こだわりのRR、
ポルシェ 911カレラGTSに乗ってきた!


 モノマガジン本誌のマスターピース特集(号バックナンバーも)で登場するドイツの頑固職人が作り出す名車、ポルシェ911シリーズ。スポーツカーの代名詞でもあり、クルマ好きの頂の一つを成す存在だ。車名は911だが、好きモノは930や964といった型式で呼ぶ。独特なシルエットの起源は1948年の356から。これはポルシェの名前がついた最初のクルマとして知られ、名探偵コナンの黒の組織のジンのクルマといえばわかりやすいかも。考えてみれば半世紀以上同じようなシルエットのボディを持つクルマって他にはないかもしれぬ。すべてはRRレイアウトの継承と発展(映画のタイトルみたいだ)からだ。今回、その911の現行モデルたる992に乗ってきた!

グレードはカレラGTS。

テールライトはGTS専用デザイン

カレラSよりもスポーツ濃度が高いモデルで、もともとGTSは904GTSや924GTSといったホモロゲーションモデルにつけられていたネーミングだった。その後GTSは1992年登場の928GTSのようにモータースポーツから距離を置き、いわゆる最終進化版といった位置付けに。それは21世紀でも変わらず、同ブランド初のSUV、カイエンにも使われ、シリーズで最もパワフルなNAエンジンをGTSは搭載していた。911シリーズでは997型に初めて設定された高性能パワーユニット搭載モデル。カレラGTS(以下GTS)はカレラSとターボの中間に位置するといった方がわかりやすいかも。ちなみに992(現行モデルね)、ベーシックモデルがカレラ、カレラSはカレラの運動性能に磨きをかけたモノ、トップモデルはターボといったグレード展開でサーキットユースどころかレーシングユースメーンのGT3も用意されている。バリエーションはさすがポルシェ! クーペやカブリオレ、タルガトップをラインナップし、タルガトップ以外は後輪駆動も選択可能。

 筆者が乗ったのはGTSにオプションテンコ盛りのモデル。その内容はフルバケットシートやポルシェセラミックコンポジットブレーキ+ハイグロスブラックブレーキキャリパー、リアアクスルステアリング、ティンテッドLEDマトリックスヘッドライト、ポルシェダイナミックシャシーコントロール、GTSインテリアパッケージ、アルカンターラサンバイザー&ルーフライニング他などが装着され、オプションだけの総額は、新型クラウンも買えそうな637万8000円! ナリ。これでも足りないというのであれば、その昔本気系(いわゆる走りにふった911オーナー達)911に高い装着率を誇った今はなきマターのロールバーくらいかもしれない。コレは乱暴に例えるとマイケルジョーダン=ナイキと同じようなモノと思っていただければ間違いない。ただ、一度でもドアを開いてシートに座ってしまうと、この仕様で欲しくなってしまう(笑)。もちろん買えれば、だが。ポルシェって販売がうまいんだよ、とよく聞くがなるほど、である。ついつい余分なオプションをしたくなってしまう魅力あるパーツが多い。そしてそのオプションをつければ同じ911でも別ベクトルのモデルだったり格上のグレードだったりが買えてしまう。この商売人が!! と扇子で額を叩きたくなる。

 運転席の前にある5連メーターはポルシェの伝統だが、デジタル化が進んで、両左右の表示は筆者のポジションだとステアリングで隠れてしまった。

 しかしながらいつ見てもポルシェのドアやフロントフードといった隙間は少なく均一で、さすが戦車好きなゲルマン民族の作ったクルマだ。

この均一の隙間はヒンジにいいモノを使っている証左でもある。ちなみにヒンジに剛性の少ないそれを使うと緩んでしまうことも多く、ドアとボディに少しだけ多く隙間を取る必要が出てくるが、ポルシェはそれが皆無なのだ。着座位置の低いフルバケットシート(リクライニング機能はない)に体を収め、いやしっかりハマリって、ツマミ状のスターターをひねると背後にある3リンター水平対向6気筒が簡単に目覚める。

