こだわりのRR
ポルシェ911ヒストリー


 モノマガジン本誌899号は世界のマスターピースコレクションをテーマにお送りいたしました。まだの方はぜひバックナンバーをご覧いただきモノですゾ。その中ではトーゼン、自動車の傑作品も多く登場しています。クルマの傑作品は数あれど、今もなおこだわり続けるモノとなるとやはりポルシェ。特に誰しも、あ、ポルシェだ! というシルエットを持つ911ではないでしょうか。半世紀以上リアエンジン、リアドライブ(以下、RR)にこだわったクルマづくりは多くのファンを持つことでも有名。です。そこで今回は本誌の続編的に911のヒストリーをご紹介。

 ポルシェ911。生粋のスポーツカーと知られ、ポルシェブランドのフラッグシップでもあります。水平対向6気筒、リアエンジン、独特なボディシルエットは一貫して守られ、そのこだわり様にも多くのファンがいます。そんな911、356の

後継モデルとして1963年にデビューしました。記念すべき最初の911、ジツは901という車名でしたが、3桁数字の真ん中に「0」の入る車名はフランス、プジョー社が先に商標登録しており、911に変更した逸話は有名です。しかし初期の82台は901で生産されていました。このコードネーム901こそ最初の911になるわけです。クーペの他にもルーフの脱着が可能なタルガトップもラインナップ。

コンパクトなボディサイズ(主に車幅)でナローという呼び名もあり、1963年当時のボディサイズは全長4135mm×全幅1600mm×全高1273mmになっています。搭載される水平対向SOHC6気筒エンジンは1969年まで1991ccの排気量でしたが、1970、1971年は2195ccに1972年以降は2341ccと大きくなっています。

 またナロー時代の逸話として有名なのがフロントバンパーに仕込まれた鋳物や砂袋の錘(おもり)です。リアエンジンレイアウトによるフロントの接地性の少なさを補うための苦肉の策で、30kgくらいあったそうです。この錘は1969年のマイナーチェンジでホイールベースが57mm延長されたことで操縦性が向上し、姿を消しました。

 そしてこの時代のポルシェを語るうえで絶対に外せないのが1973年に登場したカレラRSです。

最強の911と呼ばれ、当時のグループ4規定を満たすホモロゲーションモデルとして500台限定生産。途中からグループ3規定を満たすためにプラス1000台以上が販売されました。このカレラRSはナナサンカレラと呼ばれ、エンジンは2.7リッターの210PSまで強化されています。通常のカレラが130PSだった頃なので、まさにレース直系だったのです。このナナサンカレラは名作「サーキットの狼」の主人公のライバル、早瀬左近の最初の愛車としてもマニアには知られています。

 余談ですが、911発売時、356との価格差を補うために、911の2リッター水平対向6気筒に対し、1.6リッター水平対向4気筒を搭載する912も1965年に導入されています。基本的にエンジン以外のメカニズムは同じモノで、内装は若干の簡略化されています。そして、なんと! その912には日本でパトカー仕様が存在しました。

昭和43年(1968年)12月に日本の代理店であった三和自動車が寄贈するカタチで4台が導入されました。場所は東名、名神高速を管轄する京都府、愛知県、静岡県、神奈川県に一台ずつ。4台中3台はスクラップになってしまいましたが、神奈川県警のモノは偶然が重なって現存し、今は個人オーナー所有になり、今年のオートサロンで展示されていたので、ご覧になった方も多いのでは。

 1974年に厳しくなった衝突安全基準に対応するための大きなバンパーを持つ930型にバトンタッチ。いわゆる「ビックバンパー」とも呼ばれるのが2代目911になります。930型は長寿モデルでもあり、エンジンバリエーションも豊富。デビュー時の1974年には2.7リッターだったモノが、76年には3リッターへ。そして84年には3.2リッターになっています。  1975年にはポルシェの量販車初のターボエンジン搭載モデルがデビュー。

そのスペックは3リッターの260PS、329Nm。ミッションは4MTですがモデル末期には5MTに。外観の特長は大きく太いタイヤを履くためワイドボディ仕様で特にリアフェンダーは通常のそれよりも12cm(!)も広くなっています。このターボにはエアコンやオーディオといった快適装備が標準装備。公道最速のロードカーでありながらも扱いやすいクルマに仕上がっており、この考え方は今も同じモノ。

