酒と涙と男とデリカ?
パジェロの復活など、何かと話題の三菱自動車。大相撲でいうとパジェロ、トライトン、デリカD:5(以下D5)と三役揃い踏みで、まさに「悪路の三菱」が復活の狼煙をあげた。ファンだけでなくクルマに個性を求めるユーザーも大歓迎だ。
そして横綱パジェロ不在の間、三菱の屋台骨を長い間支えているのがD5。現行型は2007年に販売開始となっているから、まもなく20年のご長寿モデル。しかも2025年には過去最高の販売台数を記録したというから、いまだ現役のいぶし銀の実力「車」なのだ。
2026年1月には大幅に手が入る改良が行われた。フロントグリル周りはそれまでのメッキ加飾を引き立てるギンギラ系からブラックに変更し、メッキのライン逆手にとってアクセントに。これが渋くて「昔は無茶したもんヨ」と清濁合わせ呑んだオトナのようで渋さが漂う。さらにそのブラックは前後のホイールアーチにも使われ、統一感を演出。なおこのホイールアーチで全幅が20mm拡大したのはナイショ(?)の話だ。
かように見た目もギンギラ系から大人の渋みを出すようなエクステリアといい、デビューからまもなく20年といい、ミニバンでありながらも豪華志向なベクトルとは一線を画し、自分の行く道を進む。そんな渋さはクルマ界の河島英五でもある。

オンリーワンミニバン
さて現行D5のデビューは既出の通り、2007年。2007年は平成19年で、市民ランナーのお祭り的イベント、東京マラソンが始まった年でもある。ランナー同様時代を駆け抜けるのがD5なのだ。
先代のデリカスペースギアは2代目パジェロをベースに作られたミニバンで、悪路をモノともせず走破できる性能がウリ。その性能が本気過ぎるのも現行モデルには受け継がれている。たとえばボディの骨格はアバラ骨のような構造を持つ独特なリブボーンフレーム。

この独自形状のフレームはジツは2列シートや3列目シートのBピラーやCピラーなど車内でも感じることができる悪路走行には必要な剛性の高いボディの証でもある。そんな基本構造はそのままに何度かマイナーチェンジを受け、2026年1月もアップデートがあった。もはや固有種がどんどん進化していくガラパゴス島のような存在といっても過言ではないのかも。「悪路」や「未舗装路」といったブレないキーワードでみれば最新の4WD技術よりも長く使われ続ける信頼できる技術の方がより実戦的でもあり、悪路ばっちこいなミニバンはライバル不在の孤高の存在でもあるのだ。

さて試乗車はPグレード。ボディカラーはホワイトダイヤモンド・ブラックパールマイカの2トーン。


インテリアは大きな意匠変更はないけれど、コクピット周りには傷がつきにくい素材を多用し、手入れや、精神衛生上にも優しい。また触ったかどうかわかるエアコンや走行モードの切り替えなど物理スイッチがある方がこの手のベクトルのクルマには有難いと思う。最近のオールディスプレイ的なクルマからすると、古さを感じるという意見もあるけれど、平成レトロも流行っていることだし、自分での操作感は筆者は大歓迎だ。伝統といえば三菱悪路系モデルの必需品的傾斜計などはデジタルで表示可能。


搭載されるエンジンは2.3リッターの直4ディーゼルターボ。組み合わされるミッションは8速AT。デビュー当初はガソリンエンジンやFFモデルもラインナップされていたが、イチロー選手が引退した2019年に施された大幅な改良でエンジンはディーゼル1本化、ミッションも6速から8速になり今に至っている。パワーユニットのスペックは145PS、380Nmでほぼほぼ2tの車重ではパワー不足か、と思ったが、実際は豊かなトルクで十分以上な印象。トルクの出方もグーン! とといった感じでなく、滑らかに太くなっていくので扱いやすい。

