ディーゼルでもレンジだった
レンジローバー イヴォークに「ちょっと雪道」でも試乗


低いルーフを持つオフローダー

レンジローバー イヴォークといえば生粋のSUVメーカー、ランドローバー社の高級ブランドであるレンジローバーにラインナップされるスタイリッシュなコンパクトモデル。2011年に初代がデビューし、そのデザインに多くのファンを持つにいたった。

それまでは質実剛健な本格オフローダーのランドローバーか優雅なフルサイズのレンジローバーだったいわば二者択一だった同ブランドのカテゴリーに全高が1.6mそこそこの低い屋根を持つクルマは新鮮そのモノだった。そして2019年に2代目へ襷(たすき)が渡され、今にいたる。

デザインはキープコンセプトの2代目

今回はディーゼルエンジン搭載の中間グレードともいえるSに試乗。オトナの嗜みとしてちょっといいモノは持つべきマストアイテム(買えないけれど)。モノ凄くいいモノならば主流のレンジローバーがあるけれど、筆者のようなヤングでナウなオトナ(どれも死語)はイヴォークが気になるのだ。

現行モデルの見た目はキープコンセプト。しかし中身は大幅に手が入っている。骨格ともいうべきプラットフォームが変更され、ホイールベースの延長や先代比13%増しのボディ剛性を得た。

遊び心のあるクーペやコンバーチブルは設定されず、5ドアモデルのみになった。フロント周りはランドローバーのディスカバリーに似てなくもないけれど、どことなく「お上品」な雰囲気はボンネットのレンジローバーの文字の凄みというヤツか。

イヴォーク、コンパクトSUVに分類される。確かに見た目はデカく感じるけれど、きっと1900mm超えの全幅から受ける印象だと思う。全長だけで比較すれば4380mmとマツダの主力SUV、CX-5よりも短い! 電動格納式のドアハンドルを使って室内へ。

ディスプレイを多用したインパネ

室内は薄いデザインのダッシュボード(もちろん、水平基調のデザイン)から横方向に広い印象を受ける。インパネにはふたつのタッチスクリーン。これは兄貴分ともいえるヴェラールに通じるモノ。タッチスクリーンは初代の8インチから10インチへ大きくなった。

つまりイヴォークはレンジローバーのエントリーモデルとなっているが、雰囲気や仕立ては「砂漠のロールスロイス」の異名を持つレンジローバーブランドの血筋なのだ。

ステアリングを含めたインパネ周りの革の使い方は絶妙で、嫌味さがないのはさすが。一方、シートは本革ではなくファブリック地。この生地はただの生地でなく、表皮に天然由来のテンセル(ペットボトルなどの再生)素材を使ったモノ。

もちろんレザーシートの設定もあるし、デンマークを代表するファブリックのブランド、クヴァドラ(Kvadrat)のウールブレンドなどもあるが、若々しいイメージのイヴォークには試乗車のシートがぴったりな気がした。

イヴォークの装備でユニークなのは前席シートバックに設けられた取り外し可能なタブレットのアタッチメント(オプション)受け。横にはUSBもある。 

エアコンの風量調整は慣れが必要かも!?

インパネ中央の下部の液晶モニターは4WDシステムの設定の他、シートヒーターやエアコンの操作が可能。筆者が慣れが必要と感じたのは、エアコンの風量調整。

触ったか触らないかの感触が乏しい液晶パネルを一回タッチしてから、助手席側のダイヤルで風量を調整する。この2ステップになかなか慣れず、助手席の温度調整を何回かしてしまった。

2t近い車重でも高燃費なディーゼルユニット

さて試乗車はディーゼルユニットにマイルドハイブリッドを搭載したモデル。そのスペックは204PS、430Nmとヴェラールと同じモノ。

考えようによってはヴェラールのショートボディ版がイヴォークなのかもしれぬ。走り出すと一番使う回転域で太いトルクを出してくれるおかげで加速のツキもいいし、組み合わされる9ATの相性もいいので滑るように速度を上げていく。

そしてその加速中は高級車ブランド、レンジローバーとしても耳をそばだてなければ、このディーゼルは騒々しくない。静粛性のある室内で音楽も楽しめるのはもちろん、後席の住人との会話も普通でOKだ。

乗り心地だって快適楽チン志向。相乗効果で高速では楽チン快適ドライブだった。特にだらーっと続く登り坂ではディーゼルの恩恵でアクセルはパーシャル(踏んでも放してもない状態)で速度をキープできる。また高速を走っている時のエンジン回転は100km/hで約1500rpm。120km/hでも2000rpmを超えない。

すると燃費が14km/Lに届く数値を出したのには驚いた。いくらディーゼルエンジンといえども2t近い車重のモデルが、である。ヘビーデューティユースに特化し、そのためにクルマもヘビーで燃費もヘビー級だったランドローバーブランドのイメージだがそれも遠い過去の話、ということなのだろう。

オールシーズンタイヤと雪道

試乗日は寒波襲来という予報。関東北部では平地でも雪が混ざる予報。しかし実際には雪が混ざるどころか、しっかり雪。

道は部分的に圧雪だったが、ピレリのオールシーズンタイヤ、スコーピオンゼロでM/S(マッド、スノーの表記あり)を履く試乗車は滑るどころか、しっかりと路面を掴む。しかし、雪はどんどん降ってくる。

道路状況が圧雪になり始める前に走行モードを草地/砂利/雪のモードに。過信は禁物と理解しているが、クルマは終始安定傾向。悪条件でも不安なく走れた。この気分的余裕は運転していても疲れない。これこそこのクルマの魅力だと思う。

一応用意していた布製のタイヤチェーンは使わずに済み、レンジローバーならではの高い走破性を実感できた。渡河水深600mmなどの性能からすればちょこっとした積雪なんて「屁のツッパリはいらんですよ」と思うけれど、ドライバーの受ける気分的余裕は大きい。

そんな性能を使い切るユーザーは世界中でも一握りだろうけど、渡河水深に限っては最近のゲリラ豪雨というもんもある。水たまりに突撃せよ! というわけではなく、走っている道がアレヨアレヨという間に、の話もあることだし。

また冬などでフロントガラスが曇って仕方がない、というのはイヴォークには当てはまらない。リアガラス同様、フロントガラスにも熱線が入っているため、スイッチ(タッチパネルだけど)一つでそんな悩みは解消。おしゃれで使い勝手よく実用的。そんなイヴォークは518万円からの価格設定だ。

レンジローバーイヴォークS D200


価格 666万円から
全長×全幅×全高 4380×1905×1650(mm)
エンジン 1997cc直列4気筒ディーゼルターボ
最高出力 204PS/3750rpm
最大トルク 430Nm/1750-2500rpm
WLTCモード燃費 13.3km/L

ランドローバー https://www.landrover.co.jp/index.html
問 ランドローバーコール 0120-18-5568

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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