ちなみに早瀬左近がレース中にエンジンブローしたナナサンカレラに代わって2台目の愛車でもある。あるいは「湾岸ミッドナイト」初期のブラックバードの愛車といった方がわかりやすいかも。930型は1974年から1989年まで生産された長寿モデルで、ボディはクーペとタルガトップのみでしたが、1983年にはフルオープンになるカブリオレが復活しています。レアなモデルでは、1988年限定でリトラクタブルライト採用のフラットノーズボディが登場しています。

 3代目の964型は1989年登場。基本デザインは930型のキープコンセプトながらも80%のパーツは全てが新調されたモノ。ファンを驚かせたのは4WDのカレラ4が先にデビューしたことでしょうか。

911こそRRのイメージを打ち破ったといってもいいかもしれません。ポルシェの4WDモデル911から離れてしまいますが1983年に開発がスタートし、グルッペBとしてコンセプトモデルが発表された959があります。

WRCに勝つために作られたマシンですが、当時ポルシェでベース車となりえたモデルが911しかなかったお家事情もあるといいます。ルーフこそ911のソレを使っていますが、それ以外は全くの別モノ。

事実、1986年のパリダカでは他車を寄せ付けない圧倒的な速さで総合優勝を飾りました。

 さて964型のポルシェに話は戻ります。1990年には伝統のRRモデルが登場。1991年には911ターボがデビュー。この964型でのトピックは4WDモデルの他にMTモードを備えたティプトロニックと呼ばれるATがあります。Dレンジを横に倒し、+、ーでギアを操れるというモノです。この964型はボディ形状、エンジン、駆動方式で豊富なモデルバリエーションを誇りますが、ジツはボディ幅だけならば、日本でいう5ナンバー枠に収まる全幅1660mmというのは驚きでしょうか。ちなみにカレラ4の呼称は964型が最初ですが、ジツはカレラ2は356時代の1961年のフランクフルトショーでそれが発表されています。ちなみにカレラ6、カレラ10もあり、コチラは純レーシングカーになります。

 1993年には993型にモデルチェンジ。

いわゆる最後の空冷エンジン搭載車として知られるモデルです。外観上の大きな変更がフロントフェンダーが低くなり、空力を考慮したモノに。このシルエットは今も継承されています。メカニズムの面ではMTモデルがそれまでの5速から6速化になりました。またターボモデルは巨大なパワーを余すことなく路面に伝えるため、4輪駆動化されたのはこの993型からです。

 911初の水冷エンジンを搭載する996型は1997年にデビューしました。初の水冷、シャーシから新設計ということを考えれば初のフルモデルチェンジと言っても差しさわりがないモデルといわれます。

しかしながら、ボクスターと同様という涙目型のライトが祟ったかどうか若干不人気傾向になっています。ターボモデルでは初のティプトロニック搭載車もラインナップに。996型で必ず試験に出そうなクルマがGT3です。

RR系ポルシェの本気仕様ともいえるモデルで、1999年に登場。3.6リッター360PSのエンジンを搭載、難攻不落のニュルブルクリンクを8分を切るタイムを記録しました。そしてGT3のNA、RRというレイアウトは今も受け継がれています。

 6代目911の997型は2004年登場。涙目型のライトから丸型に戻されています。

後期モデルにはティプトロニックSからPDKに変更されました。このミッションはルマンで活躍した962Cを母に持つレース直系の技術です。

997型は2007年には歴代ポルシェでもっとも速く10万台の生産を達成した大ヒットモデルでもあります。

 2011年に991型へバトンが渡されました。

市販車としては世界初の7MT採用しています。991型の前期モデルは先代997型後期モデルのエンジンを搭載していました(ややこしい)。このモデルの大きな転換期は2016年のマイナーチェンジです。

これ以降のモデルは、伝統のフラット6エンジンがほぼツインターボ化されました。排気量も見直され、モデル名に「ターボ」がつくモノは3.8リッター、それ以外のカレラ系は3リッターに。例外は4リッターのNAエンジンを搭載するGT3があります。

 現行の8代目911のコードネームは992型。2018年にデビューしました。

メカニズムは基本的に991型を踏襲していますが、インタークーラーの位置が変更され、ワイドボディ化。GT3にはカップカーと同じダブルウィッシュボーンのフロントサスが採用されています。

ポルシェ https://www.porsche.com/japan/jp/
問 ポルシェコンタクト 0120-846-911

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。