お酒博士・橋口孝司の酒千夜
Vol.03 お酒のトリビア02:アルコール分解遺伝子って何?


★今回おすすめのお酒
「アールグレイ&ウイスキー」

休日の午後、この記事を読んでいただくこともあるかもしれません。
そんな時には、アフタヌーンウイスキーティーはいかがでしょう?
お好みの紅茶にお好みのウイスキーを1tspを垂らします。アールグレイにシングルモルトスコッチウイスキー”タリスカー”(スコットランド/アイランズ)がおすすめ。ぜひお試しあれ
少しずつゆっくりと楽しみましょう。

お酒に強い人、弱い人がいますが、何が違うのでしょう?

日本人は欧米人に比べてお酒に弱い、といわれますが本当なのでしょうか?

アルコールは体内に入ると2回分解される!?
まず、私たちの体内にお酒(アルコール)が入った時に、何が起きているのか、を知っておきましょう。
体内にアルコールが入ると、2段階の分解作用が行われます。
まず1回目は、アルコールが肝臓で「アセトアルデヒド」という物質に分解されます。この物質は毒性が強く、顔や体が赤くなったり、頭が痛くなる、吐き気、頻脈などの飲酒による不快な症状を引き起こします。
そして2回目に、この「アセトアルデヒド」が酢酸に分解され、酢酸が全身に送られ筋肉や脂肪組織で二酸化炭素と水に分解され、呼気や尿となって体外へ排出されます。

分解酵素の働きはとても重要!

お酒に強いか弱いか、ということはこの一連の現象の中で起こる「2回の分解」に関わるアルコール分解酵素の遺伝子型によって異なるのです。

アルコールの分解に重要な役割を担っている2つの酵素は、ADH1B(アルコール脱水素酵素)とALDH2(アルデヒド脱水素酵素)です。これらの遺伝子型を検査によって、それらの働きの強さや弱さを知ることができます。つまり「アルコール分解遺伝子」を知ることで、自身のお酒に対する体質を知ることができるのです。

2つの酵素の働きについて簡単に説明すると、

ADH1B:アルコールをアセトアルデヒドに分解する

ALDH2:アセトアルデヒドを酢酸に分解する

ADH1Bの働きが弱いほどアルコールが長く体内にとどまり、酩酊状態が続きます。顔が赤くなりにくく、アルコール依存症になる確率が高いと言われています。

ALDH2は、働きが弱いとアセトアルデヒドが分解されずに体内に長い時間とどまるため、発がん性が高いといわれています。日本人は約40%がこのALDH2の働き(活性)が弱いのため、お酒に弱い体質といわれています。さらに約4%の人は「不活性型」と呼ばれ、ALDH2の働きが全くないため、お酒を飲めない体質です。落語にも出てくるように、奈良漬けで顔が赤くなって酔っぱらってしまうような人もいますので、絶対に無理に飲ませるようなことをしてはいけません。

この遺伝的性質は、日本人などのモンゴロイド特有のもので、アフリカ系やヨーロッパ系の人種には見られません。

日本人は欧米人に比べてお酒に弱いといわれることは、科学的にも証明されているのです。

体重や男女、年齢による違い

アルコール分解遺伝子以外にも、お酒の影響を受けやすいか受けにくいか、という事に関係する要素はあります。

それが体重、性別、年齢です。

体重が重い人と軽い人が同じ量のお酒を飲んだとしましょう。アルコールは血液に溶け込んで全身に広がり、体内組織の水分にも溶け込みます。体内のアルコール濃度が高くなるほど酔った状態となり、アルコールの影響を強く受けると考えると、体内の血液量や水分量が多い=体重の重い人ほど血中のアルコール濃度は薄くなり、その分酔いにくくなります。

また、一般的に女性は男性に比べて体も肝臓も小さく、アルコールの分解が遅いといわれています。個人差が大きいのですが、平均すると1時間で分解できるアルコールの量は、男性約8gに対して、女性は約6gです。そのため、女性は、少しのお酒でも肝臓に負担をかけてしまうため、影響を受けやすいと考えられています。

そして、年齢を重ねるほど体力の衰えとともにアルコールの分解機能も低下します。

そして、若い時よりも体内の水分量も減るため、血中アルコール濃度が上昇しやすく、酔いやすくなるといわれています。お酒を飲んできた経験が長い分、若い時と同じように飲んでしまったり、お酒を飲むことが習慣化して飲み過ぎてしまうことで体に悪い影響が出てしまうこともあるので気をつけるようにしましょう。

また「お酒は適量」とよくいわれるように、自分に合った量を知り、節度をもって愉しむことが大切です。

  • 株式会社ホスピタリティバンク代表取締役 ホテルバーテンダーから料飲支配人、新規ホテル開業準備室長、運営などをてがけ26年間ホテルに勤務。2008年より株式会社ホスピタリティバンク代表取締役に就任。バー開業コンサルティングなどを手がけ酒類関連団体の顧問、理事を歴任し国内外で講演、セミナーを行っている。ウイスキーバープロデュース・運営(2017-2019)を行う。 シャンパーニュ騎士団「シュバリエ」、ベルギービールプロフェッサー、日本伝統濁酒学博士などの称号を持つ。 2015年からは「橋口孝司 燻製料理とお酒の教室」にてセミナーの開催や、ウイスキーを愉しむイベント「ザ・シークレットバー」も銀座と西麻布にて定期的に開催している。 「ディスティラリーパッケージ1992」を皮切りに、「ウイスキーの教科書」「カクテル&スピリッツの教科書」「本格焼酎名酒事典」「ビジネスエリートが身につける教養 ウイスキーの愉しみ方」などを執筆、「世界のウイスキー図鑑」「世界のベストウイスキー」「ハリウッドカクテル日本語版」などを監修。ウイスキー、カクテル、スピリッツを中心に酒類に関する執筆・監修は26冊以上。 Webでは、「たべぷろ」にて執筆(https://tabepro.jp/author/hashiguchi) 「江崎グリコ お酒の話」を監修(https://jp.glico.com/osake/index.html)
  • https://www.hospitality-bank.com/