お台場の日本科学未来館で、最先端の実証実験を一堂に集めたイベント「未来をつくるラボ Open Day」開催。未来につながる実証実験参加してきた!

日本科学未来館(略称:未来館、館長:浅川智恵子)は、館内を舞台に展開されている最先端の実証実験を一堂に集めたイベント「未来をつくるラボ Open Day」を、2025年10月25日(土)・26日(日)の2日間にわたり開催した。ロボット、AI、都市づくりなど、多彩な分野の研究開発が未来館に集結。来場者は一人ひとりが「未来をつくる」一員として参加できる、特別な体験型イベントとなった。monoWeb編集部およびmonoTVスタッフもこの “未来体験” に参加し、現場の様子を取材した。

未来館では、大学・研究機関、企業、市民が連携し、未来館を実証の場として活用しながら、最先端の研究開発および実証実験を推進する「未来をつくるラボ」を展開している。

未来を体験! ロボット・リモートワーク

ロボットの遠隔操作を通じて、未来のリモートワークを体験する展示が行われた。参加者の操作データはAIによって学習され、サービスロボットが人とともに成長するための開発に活用されている。

目の前の棚からペットボトルを「掴む」「向きを変える」「ボックスへ移動する」「ボックスに入れる」といった一連の作業は、シンプルに見えて意外と難しい。実際に操作してみることで、ロボット制御の繊細さと奥深さを実感できる内容だった。隣のブースでは、遠隔操作によって東京大学が用意した部屋内のロボットを操作する体験も可能だった。距離を超えて空間を共有する感覚は、リモート技術の可能性を感じさせるものだった。

実施主体:AIロボット協会、東京大学

映像で変わる?人の行動と未来のまち

街中や駅構内、商業施設などに設置された多数のデジタルサイネージ(大型モニター)と、そこに映し出される映像を活用することで、通行人の動線や心理的な動きに変化をもたらすことが可能かどうかを検証している。本実証実験では、両側のモニターに縦じま模様を右方向へ流す映像を表示したところ、通行人が自然と右寄りに歩行する傾向が確認された。実際に歩いてみると、確かに右側に寄って進む動きが見られる。

この技術を混雑する地下通路や歩道などに応用することで、歩行環境の改善や人流の最適化が期待される実証実験だ。

実施主体:NTTコミュニケーション科学基礎研究所、東京大学

あなたによりそうAIユニバーサルガイド・アプリ

実際の運用では、興味・関心や年齢などの質問項目に入力された情報をもとに、AIが利用者の特性を判断し、個々に寄り添ったアテンドを開始する。本システムには未来館の展示ブースに関するデータが組み込まれており、利用者が楽しめるブースをAIが選定・案内する仕組みとなっている。

実施主体:NHKグローバルメディアサービス

AIスーツケースで常設展を歩こう

このスーツケースは、未来館の館長でありIBMフェローでもある浅川智恵子氏が、出張の際に「スーツケースが自動で動いて道案内をしてくれたら」と感じたことをきっかけに、2017年頃から、浅川氏が客員教授を務める米国カーネギーメロン大学の研究室を中心に開発が始った。外見はスーツケースだが、衣類などの荷物を収納することはできない。その代わり、バッテリーをはじめとする最新技術が詰め込まれている。単に人の前を誘導するだけでなく、親指付近にある操作スイッチは、その進行方向をスイッチ自体が動き、ユーザーに指示できるなど、高い機能性を備えた“賢いスーツケース”だ。大阪・関西万博で毎日実施された実証実験の成果を反映し、ユーザーをよりスムーズに誘導できるよう改良が加えられている。大阪・関西万博に取材に行ったパビリオンで確かにこのスーツケースには大勢の人が並んでいた。

実施主体:日本科学未来館

音でつながる、ひとがつながる、空間楽器プロジェクト

東京藝術大学 ART共創拠点が実施する本ワークショップでは、スマートフォンを楽器に変身させ、参加者全員で音楽を奏でることで、自然なコミュニケーションと一体感を生み出すことができる。スマートフォンには楽曲の各楽器パートが配信され、参加者は自分の端末を通じて演奏に参加。今回の実証実験では「トランペットードラム」という楽器パートが割り当てられ、画面をタップすることで色が変化しながら、自分のパートを奏でることができた。ベースとなる楽曲があれば、配信先は100人でも、1000人でも、さらには1万人規模でも対応可能。音楽を通じて、誰もが気軽に参加できる新しい共創のかたちを提案している。

