ジープ80周年
歴史の伝承「車」
Jeep WRANGLER SAHARA


 80年の歴史を持つジープにあって、いわば直系といわれるのがラングラー。ラングラーは前後リジッドサス、センターデフロック可能な4WD、ラダーフレームといった悪路の3種の神器を備えた超本気のクロカン系4WD。ボディ•オン•フレームを持つ希少な……と表現するとどうです専門誌っぽいでしょ? まぁ、とにかく泣く子も滑る悪路をモノともせず走破する本気モデルなのだ。今回撮影に乗り出したのはラングラーファミリーの中でも最も快適性が高いサハラ。

 

ジツはサハラ、フェンダー横のモデル名を見なくても見分けるポイントがある。ハードトップ部分やフロントのフェンダー部分がボディ同色に塗装されているのだ。他のグレードは樹脂素地の黒。ハードトップ部分は全て取り外し可能でその気になればオープンカーにもなるというシロモノだ。またラングラーに免疫のない人が必ず驚くのが、クルマの取説にドアの外し方が載っていること。これは結構ネタとしても受けがいい。岩場などの悪路チャレンジでドアが開かなくなることを防ぐためでもあるが、全部外すと下記のように非常に外に対して無防備というか超絶開放的になる。

まさに悪路のヌーディストビーチ状態なのだ。

 ヤッコラショとひと際高い位置の運転席に陣取ると、アイポイントは当然高い。道具というベクトルならば4tトラック並みのアイポイントだと思う。コクピットは未舗装路でもクルマの傾きを把握しやすいクロカン系SUVの教科書通り、水平を基調としたデザイン。 

サハラのインテリアはシートやステアリング、シフトブーツは本革仕様でアクセントに白いステッチが入る。特に助手席側のダッシュパネルにはステッチ入りのソフトパッドがあり質実剛健、無骨な中にあるオシャレといった風合い。

手動でシートを合わせるが、多くのクルマにあってないモノがひとつある。それは運転席のフットレスト! 告白するが筆者、走りながら左足で探してしまった。

 サハラは他のラングラーと違い、3.6リッターのV6NA、2リッターターボの2種類からエンジンを選択可能。スペックはNAの方が284PS、347Nmでターボの方が272PS、400Nmとターボの方がトルクフルになっている。その発生回転もNAの4100rpmに対しターボは3000rpmとスペック的にも扱いやすい印象。ミッションはどちらも8AT。試乗車は2リッターターボモデルだった。

ミッションのセレクター横にはお約束の副変速機のレバーが鎮座する。これはセレクトラックフルタイム4×4システムと呼ばれ、Nを除けばポジションは4つ。4H AUTOは前後のトルクを自動配分し、タウンユースでも使える4WD。2Hは後輪駆動で高速などで燃費に有利。4Hは前後のトルク配分が50:50で、最も力強い4Lはトルク配分は4Hと同様だがファイナルのギア比が2.72になる。筆者が試した限りでは普段は2Hの方が燃費にもいいし、当たり前かもしれないが意外に曲がりやすかった。ただ、本家本元の4WDと考えるとやはり普段から4H AUTOの方が「らしい」のかもしれない。

 高速道路ではこのテのクルマながらかなり静かで乗り心地がいい。トランスファーからのメカニカルノイズもかなり抑え込まれている印象。特にサハラはオールシーズンタイヤが標準装備だから余計に乗用車チックなのかもしれない。専門誌的ならハイウェイ•テレーンと呼ばれる舗装路重視のソレだ。また他のグレードのタイヤサイズが17インチなのに対してサハラは18インチのそれを履く。しかし天井は前出の通り取り外しが可能なため遮音材が使われておらず、雨天時などは意外に車内に音が入ってくる場合も。

 ステアリングは切り初めの感覚が若干鈍い本格クロカン系のモノ。このセッティングは岩場など悪路でもで進路を保ちやすい。例えば切り始めからクイックレスポンスだと障害物を乗り越えた際、ステアリングにキックバックが伝わり、オヨヨヨと意図しない方向にクルマが行ってしまうがそれを防止するのだ。走り出せばすぐ慣れるのでご安心を。

 積載などの使い勝手はボディサイズだからといえばそれまでかもしれないが荷室は広い。

しかも後席を倒せばなんと約2000リッターの容量を誇る。

 さて。超本気モデルのルビコンもラングラーにはラインナップ。

何度も恐縮だが、ルビコンとはジープがテストコースとしても使用しているネバダ州からカリフォルニア州に抜ける険しい花崗岩の道、ルビコントレイルがネーミングの語源。スポーツカーのニュルブルクリンクに対してクロカンのルビコントレイルといった具合。標準装着のタイヤもマッド&テレインなので静粛性能や乗り心地はサハラに譲るが悪路走破性はコチラが上だ。ルビコンの4WDは最強であるがために、前輪のスタビライザーを解放し、ホイールストロークを拡大させるロックトラック4×4システムと呼ばれる凝ったシステムを持つ。さらに障害物でヒットさせないために乗り降りに優位なサイドステップを装備しない。スタイリングからしても「ホンモノ」のオーラが漂う。コチラのエンジンは3.6リッターのみ。しかしながら昨今のガソリン代高騰にあってラングラーはすべてレギュラーガソリン対応なのも魅力だ。そしてラングラーをベーストするピックアップトラック、グラディエーターの導入も噂されるジープ、ますます目が離せない!

ジープ ラングラー サハラ

全長×全幅×全高4870×1895×1845(mm)
エンジン1995cc直4ターボ
最高出力272ps/5250rpm
最大トルク400Nm/3000rpm
WLTCモード燃費10.0km/L
価格635万円から

ジープ  https://www.jeep-japan.com/
問 ジープフリーコール 0120-712-812

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

関連記事一覧