菊池雅之のミリタリーレポート 世界最大の軍事演習「リムパック」


RIMPAC2022参加艦艇によるPhotoEX(フォトエキササイズ:写真撮影用艦隊フォーメーション)。
写真:米海軍

 2022年6月29日より8月4日までの間、ハワイ州を中心として環太平洋合同演習「RIMPAC(リムパック)」が開催されました。

 もともと「リムパック」は、ソ連の太平洋進出を阻止するため、米軍の呼びかけで1971年にスタートしました。記念すべき第1回目は、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、イギリスの5か国が参加しました。その後、参加国は徐々に増えていきます。

 米第3艦隊が主軸となり、各国と合同艦隊を編成し、対空・対艦・対潜と想定される海戦をシナリオ方式で戦っていきます。そしてカウアイ島沖にあるPMRF(パシフィックミサイルレンジファシリティ)と呼ばれる海の射爆場での実弾射撃訓練を実施します。

 日本は、1980年から参加することになりました。派遣したのはヘリ搭載型護衛艦DDH「ひえい」とミサイル護衛艦DDG「あまつかぜ」、そして8機のP-2Jでした。いずれも、現在はすべて引退しており、時代を感じますね。

 当初「リムパック」は、毎年開催する計画もありましたが、実施できない年もあるなど不定期開催となり、78年以降、偶数年の隔年開催と決定しました。

 どんどんと参加国は増えていきます。冷戦後は、太平洋における各国海軍の親善の場となり、「参加することに意義がある」ものとなりました。それが証拠に、2012年にはロシア海軍が参加するまでになりました(ただしこの年のみ)。さらに2014年からは中国も参加し大きな話題となりました。しかしながら、中国は、情報収集艦もひっそりと派遣し、各国の偵察をおこなったり、日本に対して敵対行動をしたり、素行不良だったこともあり、2018年から呼ばれなくなりました。

 さて、28回目となった「リムパック2022」は、26か国が集まりました。参加国は、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、コロンビア、デンマーク、エクアドル、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、イスラエル、日本、マレーシア、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ペルー、韓国、シンガポール、スリランカ、タイ、トンガ、イギリス、アメリカ(アルファベット順)。この中から38隻の艦艇、4隻の潜水艦、170機の航空機、25000名の人員が集まりました。

 なお、海軍演習であった「リムパック」も、最近では、各国の空軍や陸軍、海兵隊等も参加するようになり、すっかり統合演習となりました。特に規模の小さな軍隊を持つ国にとって、米軍をはじめとして各国軍と訓練を行うことは戦技向上を目指すことが出来ます。そこで、小規模の陸上部隊を送り込んだ国、また情報収集のためのオブザーバーを送り込んだ国なども含まれております。

今回の演習の中心的役割を果たした米空母「エイブラハム・リンカーン」。
米軍の長い歴史の中で、初の女性艦長であるバウアーンシュミット大佐が着任。
F-35Cを運用する1個飛行隊を含むCVW-9(第9空母航空団)が搭載されている。

 参加艦隊の中核を務めたのが、米空母「エイブラハム・リンカーン」です。艦長を務めるのは、エイミー・N・バウアーンシュミット大佐です。米海軍の長い歴史の中で、初の女性空母艦長です。基本的に空母艦長は、パイロットが配置に就きます。空母を操艦するには、航空機の運用に熟知している必要があるからです。バウアーンシュミット大佐はヘリコプターのパイロットです。

各国海軍にとって新造艦のお披露目の場ともなっている。写真はメキシコ海軍フリゲイト「ベニート・ファレス」。オランダ製。

 日本からはDDH「いずも」と汎用護衛艦DD「たかなみ」、1機のP-1が参加しました。「いずも」とP-1が「リムパック」に参加するのは今回が初めてです。また、「リムパック2018」に引き続き、陸上自衛隊の第5地対艦ミサイル連隊が派遣されました。そしてPMRFに浮かぶ標的艦を12式地対艦誘導弾にて撃沈しました。

対地・対艦任務に当たるAC-130。機首部分に105㎜りゅう弾砲が装備されているのが分かる。
対艦ミッションに大活躍したのは、米海兵隊のVMFA-232「レッドデビルズ」のスーパーホーネット。

  • 軍事フォトジャーナリスト.。1975年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。講談社フライデー編集部専属カメラマンを経て軍事フォトジャーナリストとなる。主として自衛隊をはじめとして各国軍を取材。また最近では危機管理をテーマに警察や海保、消防等の取材もこなす。夕刊フジ「最新国防ファイル」(産経新聞社)、EX大衆「自衛隊最前線レポート」(双葉社)等、新聞や雑誌に連載を持つなど数多くの記事を執筆。そのほか、「ビートたけしのTVタックル」「週刊安全保障」「国際政治ch」等、TV・ラジオ・ネット放送・イベントへの出演も行う。アニメ「東京マグニチュード8.0」「エヴァンゲリオン」等監修も行う。写真集「陸自男子」(コスミック出版)、著書「なぜ自衛隊だけが人を救えるのか」(潮書房光人新社)「試練と感動の遠洋航海」(かや書房) 「がんばれ女性自衛官」 (イカロス出版)、カレンダー「真・陸海空自衛隊」、他出版物も多数手がける。YouTubeにて「KIKU CHANNEL」を開設し、軍事情報を発信中
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