オトナに似合う走るルーブル美術館
DS3 CROSSBACK opera


 SUVが大流行中である。そこでデカすぎず、かつ個性的なクルマといえばDS3クロスバックはどうだろう。DS? ゲームメーカーのアレかい? いやいや。DSオートモビルは2014年にシトロエンから独立した自動車ブランドだ。モノ読者の皆様にはベル&ロス(編集部注:フランスの腕時計メーカーで歴史が若いブランド)といった例えの方がしっくりくるやも知れぬ。その始まりは2010年のシトロエンDS3からであり、アヴァンギャルドの精神「SPIRIT OF AVANTGARDE」を標榜している。また「1955年パリモーターショーで発表されたクラシックDS(シトロエンDS)のコンセプトをリスペクトし、大胆さと革新に満ちた新しいクルマ、これまでに自動車業界になかったラグジュアリーなクルマを提案していきます」とブランドアイコンを設定している。ちなみにこのDS、シトロエンマニアの一度はたどり着きたい聖地の中の聖地ともいわれる。

ちなみに1955年のそれはデザインも技術も超革新的な試み(アヴァンギャルド)であったのだ。

 話は変わって現代のDS3クロスバック(以下DS3)である。

誰が見ても個性が光るデザイン。ボンクラな筆者は後ろのドアを前後逆につけちゃいました、いけねーとか言うのかも、と勝手に妄想してしまったが。

芸術は最初は理解されないというがそれかも知れぬ。しかし、変わったクルマ(失礼)は最高の刺激だ。興味のあるなしを問わずになんとなく楽しそう、と感じさせてくれるクルマは多くない。そして乗りこもうとするとこだわりの仕掛けがまた乗り手を楽しませてくれる。なんとドアノブが格納されていて、キーを持って近づくとせり上がるのだ!

ボディの「面」のデザインラインを崩さない配慮もあるだろうが、そのドアノブはきちんとメッキ塗装されるこだわり。クルマにに乗っていると街中のガラスショーウィンドウに映る自分の姿に見惚れること間違いなしなのだ。

 そしてDS3のドアを開けると驚きの第二幕があがるのだ。最初の感想は多くの人がキラキラ! と思うこと間違いない。

実際に光り輝いているように感じられるのはシフト周りだけなのだが、

(写真は本国仕様)

室内全体にダイヤモンド形状の数パターンの菱形デザインが随所に配されていて、その雰囲気で光っている。漫画雑誌的に表現すると「ドーン!」と効果音が入ってキラキラ表現になる。特にセンターディスプレイの「ダイヤモンド」は圧巻だ。

この模様はかのルーブル美術館のエントランスにあるガラスのピラミッドがモチーフとされている。使い勝手はデザイン優先の常で慣れるまでは使い易いとは言い難いのもフランス流。しかしそこがフラ車の魅力でもある。先にシフト周りの話が出たので追記になるが、センターコンソールまわりはブランドフラッグシップであるDS7クロスバックに準じたギョーシェ彫りの手法の一つでもあるクル・ド・パリ(編集部注;多数のピラミッドが細かく並んで見えるような技巧)が使われる。思わず筆者は呟いた。高級腕時計か! 

 シートにも隠れされたこだわりがある。

(写真は本国仕様)

見た目にも品のいいバルサブラックのレザーシートは部位により2種類の軟質フォームを使い分けることで座り心地やホールド性を高い次元で両立している。

 いつまでもデザイン鑑賞しているわけにもいかない。エンジンをスタートさせなくては、と思いスターターボタンを探すと、センターコンソールの奥に赤く呼吸しているようなボタン。これがスタータースイッチになる。エンジンは1.2リッターの直3ターボ。

スペックは130PS、230Nm。1.2リッターながら230Nmのトルクがたった1750rpmから得られるので加速で遅いとか合流などでしこたまアクセルを踏まなくては、と思うことがない。つまり扱いやすいのだ。組み合わされるATも8速あるので余計に踏んでいなくては加速しない、ということもなく静かでジェントル。しかもこのミッション、日本のアイシン製だから80年代から90年代のBX(シトロエン)や同じPSAグループの605(プジョー)で苦労した御仁も安心(大変失礼)。

 また、輸入車だし、3気筒ゆえの振動もあるだろうと思っていたらこれも見事に裏切られ、車内は大変静かでまさにラウンジ状態。グランシック専用装備品のフランスの高級オーディオブランド、FOCAL(フォーカル)のスピーカー(12個もついている!)から流れるジャズやクラシックを邪魔しないといえば伝わるだろうか。一方乗り心地はフラ車としては(DS3としても)かなり大きな18インチタイヤ(クルマにもよるけれどタイヤのインチが大きくなると乗り心地に影響が出る場合が多い)が標準装備になるため、構えて(といっても気合を入れるほどではないけれど)いたが、乗り心地はさすがプレミアムブランドだった。どこまでも行けそうな雰囲気はさすがで、ドライバーの疲労を軽減する渋滞追従型ACCにはレーンキープ機能も備わるなど先進の運転支援システムも充実している。特に夜間で威力を発揮してくれたのが先行車と対向車を眩惑させずに常時ハイビームになるDSマトリクスLEDビジョン。高速走行ではヘッドライトの照射範囲が絶えず動いて、視線の先を明るく照らしてくれ、夜間の視界からくる疲れは大幅に軽減された。これが対向車には眩しくないのだから恐れ入る。

 DS3、アートっぽいクルマだけかというとそうでもない。キチンと実用的なのだ。それはドライブモードの切り替えからもわかる。エコ、ノーマル、スポーツだけでなくスノー、マッドなどSUVらしいモノもある。また100%EVのE-TENSEもラインアップに加わり、ユーザーの用途に応じて選択可能。

 それまでの貴族など特権階級のモノから大衆の芸術に移行した幾何学模様をモチーフにした直線的なデザインのアールデコ。DS3はクルマを買うのではなく、アートを買うのだ。海外ではパトロンも立派な職業だというではないか。英国製やらイタリア製やらドイツ製やらの「超」高級車がひしめき合う高級リゾートホテルの駐車場でも存在感のあるDS3、英国BMC時代のADO16バンプラ、80年代のフランス、ルノー5バカラなど今は数少ない小さな高級車は373万円から購入可能。EVのE-TENSEは534万円から。

DS3 CROSSBACK OPERA

全長×全幅×全高4120×1790×1550(mm)
エンジン1199cc直3ターボ
最高出力130PS/5500rpm
最大トルク230Nm/1750rpm
WLTCモード燃費18.2km/L
価格466万円

DSオートモービル https://www.dsautomobiles.jp/
問 DSコール 0120-92-6813

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。