ミニバン界の高倉健⁉
ただしどことなく古さを感じる場面も。加速し3速へ入るのが28km/h付近で、4速へは38km/h付近、5速へは42km/h付近、6速には55km/h付近でトルクを活かして早めにシフトアップされるのだが、ギアによってはなかなかシフトアップされない。特に3速へ入る速度が30km/h付近なので、街中や渋滞などの25km/h付近だとエンジンが2000rpm少し上をキープしたままモサーっと回っている印象で、早くギアが上がってほしいなあ、と思うことも。コレはMTモードで自分がシフトアップしても受け付けてくれなかった。
高速は100km/hで約1500rpm。120km/hなら約2000rpm。豊かなトルクで定速走行は大きく踏み込む必要性もなく、ダラダラとした登り坂でもパーシャルスロットのまま巡航可能。踏み込む必要がないのは長距離移動ではストレス軽減にもなる。ただし、110km/hを超えると燃費の伸びは鈍くなった。90km/hから100km/hくらいで流していると6人乗車でも燃費は15km/L近くを記録した。
また悪路を重視したクルマ特有のセッティングでステアリングはクイックではないけれど、これが背の高いミニバンながらも高速移動では安定した直進安定性を誇る。
乗り心地はサスペンションのストロークがたっぷりあり、柔らかめなのでどの速度域でも癒し系。それでいて速度が上がるとフラフラする、ということもない。
クネった道でもゆっくりとロールしながら切り返しの多い区間を抜けていける。1月のマイチェンで装備された三菱の粟田口吉光ともいえる伝家の宝刀、S-AWCの恩恵でもある。
またドライブモードも従来の2WD、4WDオート、4WDロックから大きく変わり、エコ、ノーマル、グラベル、スノーに変更された。従来モデルから乗り換えても違和感ないような走行モードだけれど、2WDでも安定感が目立った。試乗中、幸運にも(?編集部注:日頃の行いでは?)強雨の中の移動が大半を占めたがエコモード(2WD)でも十分な印象。ただしノーマルの4WDを知ってしまうと、安心感やしっかり感が筆者推定で5割り増しな気分。ノーマルで強雨や風の強い高速を走ると「これが背の高いミニバンっすか?!」的な安定感や、クネッた道では図体を感じさせないコーナリングが楽しく、MTモードでのお楽しみまで可能だった。

さてミニバン上席と言われる2列目はさすがに広い。3列目を使わなければ相当広い足元スペースができる。このスライドを少しばかし前席よりにしておけば3列目も同じくらいの足元スペースになる。


筆者はこの3列目で高速から一般道を約120km、2時間近く体験。場所的に突き上げ感は致し方なし、という前提だったのだがストロークたっぷりなサスのおかげでドン! とくるようなことはほぼなかった。また足元スペースも上記のように2列目を少し前にしておけば、3列目としてはかなり広い。クネッた道でもキチンとルーフグリップがあるので座り直しの時もヨッコラセとし易い。ただ右側の座面には3列目中央席用のシートベルトアンカーがあるので、3列目を2人で使う時はそちら側のお尻の置く場所が落ち着かないことも。筆者の胴長系体型だと背もたれの厚みが若干足りない感があり、長時間だと自前のクッションを持ち込むと他の席と遜色ないと思う。また工夫が必要なのは6人以上で乗った時の荷室の使い方。まあこれは世界中どのメーカーも同じなのでユーザーの創意工夫が試されるモノかもしれない。
D5はクルマ自体の設計は確かに古いけれどやることはキチンとこなす、ミニバン界の高倉健のようでもある。まさに「自分、不器用ですから」(編集部注:日本生命のCM中に俳優の故・高倉健氏が言って一躍有名になった)というフレーズが似合いそうなのがD5なのだ。

デリカD:5 Pグレード
| 価格 | 494万4500円から |
| 全長 × 全幅 × 全高 | 4800 × 1815 × 1875(mm) |
| エンジン | 2267cc直列4気筒ディーゼルターボ |
| 最高出力 | 145PS/3500rpm |
| 最大トルク | 380Nm/2000rpm |
| WLTCモード燃費 | 12.9km/L |























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