしく、フロントガラスでDS7クロスバック比+10%の合わせガラス採用。もちろん、サイド、リアにもソレを使うなど完璧な対策がなされた恩恵。そしてシトロエン、いや乗り心地マニアのDSによる至高の乗り心地は健在。特にコンフォートモードにすると、フロントに設置されたマルチファンクションカメラが車両前方の路面状況をスキャンしてデコボコを検知、車両の挙動を予測してダンパーの減衰力を調整するアクティブスキャンサスペンションが作動して街中から高速まで快適なのだ。ただし、120km/h付近の柔らかい感じは好みが別れると思うが、高速道路を90km/h付近で巡行していると疲れ知らずなクルマであった。あー、賢明な読者の皆さんは、似たようなシステムは日産のF31型(2代目)レパードにあった、とか言わないように。

 さて。DS9に用意されたパワーユニットは225PSを誇る1.6リッター直4ターボと、プラグインハイブリッドモデル向け200PSの1.6リッター直4ターボの2種でミッションはいずれも8AT。試乗車は後者のモノ。

フロントに搭載されるモーターは110PSでシステム出力合計は250PS/360Nm。駆動方式はFF。バッテリー残量が満充電時は約65kmのEV走行が可能だが、日本の酷暑や渋滞ではもう少し落ちると思う。もちろんCEV補助金の対象車でもある。ハイブリッドシステムは日本のアイシンと共同開発したモノだ。

 走るとこの図体で1.6リッターか、と思いがちだが、遅さを感じることや右車線へ突撃する時は絶えずキックダウン、てなことはなかった。ちなみに、撮影場所に移動するに当たって高速へ乗って少し走ったあたりでバッテリー残量が0kmになってもパワー不足は感じなかった。0kmでもハイブリッドカーとして発進時などはモーターがアシストしてくれることもお伝えしたい。問題は充電かもしれない。

DS9は普通充電対応で3kWで約5時間6kWで約2.5時間(いずれも200V)の充電時間がかかる。筆者の地元で普通充電対応なのは某国産ディーラーだったがいずれも頑なに当メーカー以外は普通充電はダメだもんね! ガソリンで動くんだから帰ってから! な雰囲気だった。もちろん完全EV車はこの限りでないと思うが。ガソリンだけでもいいもんね、と開き直って走っても意外にも燃費は良かった。またEテンス(プラグインハイブリッドモデル)の燃料タンク容量はなんとたったの43Lだから、満タンならば、ガソリン価格が高くてもライバル達の80L容量に比べれば今のところ1万円でお釣りが来るのも嬉しい。

 ステージはお楽しみのクネッタ道でスポーツモードはオン。きつい低速コーナーを2速でクリアして次の400mくらい先の同じようなコーナーに入るのに、筆者のアタマではそのまま2速で、と思っていたのだが、軽くアクセルを抜くと、1速飛ばして4速に入ってしまい、次のコーナーでまた2速にしなくてはならなかった。もしサーキットトライアルのようなお楽しみをお考えならばこの点は注意したい。ちらっと見た説明書には記載がなかった。しかし意外にもステアリングがクイックでソフトな足回りの車体の揺れをうまく利用しながらコーナーをクリアするのがフランス車の楽しみでもあるのだけれど。また走行中、パドルシフトでギアを落として車間を調整、といった芸当もエンジンがかかっていればできるが、アクセルを抜くとエンジンも切れる場合が多いのでブレーキを踏むか、シフトレバーで「B」モードを選択するよう心掛ける必要があった。

 慣れが必要だと感じたのは、前席のシートヒーターやベンチレーションの操作。シフト前方のフタを開けるとダイヤルがあるのだが、運転中は目視不可(筆者にはそう感じた)だし、暗くてわかりづらい。

ただ、これだけ快適で先進装備充実なDS9で意外なところが使いにくくて、やっぱりフランスのクルマはこうでなくちゃ、と喜ぶ変わりモノの筆者。

 また筆者だけだと思うが信号待ちでオーディオの操作などで無精して、イヤ意識せずシフトノブに手を置くと「P」に入ってしまう場合もあり、発進時にびっくりしたことがあった。

 と、まあ細かいことは好みの範疇で収まるのでご心配なく。DS9、直進安定性は抜群だし、夜間に走っても照射位置や範囲をコントロールしてくれるDSアクティブLEDビジョンは緊張を軽減してくれるし、車庫入れサポート機能のDSパークパイロットも装備されている。しかし、前輪の切れ角がかなり大きく、

図体の割に小回りの効く印象だった。運転が楽で乗りやすいセダンがDS9……しまった、大統領はステアリングを握らず、後席に座るんだった!!

DS9 オペラ Eテンス


価格804万円から
全長×全幅×全高4940×1855×1460(mm)
エンジン1.6リッター直4ターボ
最高出力200PS/6000rpm
最大トルク300Nm/3000rpm
モーター最高出力110PS/2500rpm
モーター最大トルク320Nm/500-2500rpm
WLTCモード燃費15.7km/L(ヨーロッパ仕様)

DSオートモービル https://www.dsautomobiles.jp/
問 DSコール 0120-92-6813

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。