

異色のウオッチビルダー、片山次朗さんが率いる国産腕時計ブランド「大塚ローテック」。その「5号改」が発表されたのは、今年の1月15日のこと。それからわずか8ヵ月ほど、去る9月22日に早くも最新作「9号」が発表された。ここでは片山さんでなければ生み出すことのできない、無骨にして精緻、唯一無二の意匠をお楽しみいただきたい。
9号は片山さんがモジュールだけでなくベースムーブメントから手がけた大塚ローテック製ムーブメントを搭載する腕時計。ジャンピングアワー、リワインディングミニッツ、トゥールビヨン、アワーストライキング、パワーリザーブインジケーターの複雑機構を、縦44mm、横30mmのスクエアケースに収めている。



この独特な意匠の発想の元となったのは何か? なんと電力メーター(誘導形電力量計)だという。「ガラスケースの中に様々な機械部品が並び、その動きを眺められるような腕時計をデザインしたいと思い立ち、ムーブメントをゼロから設計しました」と片山氏。
「載せられた様々な機能部品があらわになっている構造は、真空管、カメラの軍艦部、工業地帯の景色などと通じるものがあるかも知れません。サファイアクリスタルの中で動作している部品のひとつひとつから、工業機械の質感、振動や動作音が伝わってくるような腕時計を目指しました」。

寿司下駄の上にネタを並べるようにメインプレート(地板)の上に様々な機能を載せているムーブメント。「寿司下駄=SUSHIGETA」から「Cal.SSGT」と名付けられた。9号のために新たに開発された大塚ローテック製ムーブメントで、駆動方式は手巻。サイズは41.3mm × 26.4mm、高さは10.35mm、部品点数は278点。機能はジャンピングアワー、リワインディングミニッツ、トゥールビヨン、アワーストライキング、パワーリザーブインジケーター。



普段、目にするところに付けられることがない部品、ボールベアリングも意匠に取り込んでいるところが、いかにも片山さんらしい。5号改に続き、ミネベアミツミ社が9号のために新たなボールベアリングに取り組んでいる。




大塚ローテック 9号SPEC
| 機能 | ジャンピングアワー、リワインディングミニッツ、トゥールビヨン、アワーストライキング、パワーリザーブインジケーター |
| 駆動⽅式 | 手巻 |
| ムーブメント | 自社製ムーブメント Cal.SSGT(手巻、30石+5ボールベアリング、毎時18,000振動、パワーリザーブ約40時間) |
| ケースサイズ | 縦44mm、横30mm、厚み最大13mm |
| ケース素材 | サファイアクリスタル+ステンレススチール(316L) |
| ケース仕上げ | ヘアライン仕上げ |
| ケースバック | ソリッドバック |
| 防⽔性 | ⽇常⽣活防⽔ |
| ストラップ素材 | カーフレザー |
| ラグ幅 | 26mm |
| 球軸受け | DEL-008(2個)、DDL-004(2個)*特製ルビーボール・ボールベアリング DEL-008(大塚ローテック機械式腕時計9号向け特注・特製ベアリング) |
| ⽣産国 | ⽇本 |
| 税込価格 | 17,600,000円 *1年保証 |
発表会の時点では、9号の販売に関する詳細は未定だった。販売スケジュールを知りたい人は公式サイトのSHOPページより、メールマガジンに登録してその知らせを待つのみ。ちなみに来年には8号の発表もあるらしいので、期待は高まるばかり!

片山次朗(かたやまじろう)
デザイン学校を卒業後、自動車デザインの仕事についていましたが、プロダクトデザイナーとして独り立ちし、ある日たまたまネットオークションで卓上旋盤を手に入れます。そこからは見よう見まねの独学で、ついには独立時計師に。2012年には大塚ローテックを創業、販売を開始し、今に至ります。モットーは「自分自身が欲しい腕時計を作る」。時計界のアカデミー賞と呼ばれている「ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ(GPHG)2024」のチャレンジ部⾨(3,000 スイスフラン以下の時計部⾨)では、大塚ローテックの「6号」がグランプリを受賞を受賞しました。

ミネベアミツミ
機械の回転をスムーズにするミニチュア・⼩径ボールベアリング(軸受)や、1直リチウムイオン電池⽤保護ICなどをはじめとする、超精密加⼯技術を代表するコア技術を中⼼に、半導体、モーター、センサーなど、様々な機械・電⼦部品を⼿がける相合精密部品メーカー。その超精密技術は、エアコン・掃除機・ドライヤー、ゲーム機などの家電製品、スマートフォン・パソコンなどの情報機器、⾃動⾞・航空・宇宙製品、そして医療機器など、幅広い分野で使⽤されています。


