実施主体:東京藝術大学 ART共創拠点

「ヒューマノイドロボット」との未来の体験

最先端のヒューマノイドロボットと会話したり、記念撮影を楽しんだりできる実証実験を実施。さらに、複数のポージングやダンスのデモンストレーションも披露され、来場者の注目を集めた。このロボットは自力で歩行し、ダンスもこなす高度な運動能力を備えている。一方で、ふいに倒れた場合は自力で起き上がることはできず、今後の更なる開発・強化学習によって立ち上がれるようになることを目指している。その “できない” 部分にこそ、むしろ人間らしさが垣間見え、観客の共感を誘った。

主催:GMO AI & ロボティクス商事

ロボットとくつろぐ未来の共生空間「ハナモフロル・カフェ」

高齢者や子どもにも親しみやすい子ども型ロボット「ハナモフロル」。カフェのようなリラックス空間において、“やさしい”ふるまいを通じて、人とロボットの共生のあり方を体験・検証。

「Hanamoflor(ハナモフロル)」は、ゆっくりと語りかける口調や穏やかなまなざしなど、“やさしいインタラクション”を特徴とする見守り型の子ども型ロボット。施設や家庭など、場所を問わず、高齢者から子どもまで誰もが安心して接することができる“こころのパートナー”となることを目指して開発された。ハナモフロルとの関わりを通じて、人とロボットの間に “やさしさ” や “思いやり” がどのように育まれるのかを探りながら、ロボットの社会的受容性の検証と、共生支援技術の構築を目指している。

実施主体:ソニーグループ

「対話型AIロボット」による未来のコミュニケーション

日本語・英語・中国語・韓国語の4言語に対応したAIロボットとのコミュニケーションを体験できる実証実験が行われた。展示ブース内では、来場者が疑問を投げかけると、AIロボットが瞬時に回答し、展示物まで案内してくれる仕組みとなっている。

実施主体:GMO AI & ロボティクス商事

話して育てる「AI “分身” 科学コミュニケーター」

AIが科学コミュニケーターの “分身” となり、来館者との対話を通じて人とともに働き、成長する新たなAIモデルの体験が可能。本プロジェクトでは、AIを人間の共創パートナーとして位置づけ、相互に学び合いながら成長する可能性に着目している。今回、日本科学未来館で活動する6名の科学コミュニケーター(SC)をモデルに、彼らの分身となるAIアプリ「AI分身科学コミュニケーター(AISC)」を開発。AISCは、科学コミュニケーターとして来館者と会話を行い、その対話内容を本人と共有することで、AIと人間が互いに学び合い、成長していくことを目指す実証実験だ。

実施主体:ソニーコンピュータサイエンス研究所

耳から始まる展示体験「サウンドMRガイド」

GPSなどの位置情報技術を用いることなく、端末を携帯しているだけで使用者の位置をミリ単位で特定可能な技術を活用。これにより、位置に応じて音声情報を再生する「サウンドMR(複合現実)」を実現し、視覚の状態に関係なく、聴覚を通じて展示を楽しむことができる。参加者は、専用のスマートフォンとイヤホンを装着し、自身の位置や動きに連動して流れる音声ガイドを聞きながら展示会場を巡ることになる。案内役の声に導かれて歩くことで、移動に合わせて展示の解説が自然に再生され、耳から始まる次世代のミュージアムガイドを体験ができた。

実施主体:GATARI

日本科学未来館は、「そう遠くない未来」のかたちを、いまこの場で体験させてくれる場所だ。来場者のなかには海外からの姿もあり、日本の技術に目を輝かせていたのが印象的だった。

取材中の昼食は、最上階にあるレストランでとることに。てっきりシステム化されたロボットが応対するのかと思いきや、そこはまだ人の手による、アナログな接客が息づく空間だった。

Miraikan日本科学未来館

「Miiraikan日本科学未来館」
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  • 昭和‐平成‐令和とグルメからファッション、ペット(猫専門)まで幅広いジャンルの情報誌を手掛ける。現在は、執筆の傍ら全国地域活性化事業の一環で、観光・地方に眠るお宝(ギアもの)ご当地グルメを全国旅取材する日々。趣味は街ネタ散歩とご当地食べ歩き。自宅は猫様の快適部屋を目指し、日々こつこつ猫部屋を造作中!!

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