待望の『トップガン マーヴェリック』
2年の公開延期を経て日米同時公開


急上昇からターンして爆弾投下のための攻撃態勢へと移行するMaverick(トム・クルーズ)搭乗のライノ。機体上面からは激しい機動によるベイパー(水蒸気)が発生し、表情も歪む。これこそ前作とは違い、実際にF/A-18Fの後席に搭乗して撮影した、本物のGがかかった渾身のシーン。作品中ではこうした“リアル”な飛行シーンがこれでもかというほどに出てくる。

 1986年に公開され大ヒットを記録、世代を超えて現在も愛される航空映画『トップガン』。その続編となる『トップガン マーヴェリック』が、36年の時を経てついに5月27日(金)、日米で同時公開となりました。

 タイトルのトップガン(TOP GUN)というのは、ベトナム戦争での苦戦を契機に設立されたアメリカ海軍の戦術教官パイロットを養成するNFWS(海軍戦闘兵器学校)のニックネーム。前作公開当時はカリフォルニア州サンディエゴ近郊のNASミラマーにありました。ミラマーの海兵隊移管を受け、NFWSはその後ネバダ州NASファロンのNSAWC(海軍戦闘攻撃戦センター)の下部組織に改編されましたが、現在もNAWDC(海軍航空戦闘開発センター)と名を変えた組織の下で活動を続けています。トップガンの実際の教育は、各部隊から招集されたエビエーター(海軍ではパイロットや航空士官を総称してこう呼びます)に戦術などの専門知識を叩き込み、学生は教官資格を取得後部隊に戻ってその戦術戦技を広めていくというもの。そのため、トップガンの学生としては卓越した飛行技術というよりは指導力や協調性が重視されるため、主人公Maverickのような単独主義、一匹狼的なパイロットを求めてはいませんが、もちろん優れた飛行技術や判断力、負けん気は重要です。

Maverickの操縦するF/A-18E(実際は複座のF/A-18F)と編隊を組む学生操縦のF/A-18F。作品中ではE(単座)とF(複座)を任務付与にあたって上手に使い分けるなど、シナリオの巧みさも感じられる。
前作中、事故で殉職したMaverickの相棒のRIO(レーダー迎撃士官)、ニック“Goose”ブラッドショーの息子がブラッドリー“Rooster”ブラッドショー大尉(演:マイルズ・テラー)。バーのピアノで両親と歌っていた男の子が、本作品ではライノのパイロットとなって登場、物語の鍵となる。

 前作はトップガンメンバーに選ばれた若きパイロット、ピート“Maverick”ミッチェルがクラスメートとの競争や同僚の死を乗り越えて成長していくストーリーでしたが、その無謀ともいえる性格が作品のキーとなりました。そして本作、『トップガン マーヴェリック』の主人公も、当時の性格のまま現場で飛び続ける、大佐となったMaverick。功績とともに問題も積み上げてきたそんな彼に、トップガンの教官として特別作戦に参加する若いクルーの教育が託されます。そしてMaverickは、そのエビエーターのなかに、事故で命を落としたかつての相棒、Gooseの息子ブラッドリー“Rooster”ブラッドショー大尉の姿を見つけます。

本作品のトップガンクラスの中でRoosterのライバル的存在となるのがジェイク“Hangman”セレシン大尉(演:グレン・パウエル)。MaverickとIcemanの関係を思い起こさせる、前作のファンにとってもワクワクさせられる設定。

 前作では当時の海軍主力戦闘機、F-14トムキャットが圧倒的な存在感を示しましたが、本作品ではライノことF/A-18E/FスーパーホーネットがMaverickや若きトップガン入校生たちの愛機となります。マニアな皆さんは「海軍の最新鋭機といえばステルスのF-35でしょ」と思われるかもしれませんが、そこは格闘戦重視のストーリーで、ライノが使われる理由がちゃんと用意されています。そしてなにより、今回複座型F/A-18Fがあることで、俳優が実際に航空機に搭乗しての撮影が実現、本作品のフライトシーンの迫力を大いに演出しました(F-14も複座ですが、RIOなしでは任務を行なえないため、当時後席での同乗撮影は不可能でした)。なお、Maverickの個人所有機であるウォーバード(第二次大戦戦闘機)P-51Dマスタングほか、F/A-18E/F以外の航空機も登場します。トレイラー(予告動画)にも出ていた謎の機体や懐かしい「あの戦闘機」も出てくるので、乞うご期待。

特別作戦に向かうため、空母艦上の格納甲板で命令を受ける若きトップガン学生たち
中央はF/A-18Fパイロットのひとり、ナターシャ“Phenix”トレース大尉(演:モニカ・バルバロ)。

 公開に寄せて、Maverickを演じたトム・クルーズは「僕にとって、『トップガン』とは、空を飛ぶことへのラブレター。(映画の中の)飛行シーンはすべて本物だ」と語っています。作品にはCGやVFXも使用されており、この言葉は正確ではありませんが、ここでいう「本物」とは、彼ら俳優が実際に機内で演技していることを指しているのでしょう。飛行シーンはこれまでの映画とは比較にならない迫力で、俳優たちがGに顔を歪ませながらコックピットで見せる演技は、前作にはなかった緊迫感です。なお、空撮コーディネーターは、自身もパイロットであるケビン・ラローサが担当、L-39ジェット練習機にショットオーバー・カメラ・ジンバルを搭載したシネジェットと呼ばれるカメラシップで、日の出直後、日没前といった太陽光の美しい時間を中心に撮影されました(F/A-18E/Fへの取り付けも実施)。ラローサは「300~500ktの速度で険しい地形を飛ぶ飛行機を撮影するのだからリスクは確実にあるが、つねにしたがうべき安全対策とプロトコルがある。何事も運任せにしないような、広範囲におよぶブリーフィングが行なわれた。この映画では、フリースタイルは一切ない。高度に調整されたフライトによる、高度に調整された機動飛行だけだ」と語ります。

コロナ禍はエンターテインメントの世界にも大きな影響を与え、トム・クルーズのかかわるビッグタイトルは軒並み公開を延期していたが、この作品に対する彼の「制限のない環境で多くの人に劇場で観てもらいたい」という思いも伝わってくる、重厚な作品。前作の関係者やファンもしっかりリスペクトしつつ展開されるストーリーに期待してほしい。

 誤解を恐れずに言えば、ストーリーそのものには前作にも増してありえない展開や設定はたくさん存在しますが、そこは「ハリウッドムービー」として充分に消化できるし、なにより面白く、またさまざまな要素がふんだんに詰め込まれた作品となっています。ヒコーキをよく知らない一般の映画ファン、トム・クルーズファンも楽しめるうえに、航空機ファンが見るとニヤリとさせられるシーン、オマージュ、仕掛けがたくさん用意されています。そして提督(大将)となった前作のMaverickのライバル、Icemanことトム・カザンスキー(演:ヴァル・キルマー)が登場するなど、前作を大好きなファンにとっても、懐かしさや嬉しさがこみ上げるシーンが満載で、前作で描かれた教官チャーリーとのロマンスに代わり、ペニー・ベンジャミン(演:ジェニファー・コネリー)との大人の恋も描かれます。

 ぜひ、劇場の大スクリーンでその迫力をお楽しみください。


2022年5月27日(金)全国ロードショー

■配給:東和ピクチャーズ
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  • 1967年千葉県生まれ。1991年4月に(株)文林堂入社。『航空ファン』『世界の傑作機』『航空ファン・イラストレイテッド』など航空雑誌の編集に携わり、2007年5月から『航空ファン』編集次長。
  • https://blog.goo.ne.jp/koku-fan