リアフードを開いても見えるのは冷却用のファンで残念ながらご本尊は拝むことはできない。エンジンは先代の991型からGT3を除いてすべてツインターボ化され、GTSのスペックは480PS、570Nm。これはカレラのそれよりも95PS、120Nm高い。またカレラSよりも30PS、40Nmほど上回っているモノ。組み合わされるミッションは8速のPDK(いわゆるセミAT)か、世界的にも希少な7MTが用意され、試乗車は嬉しいことに後者だった。

今の技術ならば0-100km/hのタイム(PDKの3.4秒に対して4.1秒)といった絶対的なスペックはPDKの方が上だけれども、筆者のようなボンクラはやっぱりポルシェはMTのイメージがある。ユーザーの作り込んだ(思い込んだ)ブランドイメージに縛られているといえば、返す言葉が見つからないが、それはメーカーへの期待値だと屁理屈を思うのは酔っ払って上司の文句を言うのと同じだろうか。  さて。GTSである。スタートしだすとアイポイントこそゲキ低だが、街中で乗りやすい特典がもれなくついてくる911らしい面でもある。公称最高速311km/h、480PSのクルマが、である。唯一街中で気をつかうのは、スポーツカーの天敵のひとつでもある段差くらいで済む。そしてクラッチワークは幾多の伝説を生み出した昔の911よりもラフに扱える。ゲキ重なクラッチを想像していたけれど、全然そんなこともなく、知人の街乗りを潔く無視したインプレッサの方がはっきり言って重い。ドライブモードでスポーツ以上を選択しておけば、エンジン回転をピタリと合わせてくれるブリッピング機能も備わっている。さらに嬉しいのはエンストしてもすぐにクラッチを踏み込めば、何事もなかったようにエンジンが始動、周囲に「アイドリングストップの一環だもんね」と誤魔化せるくらいだ。下手っぴな筆者にもこの生粋のスポーツモデルは優しいし楽しい。たとえ交通量が多く50km/hにも届かない速度で流れていても。この扱いやすさ、例えば1500rpmでシフトアップ可能。そうすると、40km/hで5速に入ってしまう。45km/hで6速も可能。それでいてノッキングしないし、流れに乗る程度ならばそこから踏み込めんでも流れを乱すこともなく加速してくれる。また左折時の巻き込み防止で目視確認をするのだが、助手席のフルバケットシートが視界に入り(特にヘッドレストのGTSのロゴ周辺)、左折するたびにニヤけていた。このバケットシート、サイドエアバッグ内蔵でもある。

そして、このバケットシートをオプションすると911の使いやすさのひとつでもあるリアシートが「レス」仕様になる。こうなると4点式以上のハーネスかロールバーが欲しくなる? 瞬間でもある。

 高速に入ればそこはさすが、ポルシェ。抜群の安定性を披露してくれる。速いクルマの証(?)でもあるリアスポイラーは高速域では自動開閉するが、街中でも任意で開閉可能。

乗り心地はすこぶる良い。300km/hを超える最高速を謳う予備知識から、身構えた乗り心地とは大きくかけ離れていた。これがモダンテクノロジーってやつなのか。タイヤだって前輪245/35R20、後輪305/30R21と乗用車感覚からすると巨大なサイズを履いているが、びっくりするくらい乗り心地はいい。幅広の後輪を履くため、室内にこもるタイヤノイズはそれなりだが、7速100km/h巡航でエンジン回転はわずか1600rpm。車内で十分クラシック音楽を楽しむことも可能。筆者、「これは速く快適なマイ新幹線や〜」と叫びたくなった(編集部注:古っ)。そしてもうひとつ驚くのはその速度で走っていると、アレヨアレヨという間に燃費が伸びていくこと。メーター表示は11.0km/Lを表示していた。3リッターツインターボ、480PSなのに。

