お酒博士・橋口孝司の酒千夜
Vol.02 お酒のトリビア01:世界最古のお酒『ミード』とは?


★今回おすすめのお酒
「ハニーウイスキーをオンザロックスで」

ウイスキーの蜂蜜を加えたハニーウイスキー。今回は「エヴァン・ウィリアムス ハニー」。
甘さをも楽しめるオンザロックススタイルで、少しずつゆっくりと楽しみましょう。

「お酒のトリビア」は、お酒に関する様々な豆知識をご紹介するシリーズです。

今回は、『人類とお酒が出会った瞬間』でもご紹介した“世界最古のお酒”ともいわれる「ミード(蜂蜜酒)」についてご紹介します。

ミード(蜂蜜酒)は、蜂蜜を原料とする醸造酒です。

蜂蜜は、農耕が始まる前から世界各地で採集し食ベられていた事が分かっています。糖度や栄養価が高い蜂蜜は、人々の栄養源となっていました。

蜂蜜がお酒になった「ミード(蜂蜜酒)」の発祥は旧石器時代(約1万4千年前)にまで遡るといわれています。

蜂蜜は、加熱などせずに水を加えるだけで自然に発酵してお酒になるため、雨水などが入った蜂蜜が偶然お酒に変化し、それを人々が飲んでいただろうと考えれているのです。

お酒の誕生は、空腹を満たす栄養としての役割から、人々が集団で生活するようになると「人々の絆を深める」という新たな役割を担っていくことになります。フランスの社会人類学者クロード・レヴィ=ストロースは、ミードの発明を、「自然から文化への移行であり、人間の行動を決定づける行為である」と分析しています。

スカンジナビア地方では、ブドウが栽培できずワインができなかったために中世に至るまで蜂蜜酒が愛飲されていました。現在でも、ブドウ栽培が難しい北欧諸国ではミードがよく飲まれています。

ミードに関する逸話はたくさん残されています。

*古代ギリシアでは、蜂蜜酒は神々のお酒とされていて、最高神ゼウスの好物でした。

*ローマの英雄ジュリアス・シーザーもミードを愛飲したともいわれています。

*古代ケルト文化の人々には蜂蜜酒は「不死の飲み物」とされ、ケルト神話にも多く登場しており、神話に登場する英雄クー・フーリンも愛飲していました。

*古代から中世のヨーロッパでは、新婚直後の1ヶ月間は子宝に恵まれるよう、外出せずに蜂蜜酒を作り飲んでいたことから「蜜月」(honey moonハネムーン)という言葉が生まれたとされています。

*最近では、映画『ハリー・ポッター』シリーズ6作目の『ハリー・ポッターと謎のプリンス』や、『ゲーム・オブ・スローンズ』『ロード・オブ・ザ・リング』にもミードが登場しています。

ミードの原料は、蜂蜜と水と酵母菌です。蜂蜜を水で2~3倍に薄め、酵母菌を加えると発酵が始まり、夏なら1週間、冬なら3週間ほどでミードが出来上がります。

商品として発売されている物の中には「ハニーワイン」と表記されていいる場合もあります。

原料はシンプルですが、蜂蜜の産地や種類で味わいが違ったり、アルコール度数も様々です。甘口、辛口はもちろん、スパークリングタイプのミードもあります。さらにスパイスやハーブを漬け込んだり、水の代わりにリンゴなどの果汁を使ったミードもあります。好みや愉しむ場面で選ぶとよいでしょう。

日本国内の酒蔵からも、麹を使ったミードなど多彩なミードが発売されています。日本人に合ったすっきりした味わいの物が多いようです。

現在、日本国内で購入可能なミードをいくつかご紹介します。

菊水酒造はちみつのお酒 [日本]
山田養蜂場蜂蜜酒「ミード」[日本] (11%)
シュシェンメルモール(はちみつ酒)[フランス](13%)
カトレンブルガーハニーワイン[ドイツ] (10%)
バーレンメットミード ハニーワイン[ドイツ] (11%)
ポーランドミード・アピス[ポーランド](13%~)

また、ウイスキー博士としては、ウイスキーについても紹介しておきたいと思います。ウイスキーでも蜂蜜の風味を加えた商品が多く発売されています。蜂蜜は、万国共通で人々に好まれているのですね。

蜂蜜の風味を加えているウイスキー

<アメリカンウイスキーベース>

ジャック ダニエルテネシー ハニー リキュール(35%)
ウイスキーワイルドターキー アメリカンハニー (35.5%)
ジムビームハニー (30%)
エヴァン・ウィリアムスハニー(35%)

<アイリッシュウイスキーベース>

アイリッシュミストハニー(35%)
ケルティック ハニーアイリッシュ ハニーリキュール(30%)

何かと忙しい毎日を送っている方や、お酒をたくさん飲む方も、たまには蜂蜜の自然の甘さを愉しんでみてはいかがでしょうか?

飲み方は、そのままストレートや、氷を入れてロックスタイルもいいですね。アルコール度数を低めにしてスッキリ飲みたい時には、炭酸やお水で割ってもいいですし、少し寒い日にはお湯割りにすると、そのあたたかさでホッとした気持ちになれるかもしれませんね。

  • 株式会社ホスピタリティバンク代表取締役 ホテルバーテンダーから料飲支配人、新規ホテル開業準備室長、運営などをてがけ26年間ホテルに勤務。2008年より株式会社ホスピタリティバンク代表取締役に就任。バー開業コンサルティングなどを手がけ酒類関連団体の顧問、理事を歴任し国内外で講演、セミナーを行っている。ウイスキーバープロデュース・運営(2017-2019)を行う。 シャンパーニュ騎士団「シュバリエ」、ベルギービールプロフェッサー、日本伝統濁酒学博士などの称号を持つ。 2015年からは「橋口孝司 燻製料理とお酒の教室」にてセミナーの開催や、ウイスキーを愉しむイベント「ザ・シークレットバー」も銀座と西麻布にて定期的に開催している。 「ディスティラリーパッケージ1992」を皮切りに、「ウイスキーの教科書」「カクテル&スピリッツの教科書」「本格焼酎名酒事典」「ビジネスエリートが身につける教養 ウイスキーの愉しみ方」などを執筆、「世界のウイスキー図鑑」「世界のベストウイスキー」「ハリウッドカクテル日本語版」などを監修。ウイスキー、カクテル、スピリッツを中心に酒類に関する執筆・監修は26冊以上。 Webでは、「たべぷろ」にて執筆(https://tabepro.jp/author/hashiguchi) 「江崎グリコ お酒の話」を監修(https://jp.glico.com/osake/index.html)
  • https://www.hospitality-bank.com/