
去る2025年6月8日、東富士演習場(静岡県)において、“総火演” こと富士総合火力演習が行われました。コロナ禍の前までは8月に実施していましたが、その後5月開催と変更されたものの今回は初の6月開催となりました。
陸上自衛隊において、最大規模の実弾射撃演習であり、もともとは、陸上自衛隊の富士学校等で学ぶ学生教育用に火力戦闘の様相を展示していたのですが、募集広報の一環として一般公開されるようになりました。東日本大震災以降、自衛隊人気も高まり、入場チケットは、年々高倍率化していきます。なんと最盛期には、倍率30倍を超える、プレミアチケットとなってしまいました。しかし、広報と言う役割は果たされたと判断され、再び学生教育を目的とした演習となりました。
訓練実施部隊は、富士学校の富士教導団となります。部隊名に “教導” とあるように、富士学校で主として幹部を対象とした教育訓練を行います。また富士教導団を支援するため、毎回日本各地から様々な部隊が参加しているのも特徴です。
総火演は、前段と後段に分かれた、2部構成となっています。前段は、陸自が配備する火器・火砲の射撃を展示し、後段は、シナリオに沿った一連の戦闘状況を展示します。
今回は、前段演習にて、陸自がこれから配備する新装備の紹介がありました。これまでも総火演の場でお披露目を兼ねたことはありましたが、今回はその数の多さに驚かされました。
中でも25式偵察警戒車と24式機動120㎜迫撃砲の登場には驚かされました。この2車種は、「共通戦術装輪車」として、16式機動戦闘車の車体をベースに開発されたものです。世界では、装輪車のファミリー化はスタンダードですが、日本もようやくその仲間入りを果たしました。なお、25式偵察警戒車については、この時初めて名前が公表されました。今後、偵察戦闘大隊へと配備が進んでいくものと思われます。


そして、日本初のスタンドオフミサイルとなる12式地対艦誘導弾能力向上型も初登場しました。射程900~1500kmと、これまで陸自が配備してきた地対艦誘導弾の倍以上、最終的には10倍近い射距離となります。また従来の地対艦ミサイルで用いられてきたターボジェット・エンジンよりも燃料効率に優れたターボファン・エンジンを採用しました。


12式地対艦誘導弾能力向上型。現在研究開発中の長射程の地対艦ミサイル。洋上の敵艦艇を攻撃するのが任務となる。
この12式地対艦誘導弾能力向上型とともに、開発された島嶼防衛用高速滑空弾も初登場しました。こちらは、敵基地反撃能力をもつ長射程ミサイルです。なんと最大3000㎞もの飛距離まで届くように研究開発されているとのこと。今回登場したのは、発射機ではなく、弾薬搭載車(予備ミサイル搭載用)でありましたが、ベースとなる重装輪回収車の上に載せられたキャニスターの大きさに、その中に納まるミサイルも巨大であることがうかがい知れます。

今回は新装備についてご紹介させて頂きました。後編では、大迫力の実弾射撃演習の模様をご紹介したいと思います。