ワゴン? スポーツカー? どっちも正解 
アウディ RS4 Avant

 アウディのRSシリーズ。メルセデスのAMGやBMWのMと同様にブランドの誇るハイパフォーマンスモデルである。アウディのちょびっとスポーティなSラインに対してRSはレーシングスポーツの頭文字を車名にするだけあり、本気なモデルなのだ。
 試乗車はRS4 アバント。なぜRS4なのか? RSシリーズのエントリーモデル、RS3スポーツバックや昨年発表されたRS6アバント、RS7スポーツバックやRSQ8ではないのか。さらに本誌のスポーツカー特集ならTTのRSクーペじゃないのか。オメー、自分の好みをだしてるんじゃねー(表現に誇張あり)、とお叱りを受けそうだが、RS4には意味があるのでる。それは現RSシリーズの元祖ともいうべきRS2がDセグメントでワゴンだったから。つまり、その直系ともいうべきモデルが今回のRS4アバントだ。
 始祖であるRS2は1994年にデビュー。

アウディ RS4 Avant

開発は多くがポルシェが携わり、生産工場もポルシェの工場で行われた。ベースになったクルマは当時の80アバント。現A4の前身モデル。そのRS2に搭載されたエンジンは2.2Lの直列5気筒ターボ、315PS。トルクは41.8kg-m。ベースの80シリーズはハイスペックモデルでさえ170PSだから約2倍近いパワーが与えられたのだ。もちろんフルタイム4WDのクワトロ採用。エンジンには「powered by PORSHE」が刻まれているし、ドアミラーは当時の964型ポルシェ911のそれだし、足下の17インチホイールも964型のカップデザインだし、ブレーキキャリパーもポルシェの文字とこのモデルは随所にポルシェを感じられるという。

アウディ RS4 Avant

 さて話はギューンと変わって現在のRS4アバント。現行モデルは2019年に日本へ導入され、昨年マイナーチェンジが行われた。試乗車はオプションのカーボンスタイリングパッケージを装着しよりスポーティな装い。
エクステリアの変更点は前後のバンパーやエアインレット、サイドシルなど。特にエンブレムとボンネット先端の間に設けられたスリットは往年のクワトロラリーを彷彿させるソレだ。

アウディ RS4 Avant
アウディ RS4 Avant

クルマに詳しくないヒトにはちょこっとだけ車高の下がったオシャレなワゴンに見えるはず。そこがまたイイのだ。もちろん、20インチの275幅のタイヤを収めるために広がった前後のオーバーフェンダーやリアのディフューザーなど

アウディ RS4 Avant
アウディ RS4 Avant

スターターボタンを押すとなかなかにいい音をしてエンジンが目覚める。2.9リッターのV6ターボ、450PSとその数値だけの響きを聞くと身構えてしまうが、RS4アバントはごくごく低速域でも扱いやすい。30km/hくらいだと乗り心地が硬めだけれど、それ以上ならこの数値を聞いても聞かなくても快適だ。かなり前のRSモデルはこれぞサーキット直系! 的な厳しい乗り心地を持つモデルもあったけど、コレなら近所にダイコンを買いに行っても腰が痛くならない。どうしても乗り心地が気になるようだったらコンフォートモードを使うのもあり。走り出せば街中では2000rpm以上回すこともない。1900rpmから5000rpmまで最大トルク、600N•mを発揮してくれるエンジンの恩恵だ。

アウディ RS4 Avant
アウディ RS4 Avant

高速も試さなくてはレポートが書けない、でも450PSツインターボ……とウジウジしつつも気がつけば料金所(笑)。意を決して全開加速! はい、意を決する必要はありませんでした。なぜなら怖くないから。加速力は強烈だけでどそこはさすがクワトロ、安定した加速だった。この安定はドライバーの心理的余裕につながる。また試乗車にはオプションのカーボンセラミックブレーキが装着されており、抜群の効きだった。「効き」どころじゃなく、その場に貼付けてくれる感じといえば分かりやすいか。絶大な安定感を誇る、それはお楽しみのワインディングロードでもいえることだ。サイズを感じさせない軽快な旋回と4WDのトラクションの高さ。RS4のサイズ感が抜群に感じる。これがRS6だとホイールベースが長くなるからタイトコーナーでの軽快感はやや薄くなるし、RS3系なら高速での直進安定性に気を使う割合がRS4よりもほんのちょっとだけ多くなる。SUVのモデルはアイポイントの高さがあるので感覚的なスポーティさは一歩譲る。その点RS4アバントならサーキットも楽しめる。見た目、実用的なステーションワゴンだけれどスポーツカーを追い回せる実力がある。極端な話、予備のタイヤを自分で積んで行くことも出来るくらい荷室は広い。もちろん、後席を倒せばもっと広い。 

アウディ RS4 Avant
アウディ RS4 Avant

 スポーティなフロントシートだけなく、後席も広くファミリーカーとして十分実用的だし(2人なら車中泊だって可)、気が向けばサーキット走行もこなしてくれる。RS4アバントこそ1台で何でもこなしてくれるのだ。

RS4 Avant
価格1250万円
●全長×全幅×全高:4780×1865×1435(mm)●エンジン:2893ccV型6気筒ターボ●最高出力:450PS(331kW)/5700-6700rpm●最大トルク:600Nm(61.2kg−m)/1900-5000rpm●WLTCモード燃費:9.9km/L

アウディジャパン https://www.audi.co.jp/jp/web/ja.html
問 アウディコミュニケーションセンター 0120-598106

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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