 さて。場所は変わってお楽しみのワインディングロード。これが楽しいのなんのって。先代のMTより10mmショートストローク化されたシフトレバーは気持ち良く入ってくれるし、

エンジンも自然吸気エンジンを思わせる味付けになっている。勝手な推測だが911はやはりRRのNAでなくては、というオーナーを意識しているのかもしれない。特にこのレスポンスの鋭さはさすが。アクセルオフでの回転落ちが早いのもポルシェらしい。クルマから感じられるボディの剛性感もさすがで、安心して極太のリアタイヤにパワーをかけると道路がカワイソーになるくらいトラクションがかかる。なるほどタイヤ温度表示機能は標準装備というのも納得。

 ドライバーの意思がキチンとクルマに伝わる、それこそが最大の魅力なのだ。例えば、コーナーリング。専門誌などでアクセルで曲げるという言葉があるが、911はそれが強く感じられる。微妙なアクセルのオンオフ(もちろんコンマ単位でも反応してくれる)でノーズをインに向けられる。ただし旋回中、アクセルを急激にオフにするとリアの重い911、大変なことになる。どうなるかという前にRRの特性を知らなくてはイケナイ。

 RRのソレはフロントにエンジンがないのでステアリングの切れ角が大きく、取り回しの良さがまずあげられる。そしてエンジンが載っている後輪が重くタイヤに荷重がかかるため加速に優れ、減速時でも同様に後輪に荷重がかかりやすくブレーキがしっかり効くのがメリット。対してステアリングを握った時は直進安定性に気を配らなければならないという面もある。例えばコーナー立ち上がりでアクセルを踏みすぎてリアがスライド、慌ててアクセルを全オフにしてしまったら、テールが出てしまう。重いテールは振り子の原理で左右に振られ、結果的にリアからクラッシュというのがRRのクセ。911もそうだが、腕や経験のある人ならばアクセルオンでそれを戻すことも可能だし、さらにアクセルを深く踏めばドリフト状態に持ち込むことも可能。そのクセを上手く使って走れれば、想像を絶するほど気持ちのいいコーナリングができるという。997型の911からはそのRRらしさが少なくなってクセを掴まなくても安心してコーナーを攻められると評論家のセンセー方は言われているが、筆者のようなド下手さんはガードレースとお友達にならないよう、慎重に走るに限る。それでも楽しいのが911。特にスポーツモードでクネった道を走る気持ち良さったら。ぐぅあああぁぁぁーーーん、と回りまくるエンジンを堪能し、シフトアップのために一瞬のアクセルオフ。パン! パン! な、ナニ!? どこから狙撃された音ではない。バックファイアの音が聞こえるのだ。その昔のチューニングカーなら燃調濃いヨ、になるのだがそこは現代の新車。説明書を確認するとスポーツモードのみバックファイアが有効と記してある。す、すごいちょっとした演出かもしれないが気分は大盛り上がり。しかもこのバックファイア、幕府御禁制のアヤシイモノに手を出したわけではなく、車検対応のワークスチューニングなのだ。気分を盛り上げてくれるのはジツはキーにもある。

クルマのキーも911のシルエットをモチーフにしているのだ。筆者、このチャンスを逃さないよう、秋元治先生の名作「こち亀」のネタのごとく、ポルシェ乗り(にわかだけれど)の特権、その鍵を指でクルクルと回すことも体験できた。

ポルシェ911は、乗りやすいうえに超絶の速さも運転の楽しさも併せ持つクルマだったのだ。

ポルシェ911カレラ GTS


価格1942万円から
全長×全幅×全高4520×1850×1303(mm)
エンジン2981cc水平対向6気筒ツインターボ
最高出力480PS/6500rpm
最大トルク570Nm/2300-5000rpm

ポルシェ https://www.porsche.com/japan/jp/
問 ポルシェコンタクト 0120-846-911

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。